この記事でわかること
「従業員がガソリン代や接待費を立て替えてくれたけど、QuickBooksでどう精算すればいいの?」
「経費精算と給与を一緒に振り込んでいいのか不安…」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。QuickBooksでの従業員の立替精算は、やり方さえ決めてしまえば毎月の処理は数分で終わります。QuickBooksには立替精算に使える方法が用意されており、社内ルールと組み合わせれば仕組み化することが可能です。
この記事では、従業員が立て替えた経費を精算する2つの方法、オーナー立替時との違い、そしてA4一枚で運用できる基本的な精算ルールを解説していきます。読み終えていただければ、自社に合った立替精算フローを選び、迷わず運用できるようになるかと思います。
1. 従業員の立替精算でまず押さえるべき2つの方法
この章では、QuickBooksで従業員の立替経費を精算する代表的な2つの方法を整理します。どちらを選ぶかで日々の入力の手間や記録の残り方が変わるため、最初に全体像をつかんでおくと良いかと思います。
結論からいえば、従業員の立替精算には「Bill方式」と「JE方式(仕訳方式)」の2つの方法があります。Bill方式は、従業員を「支払先(Vendor)」として登録し、立て替えてもらった分を未払い計上してから支払う方法です。JE方式は、仕訳(Journal Entry)を直接入力して立替金として処理する方法です。
Employee Reimbursement(エンプロイー・リインバースメント=従業員への経費精算)という言葉はアメリカの会計実務でもよく使われます。日本語では単純に「経費精算」と呼ばれますが、QuickBooks上の処理としてはこの2方式のどちらかに集約されます。
Bill方式とJE方式、どちらを選ぶべきか
端的にいえば、立替件数が定期的にある会社はBill方式、年に数回程度ならJE方式がおすすめです。
その理由は、記録の追いやすさにあります。Bill方式では従業員ごとに「未払い」と「支払い済み」が一覧で確認できるため、誰にいくら払うべきかが画面上で把握しやすくなります。実際にクライアントを見てきた経験からも、毎月複数の従業員から精算が上がる会社では、Bill方式のほうが支払い漏れや二重払いを防ぎやすい印象です。
一方でJE方式は、入力ステップが少なく手早く処理できる利点があります。ただし支払いとの紐付けを自分で管理する必要があるため、件数が増えると追いきれなくなるリスクがあります。
2. Bill方式による精算手順
このセクションでは、Bill方式の具体的な手順を順を追って解説します。手順は大きく3ステップに分かれます。
- 従業員を支払先(Vendor)として登録する
- 立替経費をBill(請求書)として入力する
- Pay Billsで支払いを記録する
ステップ1:従業員を支払先(Vendor)として登録する
まず、立替精算を行う従業員をVendor(ベンダー=支払先)として登録します。給与計算で使うEmployee(従業員)レコードとは別に、経費精算用のVendorを作る形です。名前は「山田太郎(Reimbursement)」のように分かりやすくしておくと、給与振込と区別しやすくなります。
給与と経費精算は会計上まったく別の取引です。給与は給与税(Payroll Tax)の対象ですが、経費精算は単なる立替金の返済であり課税対象ではありません。両者を混同しないためにも、レコードを分けておくことをおすすめします。給与に経費精算を含めて処理する場合もありますが、その点については別の記事で解説したいと思います。
ステップ2:立替経費をBillとして入力する
次に、提出された領収書(エビデンス=支払いの証拠書類)をもとに、Billを作成します。「+ New」から「Bill」を選び、先ほど登録したVendorを指定します。
ここで重要なのは、経費の中身ごとに正しい勘定科目(Expense Account)を選ぶことです。たとえばガソリン代なら「Auto Expense」、出張の食事なら「Meals」、文房具なら「Office Supplies」といった具合です。立替金としてまとめてしまうのではなく本来の費目で計上することで、後の財務分析や税務申告で正確な数字が使えます。
ステップ3:Pay Billsで支払いを記録する
実際に従業員へ振り込んだら、「Pay Bills」から該当のBillを選んで支払いを記録します。支払口座を選択し、金額と日付を入力すれば完了です。
このように処理すると、銀行口座から出ていったお金とBillが自動的に紐付き、銀行明細との照合(Bank Reconciliation)もスムーズになります。実務では銀行連携を使って入金・出金を自動で取り込み、Billとマッチングさせる運用が多いかと思います。
3. JE方式による精算手順
この章では、JE方式(仕訳を直接入力する方法)の手順を解説します。件数が少ない会社や、まずシンプルに記録だけ残したい場合に向いています。
JE方式では、立替が発生した時点で「立替金(Employee Reimbursement Payable)」という負債科目を使って仕訳を切ります。
借方:Office Supplies(消耗品費) $120
貸方:Employee Reimbursement Payable(従業員立替金) $120
その後、従業員へ振り込んだ時点で立替金を消し込みます。
借方:Employee Reimbursement Payable(従業員立替金) $120
貸方:Checking Account(普通預金) $120
JE方式の注意点は、立替金科目の残高が正しくゼロに戻っているかを定期的に確認することです。消し込み漏れがあると、いつまでも払ったはずの金額が負債として残り続けます。月次でこの科目の残高を見る習慣をつけておくと良いかと思います。
4. オーナー立替との処理の違い
この章では、従業員立替とオーナー(経営者)立替で会計処理がなぜ変わるのかを解説します。同じ「立て替え」でも、使う科目がまったく異なります。
結論からいえば、従業員の立替は「負債(払うべきお金)」、オーナーの立替は「資本(Equity)」として処理します。
その理由は、両者の立場の違いにあります。従業員は会社にとって第三者なので、立て替えてもらった分は会社の「借り」、つまり負債になります。一方でオーナーが個人のお金で会社の経費を払った場合、それは会社への出資に近い性質を持つため、Owner’s Contribution(オーナー拠出)などの資本科目で処理するのが一般的です。
具体的には、LLCやSole Proprietorship(個人事業)であれば「Owner’s Equity」や「Owner’s Contribution」、S Corporationなどで役員が立て替えた場合は「Due to Officer(役員借入金)」のような負債科目を使うケースもあります。会社形態によって扱いが変わるため、迷う場合は会計士に確認することをおすすめします。
なお、オーナー立替の詳しい処理方法については、当サイトの別記事で解説しています。あわせてご覧いただくと違いがより明確になるかと思います。
5. A4一枚で作る立替精算ルール
この章では、立替精算をトラブルなく回すために最低限決めておきたいルールを紹介します。複雑な規程は不要で、A4一枚にまとめられる程度で十分かと思います。
結論からいえば、「対象・上限・提出方法・締切・支払日」の5つを決めておけば運用が回ります。
- 対象となる経費の範囲:交通費・出張食事・消耗品など、精算してよい費目を明記する。私的な支出と区別する。
- 1件あたりの上限額:事前承認が不要な金額の上限(例:$300まで)を決める。超える場合は事前承認制にする。
- 提出方法と必要書類:領収書(エビデンス)の添付を必須にする。日付・金額・目的を記入する欄を設ける。
- 提出の締切:たとえば「毎月末締め」とし、古すぎる領収書は受け付けないルールにする。
- 支払日:精算金の振込日を固定する(例:翌月15日)。給与とは別の支払いにする。
実務でよく見る落とし穴は、領収書のない精算を口頭で認めてしまうケースです。領収書(エビデンス)がない経費は、税務調査の際に経費として否認されるリスクがあります。最初に「領収書なしは原則精算しない」と決めておくだけで、後々のトラブルを大きく減らせます。
6. Expensify等の専用ツールへの移行
この章では、QuickBooksの手入力に限界を感じてきたときの対処法について簡単に触れます。
精算件数が増え、毎月の入力が負担になってきたら、Expensifyなどの経費管理ツールの導入を検討すると良いかと思います。これらのツールは、従業員がスマホで領収書を撮影すると内容を読み取り、QuickBooksへ自動で連携してくれます。承認フローもアプリ上で完結します。
当サイトの見解としては、立替精算が月50件を超えるあたりが、専用ツール導入を考える一つの目安だと考えています。それ以下の件数であれば、本記事のBill方式やJE方式で十分に対応できるかと思います。ツールには月額費用がかかるため、削減できる作業時間と費用のバランスを見て判断することをおすすめします。
まとめ
この記事では、QuickBooksで従業員が立て替えた経費を精算する方法について解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカで事業を運営される日本人・日系企業の経理ご担当者様の助けになれば幸いです。