この記事でわかること
「アメリカで記帳代行や経理代行を頼みたいけれど、何が違うのか分からない」
「うちの会社はどっちを選べばいいのだろう?」
こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。一見すると似たような名前の両者ですが、「記帳代行」と「経理代行」では担当する業務の範囲が明確に分かれています。こうしたサービスを提供する会社の中には、記帳代行のみを取り扱っているケースも少なくありません。
この記事では、両者の業務範囲をアメリカビジネスの実務視点で線引きし、比較表と判断フローで整理していきます。読み終えていただければ、自社にどちらのサービスが合うのかを判断する材料が得られるかと思います。
この記事の目次
アメリカにおける記帳代行・経理代行とは
まずは全体像から押さえておきます。といっても、仕組みそのものは日本と大きく変わりません。
日々の取引を帳簿に記録する「記帳」、月次決算や支払管理までを含む「経理」、そして年に一度の「税務申告」。この3つのうち、記帳と経理の部分を外部に委託するのが記帳代行・経理代行です。日本で記帳代行や経理アウトソーシングを利用されたことがある方なら、ほぼ同じイメージで捉えていただいて差し支えありません。
記帳代行(Bookkeeping Services)が担当する業務
この章では、記帳代行が「どこまでやってくれるのか」を明確にします。範囲を知らずに契約すると、期待していた作業が含まれず追加費用が発生することがあるためです。
記帳代行の中心は、主に「取引の記録」「勘定科目への分類」「銀行残高との照合」の3つです。以下、順に解説します。
1. 取引の記録(Recording)
記帳代行の基本業務は、日々の取引を会計ソフトに入力することです。売上・仕入・経費などの取引をQuickBooksなどのシステムに1件ずつ記録していきます。
たとえば、レシートや請求書、銀行明細をもとに「いつ・いくら・何のために」お金が動いたかを入力します。この作業が正確でないと、後の月次決算や税務申告すべてに影響が出ます。
2. 勘定科目への分類(Categorization)
次に、記録した取引を適切な勘定科目(Account)に振り分けます。たとえば、オフィスの家賃は「Rent Expense」、広告費は「Advertising」に分類します。
この分類が適切であれば、後で「何にいくら使ったか」がひと目で分かります。分類のルールを最初にしっかり決めておくことが、正確な帳簿作成につながります。
3. 銀行残高との照合(Reconciliation)
Reconciliation(照合)とは、会計ソフト上の残高と、実際の銀行口座やクレジットカードの残高を突き合わせる作業です。
この照合を毎月行うことで、入力漏れや二重計上を発見できます。実務経験上、この照合をしていないと決算時に原因不明の差額が積み上がり、修正に多くの時間がかかるケースが少なくありません。
経理代行(Accounting Outsourcing)が担当する業務
この章では、記帳代行より一歩踏み込んだ経理代行の範囲を解説します。どこまで任せられるかを理解すれば、自社に必要なサービスレベルが見えてくるためです。
経理代行は、記帳の業務すべてに加えて、支払管理・請求管理・給与計算・月次レポートまでをカバーします。以下、代表的な業務を挙げます。
1. 買掛金・売掛金管理(AP / AR)
AP(Accounts Payable|買掛金)は、取引先への支払い管理です。仕入先からの請求書を管理し、期日までに支払いを実行します。
AR(Accounts Receivable|売掛金)は顧客への請求と入金管理です。請求書(Invoice)を発行し、未回収の売掛金を追いかけます。多くの場合で、経理代行にはこの資金の出入りを管理する業務が含まれます。
2. 給与計算(Payroll)
従業員の給与計算も経理代行の範囲に含まれることが多いです。給与額の計算、源泉徴収、給与明細の発行などを行います。
ただし、給与計算は専門のPayrollサービス(ADP・Gustoなど)と連携して処理するケースが一般的です。給与に関わる税金の申告は税務の領域とも重なるため、担当範囲を契約時に確認しておくと良いかと思います。
3. 月次レポートの作成(Financial Reporting)
この点は記帳代行と重なる部分ですが、経理代行においても毎月の損益計算書(P&L)や貸借対照表(B/S)を作成します。経営者が「今月はいくら儲かったか」「会社の財政状態はどうか」を把握するための資料です。
記帳代行においては単なる資料作成がメインとなりますが、特に経理代行においては、その先の財務分析や簡単な報告レポートまでが含まれることもあります。
記帳代行と経理代行の違いを比較
ここまでの内容を、比較表で一気に整理します。記帳代行と経理代行を選ぶ際の判断材料として活用いただければと思います。
◯は基本的に含まれる業務、△は契約により含まれる場合がある業務、✕は含まれない業務です。表を見ると分かるとおり、記帳代行は取引の記録や月次レポート作成までが基本で、経理代行はそこに支払い・資金管理や給与計算等が加わります。
経理業務の外注範囲を考えるうえで大切なのは、どこまでを外部に任せ、どこからを社内で持つかを決めることだと思います。取引を記録するだけで十分なのか、支払いや請求管理まで任せたいのかで選ぶサービスが変わってきます。
税務申告は別枠
税務申告については、基本的にCPA(米国公認会計士)やEA(税務代理人)が担当することが多いです。法律上、IRS発行のPTIN(税務申告書作成者番号)さえあれば、資格がなくても報酬を得て申告書を作成すること自体は可能です。ただし、監査、納税・徴収問題、不服申し立てなど、あらゆる事項について顧客をIRSの前で代理できる「無制限の代理権限」を持つのは、CPA・EA・弁護士といった有資格者に限られます。無資格の作成者は代理できる範囲や相手に大きな制限があり、不服申し立てや徴収の場面では自分が作成した申告書であっても顧客を代理できません。
詳しくは以下をご覧ください。
実務でよくある誤解は、「経理代行を頼んでいるから税務申告もやってくれるはず」という思い込みです。記帳・経理と税務は別サービスであり、多くの場合それぞれ別の契約が必要になります。ただし、会計事務所によっては記帳から税務申告までワンストップで提供している場合もあります。契約前に「どこまでカバーされるか」を確認しておくことをおすすめします。
記帳代行と経理代行のどちらを選ぶか
ここでは、自社にどちらが合うかを判断する流れを整理します。事業規模や取引量によって、最適なサービスは変わるためです。
判断のための3つの問い
判断の基本は、次の3つの問いに答えることだと思います。
- 取引の記録と整理だけできれば十分か、それとも支払い・請求管理まで任せたいか
- 従業員がいて給与計算が必要か
- 毎月の損益や財政状態を経営判断に使えるレポートで見たいか
取引の記録と整理で十分であれば、記帳代行で足りるケースが多いです。一方で、支払い・請求の管理や給与計算などの周辺業務のサポートまで必要であれば、経理代行を選ぶのが自然な流れです。もちろん、経理代行の中でも一部だけは自社で実施するというケースも多いので、そこは会計事務所や代行会社と相談すると良いかと思います。
目安としては、事業を始めたばかりで取引量が少ない場合は記帳代行から始め、事業が成長して資金管理などが煩雑になってきたら経理代行に切り替える、という進め方が予算の観点からも現実的かと思います。
当サイトの見解
私個人としては、早い段階で「照合(Reconciliation)」だけは毎月きちんと行う体制を作ることをおすすめします。
なぜなら、実際に多くのクライアントを見てきた経験から、照合を後回しにすると決算時に差額の原因調査で膨大な時間がかかるケースが大半だからです。記帳代行という最小限のサービスであっても、毎月の照合作業が契約に含まれているかどうかは必ず確認していただきたいと思います。
また、記帳・経理と税務申告を別々の業者に分けると、決算時に情報の引き継ぎで手間が生じることがあります。可能であれば、記帳から税務まで見通せる体制や外注先を最初から意識しておくと、後の負担が軽くなるかと思います。
まとめ
この記事では、アメリカにおける記帳代行と経理代行の違い、そしてどちらをどう選ぶかについて解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカで記帳代行・経理代行の選択に迷われている方の助けになれば幸いです。