この記事でわかること
「QuickBooksで店舗ごとの利益を見たいけれど、どう設定すればいいのか?」
「部門別の損益を出したいのに、勘定科目を分けるべきか迷っている…」
こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。実は、QuickBooksには勘定科目を増やさずに部門別・店舗別の損益を管理できるClass(クラス)とLocation(ロケーション)という機能があります。この2つはひとつの取引に「ラベル」を付けるだけで、後からレポートで切り分けられる仕組みです。
この記事では、Class/Locationの設定と運用から、Class / Location機能を使用する際の注意ポイントまでを解説していきます。読み終えていただければ、自社にとって無理のない部門管理の形を判断できるかと思います。
1. QuickBooksのClass機能とLocation機能とは何か
この章では、Class(クラス)とLocation(ロケーション)がそれぞれ何を管理する機能なのか、そしてなぜ勘定科目を増やすより優れているのかを整理します。最初にこの違いを押さえておくと、後の設計判断がぶれません。
結論からいえば、ClassもLocationも、取引に「タグ」を付けて後から損益を切り分けるための機能です。違いは目的にあります。
1.1. Class(クラス)とは
QuickBooks Classとは、取引を「部門」や「事業セグメント」で分類するためのタグです。たとえば、ひとつの会社で「飲食事業」と「物販事業」を運営している場合、それぞれにクラスを割り当てます。
具体的には、売上や経費を入力するときに「このコーヒー豆の仕入れは飲食事業」というように、行ごとにクラスを指定できます。なぜこれが便利かというと、勘定科目(仕入高など)はひとつのまま、事業別の損益だけを切り分けられるからです。
つまり、部門別の損益(セグメント管理)をしたいなら、Classを使うのが基本となります。
1.2. Location(ロケーション)とは
QuickBooks Locationとは、取引を「店舗」「拠点」「地域」で分類するためのタグです。たとえば「ロサンゼルス店」「サンディエゴ店」のように、物理的な場所で分けたいときに使います。
Classとの大きな違いは、Locationは取引全体に対して1つしか付けられない点です。Classは取引の明細行ごとに変えられますが、Locationは伝票単位での指定になります。
1.3. 勘定科目を増やすのとどう違うか
「店舗ごとに売上の勘定科目を分ければいいのでは?」と考える方もいます。ただ、これはおすすめしません。
その理由は、勘定科目を店舗の数だけ増やすと勘定科目表(Chart of Accounts)がすぐに肥大化するからです。たとえば3店舗あって科目が20種類あれば、単純計算で60科目になります。これでは全社合計の損益を見るのも一苦労です。
一方、Class・Locationを使えば勘定科目はシンプルなまま、レポート側で店舗別・部門別に切り替えられます。このように、セグメント管理にはClass/Locationのほうが圧倒的に管理しやすいといえます。
2. Class/Locationを使うために必要なプラン
ここでは、Class・Locationがどのプランで使えるのかを確認します。機能を設計する前に、自社のプランで使えるかを知っておく必要があるためです。
結論からいえば、ClassとLocationを使うにはQuickBooks OnlineのPlusプラン以上が必要です。
QuickBooks Onlineには主に以下のプランがあります。下位のSimple StartやEssentialsでは、ClassもLocationも使えません。
もし現在Essentials以下を使っていて部門別損益が必要であれば、Plusへのアップグレードを検討すると良いかと思います。なお、Advancedではクラスやロケーションを必須項目に設定できるなど、管理機能がさらに強化されています。
3. Class/Locationの設定手順
この章では、実際にClass・Locationをオンにして使い始めるまでの流れを解説します。設定は大きく「機能のオン」「項目の作成」「取引への入力」の3ステップに分かれます。
ステップ1:機能をオンにする
まず、Class・Locationの追跡機能を有効にします。手順は次のとおりです。
- 画面右上の歯車アイコン(Settings)をクリックします
- 「Account and settings」を開きます
- 左メニューの「Advanced」を選びます
- 「Categories」セクションで、Track classes と Track locations をオンにします
このとき、Classには「Warn me when a transaction isn’t assigned a class(クラス未入力を警告する)」というオプションがあります。入力漏れを防ぎたい場合はオンにしておくと良いかと思います。
ステップ2:ClassとLocationを作成する
次に、分類するための項目を作ります。歯車アイコンから「All lists」を開き、「Classes」または「Locations」を選んで「New」から追加します。
たとえば飲食事業と物販事業を分けるなら、Classとして「Food」「Retail」を作成します。店舗で分けるなら、Locationとして「LA Store」「NY Store」を作るといった具合です。
ステップ3:取引ごとに入力する
最後に、日々の取引を入力するときにClassやLocationを指定します。請求書、経費、仕訳などの入力画面に、ClassとLocationの欄が追加されています。
ここでひとつ実務上の注意があります。ClassやLocationのタグは「入力した取引にしか付かない」という点です。後からまとめて分類することもできますが、入力時に習慣づけておくほうがはるかに楽です。日々の入力ルールを担当者間で統一しておくことをおすすめします。
4. レポートで部門別・店舗別の損益を出す
ここでは、設定したClass・Locationを使って、実際に部門別損益(P&L)を出す方法を解説します。この章こそ、Class/Locationを導入する一番の目的にあたります。
結論からいえば、Profit and Loss by Class(クラス別損益)とProfit and Loss by Location(ロケーション別損益)という専用レポートを使えば、ワンクリックで部門別・店舗別の損益が並びます。
4.1. クラス別損益(P&L by Class)の見方
レポートメニューから「Profit and Loss by Class」を開くと、列がクラスごとに並んだ損益計算書が表示されます。たとえば「Food」「Retail」の2列が横に並び、それぞれの売上・経費・利益が一目で比較できます。
このとき、どのクラスにも割り当てられていない取引は「Not Specified」という列にまとまります。この列に大きな金額が入っていたら、入力漏れがある合図です。
4.2. ロケーション別損益(P&L by Location)の見方
店舗別の損益を見たい場合は「Profit and Loss by Location」を開きます。こちらは店舗ごとに列が並び、どの店舗が黒字でどの店舗が赤字かをすぐに把握できます。
4.3. 特定のClass・Locationだけに絞り込む
「飲食事業の損益だけを見たい」というように、特定のセグメントだけを抽出することもできます。手順は次のとおりです。
- 通常の「Profit and Loss」レポートを開きます
- レポート上部の「Customize(カスタマイズ)」をクリックします
- 「Filter」セクションを開きます
- ClassまたはLocationのドロップダウンから、見たい項目を選びます
たとえばLocationで特定の店舗タグ(例:LA Storeなど)を選べば、そのお店(例:ロサンゼルス店)だけの損益計算書になります。月次の店舗会議の資料づくりなどで重宝するかと思います。
5. クラス数を最小限にする設計指針
この章では、Class・Locationを「増やしすぎない」ための考え方を解説します。実は、多くの会社がつまずくのは設定方法ではなく、この設計の部分だからです。
結論からいえば、Class・Locationは「経営判断に使う単位」だけに絞るのが鉄則です。細かく分ければ分けるほど良いというものでもありません。
5.1. 増やしすぎると何が起きるか
クラスを細かく作りすぎると、入力時にどれを選ぶか迷い、入力漏れや入力ミスが増えます。たとえばクラスを20個も作ると、経理担当者は毎回20択から選ぶことになります。
その結果どうなるかというと、「Not Specified(未分類)」の金額が膨らみ、せっかくの部門別損益が信頼できなくなります。これでは本末転倒です。
5.2. ClassとLocationを掛け合わせない
よくある間違いが、ClassとLocationの役割を重複させてしまうことです。
たとえば「LA店の飲食」「LA店の物販」「SD店の飲食」というクラスを作ると、店舗(Location)と事業(Class)が混ざってしまいます。これではクラス数が掛け算で爆発します。
正しくは、事業の違いはClass、店舗の違いはLocationに分けて担当させることです。こうすれば「飲食×LA店」「物販×SD店」といった組み合わせも、レポートのフィルターで自由に取り出せます。
5.3. 設計のチェックポイント
クラスやロケーションを作る前に、次の点を確認すると良いかと思います。
- その分類で損益を見て、経営判断に使うか(使わない分類は作らない)
- 1つの取引が複数のクラスに当てはまらないか(迷う分類は設計が悪い)
- クラスは10個以内を目安に、ロケーションは店舗・拠点の数に収まっているか
- 事業の違いと場所の違いを混ぜていないか
当サイトの見解
一般的には「部門管理は細かいほど良い」と思われがちですが、私個人としては最初はできるだけシンプルに始めることをおすすめします。
実際にクライアントを数多く見てきた経験から、最初から細かいクラス設計を組んだ会社ほど、半年後には未分類の取引が積み上がって機能していないというケースが多いです。理由は単純で、現場の入力負担が大きすぎるからだと思います。
そのため、まず「事業セグメント」か「店舗」のどちらか一方だけから始める方法がおすすめです。たとえば1店舗で複数事業をやっているならClassだけ、同じ事業を複数店舗でやっているならLocationだけという形です。
ルール上はClassタグもLocationタグも自由に組み合わせられますが、実務の現場では「運用が続く設計」こそが価値を生みます。運用しながら必要に応じて増やしていけばよく、最初から完璧を目指す必要はないかと思います。
まとめ
この記事では、QuickBooksのClass・Location機能を使った部門別・店舗別の損益管理について解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカでQuickBooksを使って部門別・店舗別の損益を管理したいと考えている方の助けになれば幸いです。