経理・記帳

アメリカでの記帳代行はどこに頼む?日系・米系会計事務所と個人事業主を徹底比較

更新 2026.07.25 約10分で読了 米国公認会計士(CPA)監修済み記事

「アメリカで記帳代行を頼みたいけれど、どこに頼むのが正解なのだろう?」
「日系の会計事務所と米系の会計事務所、結局どちらが自社に適しているのか分からない…」

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。アメリカで事業を始めると、日々の取引を記録する記帳(Bookkeeping)が必要になります。アメリカでの記帳代行の依頼先には大きく分けて3つあり、それぞれ得意分野も価格も大きく異なります。アメリカの日本人会計士として多くの日系クライアントを見てきた経験上、「〇〇さんの紹介を受けたから」「価格が安かったから」などの理由で選んで失敗するケースが少なくありません。

この記事では、3つの依頼先を「日本語対応・専門性・価格帯・組織としての継続サポート」という4つの軸で比較していきます。読み終えていただければ、自分の状況にどの依頼先が合うのかを判断できるようになるかと思います。

この記事の目次

1. アメリカで記帳代行を頼める3つの依頼先

アメリカで記帳代行(ブックキーピング)を頼む先は、大きく3つの類型に分かれます。まずは全体像を把握してから、それぞれの特徴を見ていきましょう。

結論からいえば、主な候補となる依頼先は次の3つです。

  • アメリカ現地の日系会計事務所(現地の日本語対応事務所)
  • アメリカ現地のローカル会計事務所(現地アメリカ人向けの一般的な事務所)
  • 個人事業主のBookkeeper(個人事業主として記帳を請け負う人など)

それぞれに向き・不向きがあります。「どこが一番良いか」ではなく「自分の事業規模と状況にどれが合うか」で選ぶことが大切です。以下、それぞれ詳しく解説していきます。

2. 3つの依頼先を比較する

ここでは、3つの類型それぞれの特徴を「どんな人に向くか」を中心に整理します。日本語対応や日米税務の理解度に注目して読み進めてください。

2.1. アメリカ現地の日系会計事務所

日系会計事務所は、日本語での相談から日米両方の税務理解まで、最も安心して任せられる選択肢です。アメリカに進出したばかりの日系企業や英語に不安のある方に向いています。

なぜ安心かというと、担当者が日本語を話せるだけでなく、日本本社への報告や日米租税条約といった「日本人・日系企業特有の論点」を理解しているからです。たとえば、日本の親会社に合わせた決算月の設定やForm 5472(外国資本25%以上の法人が必要な申告書)への対応など、米系事務所では説明に時間がかかる論点もスムーズに進みます。

一方で、3つの選択肢の中で価格が高めになる傾向があります。主に、日本語対応というサービスの付加価値が価格に反映されるためだと考えています。記帳のみであれば月$500〜$1,500程度、税務申告までセットにすると年間でさらに費用が加わるのが一般的です。

継続性の面では、事務所として運営されているため担当者が変わっても引き継ぎがされやすく、長期的に安定した関係を築きやすい点がメリットといえます。

2.2. アメリカ現地のローカル会計事務所

米系会計事務所は、アメリカの税務・会計に精通しており、現地でのビジネス拡大を見据える方に向いている選択肢です。ある程度英語でのコミュニケーションに支障がなく、規模が大きくなってきた事業者に適しています。

米系事務所の強みは、アメリカの税制や州ごとのルールに関する知見の深さです。全米に展開する事業や複雑な法人構造を持つ会社でも対応できる事務所が多くあります。

ただし、日本語対応は基本的に期待できません。また、日本本社との関係や日本側の税務は専門外となるため、日本人・日系企業特有の論点は自分で補う必要があります。価格帯は事務所の規模により幅が大きく、大手ほど高額になります。

2.3. 個人事業主のBookkeeper

個人事業主のBookkeeperは、コストを抑えつつ、柔軟に記帳だけを任せたい小規模事業者に向いている選択肢です。彼らは個人で記帳業務を請け負う専門家で、時給制や月額固定で契約するのが一般的です。

メリットは価格と柔軟性です。事務所を通さないぶん費用が抑えられ、場合のよっては月$300程度から依頼できるケースがあります。担当者と直接やり取りできるため、細かい要望も伝えやすいかと思います

一方でデメリットもあります。Bookkeeperの仕事をフリーランス等でされている方の場合、多くの場合で税務申告までは対応できないことがほとんどです。さらに継続性のリスクが最大の注意点と言えます。個人であるため、体調不良や廃業で突然サービスが止まる可能性があります。実務でも、個人事業主的に仕事を請け負う会計士の引退により、急いで引き継ぎ先を探すことになったケースは何度も見てきました。

3. 4つの軸で見る依頼先の違い一覧

ここまでの内容を、当サイト独自の観点で一覧に整理しておきます。この表を見れば、どの依頼先が何に強く何に弱いかが一目で分かるかと思います。

依頼先 日本語対応 専門性
(日米特有の論点への深い理解等)
価格帯(月額目安) 組織的な継続したサポート
日系の現地会計事務所 $500〜$1,500
米系のローカル会計事務所 × $500〜$2,000
個人事業主のBookkeeperなど △(人による) $300〜$1,000

この表からお伝えしたいことは、価格の安さと専門性・継続性はおおむね反比例するということです。安さだけで選ぶと、後から会計士が修正するコストがかかり、結果的に割高になることも少なくありません。

4. 自分の状況にあった依頼先を選ぶマッチング表

最後に、読者の方の状況別におすすめの依頼先を整理します。自分がどの状況に当てはまるかを確認しながら読んでいただければと思います。

あなたの状況 おすすめの依頼先
英語での説明ややり取りに不安があり、日本本社への報告も必要 日系会計事務所の一択
英語に問題なく、全米規模で事業を拡大したい 日系会計事務所もしくは米系会計事務所
小規模で、記帳だけ安く柔軟に任せたい 日系会計事務所もしくは個人事業主のBookkeeper

当サイトの見解

一般的には「価格が安い順に検討する」という選び方をされる方が多いのですが、その前に一つ知っておいていただきたいことがあります。それは、記帳代行の中身は実は2つの作業に分かれているということです。

1つ目は、最初に行う「記帳の設計」です。勘定科目をどう作るか、税務申告や日本本社への報告を見据えてどう整理するかを決める部分で、ここは専門知識によって大きく差が出ます。

2つ目は、日々の「入力作業」です。取引を仕訳として入力していく部分で、設計さえしっかりしていれば、誰が担当しても品質に大きな差は出にくい部分です。

価格の安さだけで比較すると、この2つをまとめて「記帳」として見てしまうため、本当に差がつく設計部分の質を見落としがちです。依頼先を選ぶ際は、「設計を任せられる相手かどうか」を軸に考えることをおすすめします。実際にクライアントを数多く見てきた経験から、開業初期に安さ優先で個人のBookkeeperに丸投げし、決算時に会計士が全面的にやり直すというケースは少なくありません。

また、英語に不安がない方でも注意が必要です。米系の会計事務所に依頼してみたものの、難しい税務論点や日本特有の論点(日本本社への報告や日米双方に関わる取り扱いなど)について丁寧な説明を受けられず、不安が残ったまま決算や申告を迎えてしまい、結局のところ日系会計事務所へ乗り換えるというケースは多くあります。これは、言語の問題ではなく、日系企業特有の事情をどれだけ理解しているかという点で差が出るためだと考えています。

特に日系企業の場合、日本本社への報告や日米両国の申告を見据えると、最初から日系企業の事情に通じた会計士が関与する形が結果的に安く済むことが多いです。開業直後の小規模なうちに記帳の土台だけでも会計士と一緒に整えておき、規模拡大に応じて体制を見直していく形が現実的かと思います。

まとめ

この記事では、アメリカで記帳代行をどこに頼むかについて、3つの依頼先を軸別に比較しながら解説してきました。

以下に、この記事のポイントを整理しておきます。

アメリカの記帳代行 3つの依頼先を4つの軸で比較
依頼先 日本語対応 専門性
(日米特有の論点への深い理解等)
価格帯(月額目安) 組織的な継続したサポート
日系の現地会計事務所 $500〜$1,500
米系のローカル会計事務所 × $500〜$2,000
個人事業主のBookkeeperなど △(人による) $300〜$1,000

この記事が、アメリカで記帳代行の依頼先を探している日本人・日系企業の方の助けになれば幸いです。