この記事でわかること
「アメリカでこれから事業を始めるけれど、どの会計ソフトを使えばいいのか分からない」
「今使っているソフトが自分のビジネスに本当に合っているのか自信がない」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。アメリカの会計ソフト選びは事業規模と用途で答えがほぼ決まります。米国では会計士との連携やSales Tax・Payrollへの対応がほとんどの場合で必須であり、選ぶべきソフトが用途ごとに明確に分かれているからです。
この記事では、主要な会計ソフトを事業規模別に比較し、「貴社のビジネスにはこれが最適」という結論までお伝えします。読み終えていただければ、迷いなく導入・乗り換えの一歩を踏み出せるかと思います。
この記事の目次
アメリカの会計ソフト選びがなぜ重要か
この章では、なぜアメリカで会計ソフトの選定が事業の土台になるのかを整理します。日本とアメリカの税制の違い、Sales TaxやPayrollへの対応、そしてクラウド型が主流になった背景の3点から解説します。
日本とアメリカで税制の仕組みが大きく違う
結論からいえば、日本の感覚のままアメリカで会計処理をすると思わぬ落とし穴にはまります。
なぜなら、アメリカには日本にない税務対応が数多くあるからです。たとえば、州ごとに異なるSales Tax(セールスタックス|売上税)の管理が必要になります。さらに、従業員を雇えばPayroll(給与計算)でW-2や1099などの書類対応が発生します。
また、確定申告はIRS(Internal Revenue Service|内国歳入庁)に対して行います。会計ソフトが米国税制に対応していないと、会計士が申告のたびにデータを手作業で組み替える必要が出てきます。
なぜクラウド型が主流になったのか
いまのアメリカでは、クラウド型の会計ソフトが標準です。その理由は、会計士とのデータ共有がスムーズだからです。クラウド型なら、貴社と会計士が同じ画面をリアルタイムで確認できます。銀行口座やクレジットカードと連携すれば取引が自動で取り込まれ、記帳の手間を大幅に減らすことができます。
従来のインストール型(QuickBooks Desktopなど)はデータを都度やり取りする必要がありました。この点で、クラウド型は在米日系企業や日本の親会社との連携でも圧倒的に有利です。
アメリカ主要会計ソフト5製品の比較
主な会計ソフトの立ち位置をそれぞれ整理しておきたいと思います。ここでは、QuickBooks Online・Xero・FreshBooks・Wave・Sage Intacctの5製品を、機能・料金・使いやすさ・会計士との連携という観点で比較します。
まずは一覧で全体像をつかむ
QuickBooks Online(クイックブックス・オンライン)
QuickBooks Onlineは、アメリカで最も普及しているクラウド会計ソフトです。米国のIntuit社が提供しています。
最大の強みは、会計士との連携のしやすさです。というのも、アメリカのほとんどの会計事務所がQuickBooks Onlineを標準ツールとして採用しているからです。貴社がこのソフトを使っていれば、会計士は追加の作業なしにデータを確認できます。
料金は月額$38のSimple Startから、$275のAdvancedまで4段階です。銀行連携による自動仕訳、請求書作成、給与計算、在庫管理まで幅広く対応します。
Xero(ゼロ)
Xeroは、ニュージーランド発のクラウド会計ソフトです。中小企業から成長企業まで幅広く使えます。
強みは、多通貨対応とアプリ連携の豊富さです。ユーザー数が無制限のプランがある点もチームで運用する企業には魅力です。建設・不動産・小売など業種別のソリューションもそろっています。
ただし、アメリカでの会計士の利用率はQuickBooks Onlineほど高くありません。会計士を探す際は、Xero対応かどうかを事前に確認しておくと良いかと思います。
FreshBooks(フレッシュブックス)
FreshBooksは、フリーランスや小規模ビジネスに特化しています。
特に請求書作成と顧客管理に強みがあります。オンライン決済やリマインダー機能、領収書のスマホ読み取りなど、日々の作業を効率化する機能が充実しています。会計の知識がなくても直感的に使える点が評価されているようです。
Wave(ウェーブ)
Waveは、基本機能が無料で使えるクラウド会計ソフトです。
収支管理・請求書作成・領収書スキャンといった基本機能が無料で提供されます。コストをかけたくないフリーランスや開業直後の個人事業主に向いています。ただし、給与計算や決済処理は有料の追加サービスになります。
Sage Intacct(セージ・イントアクト)
Sage Intacctは、中堅から大企業向けに設計された会計ソフトです。
複雑な財務分析、部門別の予算管理、多通貨処理など、高度な機能を備えています。複数拠点を統合管理する企業に適しています。導入には要件定義や初期設定のサポートが必要になるため、料金は個別見積もりが基本です。
【結論】事業規模別のおすすめ会計ソフト
この章では、貴社のビジネスがどの区分に当てはまるかを確認し、おすすめの会計ソフトを把握していただければと思います。フリーランス・スモールビジネス・成長企業の3区分で、明確に結論をお伝えします。
フリーランス・個人事業主なら「FreshBooks」か「Wave」
フリーランスや個人事業主には、FreshBooksかWaveをおすすめします。
コストを最優先するならWaveが最適です。なぜなら、基本機能が無料で、開業直後の収入が安定しない時期でも負担なく使えるからです。
一方、請求書を頻繁に発行するデザイナーやコンサルタントには、FreshBooksが向いています。請求と入金管理がスムーズだからです。
将来的に従業員を雇う予定がある場合には最初からQuickBooks Onlineを選んでおくこともおすすめします。後からの乗り換えの手間を省けるためです。
従業員10名以下のスモールビジネスなら「QuickBooks Online」一択
スモールビジネスの鉄板はQuickBooks Onlineです。
理由は明確です。第一に、アメリカのほとんどの会計事務所が対応しています。第二に、Sales TaxやPayrollへの対応が充実しています。第三に、事業の成長に合わせてプランを上げることで必要な機能を追加することが可能です。
実際に、私たちが日系企業のクライアントを見てきた経験でも、従業員数名規模の企業ではQuickBooks Onlineを使っているケースが大半です。会計士とのやり取りが最もスムーズですし、私たちの会社も基本的にはQuickBooks Onlineを基盤となる会計ソフトとしておすすめしています。
プランは、まずEssentials(月額$75)かPlus(月額$115)から始めると良いかと思います。在庫を扱う場合はPlusが必要になります。
成長期の中小企業・多拠点管理なら「Xero」か「Sage Intacct」
成長企業や多拠点を持つ企業は、XeroかSage Intacctを検討されると良いかと思います。
多通貨取引が多く、複数のアプリと連携したい企業にはXeroが向いています。一方、複数拠点の財務を統合管理し、部門別の高度な分析が必要な企業にはSage Intacctが適しています。
ただし、多拠点でもまだ規模が大きくないうちはQuickBooks OnlineのAdvancedプラン(月額$275)で十分対応できるケースも多くあります。いきなり高機能ソフトに飛ばず、段階的に検討することをおすすめします。
選定時に見落としがちなポイント
この章は、ソフト選びで後悔しないために必ず目を通していただきたい内容です。会計士との連携、Sales TaxとPayroll機能の有無、乗り換えコストの3点を解説します。
会計士・税理士が使いやすいソフトか
意外と見落とされるのが、会計士がそのデータを扱いやすいかという視点です。
なぜなら、貴社が記帳したデータは最終的に会計士が確定申告に使うからです。会計士が普段使っていないソフトだと、データの確認に余計な時間とコストがかかります。
もしアメリカで会計士に依頼する予定があるなら、まず会計士に「どのソフトが対応しやすいか」を先に確認することをおすすめします。多くの場合、QuickBooks Onlineが答えになるかと思います。
Sales TaxとPayroll機能があるか
州をまたいで販売する場合、Sales Taxの管理は避けて通れません。
ソフトによってはSales Taxの自動計算が標準機能でない場合があります。従業員を雇う予定があれば、Payroll機能の有無も確認が必要です。QuickBooks OnlineはどちらもオプションやAdd-onで対応できます。
乗り換えコストとデータ移行の現実
「あとで乗り換えればいい」と考える方は多いのですが、データ移行は思ったより手間がかかります。過去の取引履歴、勘定科目、顧客情報などを移す作業が発生するためです。年度の途中での乗り換えは、会計士とのすり合わせも必要になります。可能であれば、会計年度の切り替えタイミングで移行するのが現実的です。
日本の会計ソフトとの違いと注意点
この章では、弥生やfreeeに慣れた方が戸惑いやすいポイントを整理します。概念的な違いと日本語対応の実情について解説します。
弥生・freeeとは根本的に思想が違う
結論からいえば、アメリカの会計ソフトは日本のソフトの英語版ではありません。
なぜなら、対応する税制そのものが違うからです。日本の弥生やfreeeは消費税や日本の確定申告に最適化されています。一方、アメリカのソフトはSales TaxやIRSへの申告を前提に設計されています。
したがって、日本のソフトをアメリカで使うことは基本的にできません。現地の税制に対応したソフトを選ぶ必要があります。
日本語インターフェースはほぼ期待できない
アメリカの主要会計ソフトは、基本的に英語のインターフェースです。
日本語での操作を求める方も多いのですが、標準では日本語対応していないのが実情です。ただし、一部の現地日系会計事務所が導入サポートや日本語での運用支援を提供しています。英語に不安がある場合は、こうしたサポートを活用することを検討すると良いかと思います。
よくある質問(FAQ)
ここでは、会計ソフト選びで特に多く寄せられる質問にお答えします。
「無料ソフトだけで十分ですか?」
フリーランスで取引がシンプルなら、Waveの無料機能で十分なケースもあります。
ただし、従業員を雇う、州をまたいで販売する、会計士に依頼するといった状況になると、機能が足りなくなります。事業の成長を見込むなら、有料ソフトを検討することをおすすめします。
「途中からの乗り換えは大変ですか?」
正直なところ、乗り換えには一定の手間とコストがかかります。これは、過去データの移行や会計士との連携が必要になるためです。とはいえ、多くのソフトは移行ツールやサポートを用意しています。会計年度の変わり目に会計士と相談しながら進めれば、大きなトラブルは避けられるかと思います。
まとめ
この記事では、アメリカの主要会計ソフトを事業規模別に比較し、それぞれに最適な選択肢を解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカで会計ソフト選びに迷っている日系企業・個人事業主の方の助けになれば幸いです。