この記事でわかること
「QuickBooksで在庫の数や原価をきちんと管理できるのだろうか?」
「仕入れた商品を売ったとき、原価は自動で計算してくれるのだろうか?」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。この記事では、QuickBooks Online(クイックブックス・オンライン)の在庫管理機能について、商品登録から販売までの流れを整理したいと思います。アメリカで物販やEコマースを営む方の経理で、在庫とCOGS(売上原価)の処理は最もつまずきやすいポイントの一つです。ここでは、在庫管理機能の基本的な使い方と棚卸の実務までをご紹介します。
この記事の目次
1. 在庫機能が使えるのはPlusプラン以上
この章では、どのプランで在庫管理が使えるのかを最初に確認します。プランを間違えると機能そのものが表示されないためです。
結論からいえば、QuickBooks Onlineで在庫管理を使うにはPlusプラン以上が必要です。下位のSimple StartプランやEssentialsプランでは、在庫追跡(Inventory Tracking)の機能が含まれていません。
在庫を扱う物販事業の方は、Plusプラン以上を選ぶ必要があります。もし在庫管理機能がないプランを契約してしまうと、後から在庫機能だけを追加することはできず、プランごとアップグレードする形になります。
なお、QuickBooksの料金プランは値上げされる傾向があります。契約前に最新の月額料金を公式サイトで確認することをおすすめします。
2. 商品登録から販売・原価の自動計上までの流れ
在庫管理の流れは大きく4ステップに分かれます。商品登録・仕入・販売・売上原価の自動計上の順に、ひとつずつ見ていきたいと思います。この章を読めば、日々の取引がどう記帳されるかが分かるかと思います。
- 商品(Inventory Item)を登録する
- 仕入(Purchase)を記帳する
- 販売(Sales)を記帳する
- COGS(売上原価)が自動で計上される
ステップ1:商品(Inventory Item)を登録する
最初に、扱う商品をQuickBooksに登録します。「Products and Services」のメニューから、商品タイプとして「Inventory(在庫品)」を選びます。
登録時には、主に次の情報を入力します。
- 商品名・SKU(商品コード)
- 初期数量(Initial quantity on hand)
- 販売価格(Sales price)
- 仕入原価(Cost)
- 在庫資産勘定・売上勘定・売上原価勘定の紐づけ
ここで在庫資産(Inventory Asset)の勘定科目と売上原価(COGS)の勘定科目を正しく設定しておくことが、後の自動計上の前提になります。
ステップ2:仕入(Purchase)を記帳する
商品を仕入れたら、仕入を記帳します。仕入先からの請求書(Bill)や経費(Expense)の取引で、登録済みの商品を選びます。
仕入を記帳するとその分だけ在庫数量が増え、同時に在庫資産(貸借対照表上の資産)が増えます。この時点では、まだ売上原価(COGS)には計上されません。仕入はあくまで「資産が増えた」という処理にとどまるためです。
ステップ3:販売(Sales)を記帳する
商品が売れたら、請求書(Invoice)または売上伝票(Sales Receipt)で販売を記帳します。ここでも登録済みの商品を選びます。
販売を記帳すると売上(Revenue)が計上され、在庫数量が減ります。在庫の動きと売上が連動するため、いま手元に何個残っているかが常に把握できます。
ステップ4:COGS(売上原価)が自動で計上される
ここがQuickBooksの在庫機能で最も便利な点です。商品を販売した瞬間に、売れた分の原価が自動で売上原価(COGS)に振り替えられます。
たとえば、原価$40の商品を$100で販売したとします。すると、売上に$100が計上されると同時に在庫資産から$40が減り、その$40が売上原価(COGS)として自動計上されます。手作業で原価を計算して仕訳を切る必要はありません。
(借方)Accounts Receivable $100 /(貸方)Sales $100
(借方)COGS(売上原価) $40 /(貸方)Inventory Asset $40
なお、QuickBooks Onlineの在庫評価方法はFIFO(先入先出法)に固定されています。日本でなじみのある移動平均法や総平均法は選べません。仕入時期によって原価が変動する商品を扱う場合は、この点を理解しておく必要があります。
3. 在庫を持たない業種に在庫機能が不要な理由
この章では、なぜ在庫を持たない業種に在庫機能が要らないのかを、改めて整理します。冒頭でお伝えした内容をもう少し具体的に補足したいと思います。
結論からいえば、在庫機能は「物理的なモノの数を追跡する」ための仕組みです。そのため、追跡すべきモノがないビジネスには出番がありません。
たとえば、次のような業種は在庫機能を使う必要がないかと思います。
- コンサルティング・士業などのサービス業
- ソフトウェア・アプリの開発販売
- 仕入れずに製造する受託サービス
- ドロップシッピング(在庫を自社で持たない販売形態)
こうした業種では、無理に在庫機能を有効にするとかえって帳簿が複雑になります。サービス業の方が誤って在庫品として登録してしまい、後で修正に手間取るケースは少なくありません。自社が「モノを仕入れて在庫として持つか」を基準に判断すると良いかと思います。
4. 棚卸(Physical Inventory Count)の実務
この章では、在庫を持つ事業者が避けて通れない棚卸について解説します。帳簿上の在庫と実際の在庫がずれることは珍しくないためです。
結論からいえば、QuickBooksの在庫数はあくまで帳簿上の数字であり、定期的に実地の棚卸で照合する必要があります。
なぜ棚卸が必要なのか
QuickBooksは仕入と販売を記帳するたびに在庫数を更新します。とはいえ、破損・盗難・記帳漏れなどで、帳簿上の数と実際の数がずれることがあります。
このズレを放置すると、貸借対照表の在庫資産も売上原価も不正確になります。決算や税務申告の数字に影響するため、定期的な棚卸が欠かせません。
QuickBooksでの棚卸調整の方法
QuickBooksには「Inventory Quantity Adjustment(在庫数量調整)」という機能があります。実際に数えた数量を入力すると差分が自動で調整されます。
調整時に発生した差額は、棚卸減耗などの勘定科目に振り替えられます。アメリカでは年末に向けて棚卸を行い、その結果を決算に反映するのが一般的な実務となっています。
当サイトの見解
一般的には、棚卸は年に1回でよいと考えられがちです。しかし私個人としては、取引量が多い物販事業の方には、四半期ごと、最低でも半期ごとの棚卸をおすすめします。
なぜなら、年に1回だけだとズレが大きくなってから気づくことになり、原因の特定が難しくなるためです。一般に、こまめに棚卸をしている事業者ほど決算時の調整がスムーズで、運営も安定している傾向があります。
また、QuickBooksの在庫機能は便利ですが、商品点数が数百を超えロット管理や複数倉庫が必要になる規模では、機能が手狭になることもあります。その場合は、在庫管理専用システムとの連携を検討する段階かと思います。
まとめ
この記事では、QuickBooksの在庫管理機能について、商品登録から販売・売上原価の自動計上の流れ、そして棚卸の実務まで解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカで物販やECを営む方、在庫管理の仕組みを整えたいと考えている方の助けになれば幸いです。