経理・記帳

Bookkeeper・CPA・EAの違いと使い分けをわかりやすく解説【アメリカの経理・税務申告】

更新 2026.07.25 約13分で読了 米国公認会計士(CPA)監修済み記事

「アメリカには税理士がいないと聞いたが、本当か?」
「Bookkeeper・CPA(米国公認会計士)・EA(税務代理士)って、何がどう違うのだろう?」

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。アメリカの会計・税務は担当する専門家の種類ごとに権限や役割がはっきりと分かれています。

この記事では、Bookkeeper・CPA・EAの3者を、権限・業務範囲・費用の面から比較して解説していきます。読み終えていただければ、自社が「誰に何を頼めばよいか」を判断する材料が手に入るかと思います。

この記事の目次

アメリカに “税理士” がいない理由

この章では、日本の税理士制度との違いを先に整理します。ここを理解しておくと、次の3者の役割分担がすっきり見えてくるかと思います。

結論からいえば、アメリカには日本の「税理士」に一対一で対応する資格が存在しません。日本では税理士が独占業務として税務代理・税務書類の作成・税務相談を担いますが、アメリカではこれらの機能が複数の専門家に分散しています。アメリカで税務の相談先を探すときは、「税理士」という一つの職種ではなく、CPA(公認会計士)・EA(税務代理士)という主に2つの選択肢から選ぶことになります。弁護士の中にも税法に詳しい方はいらっしゃいますが、多くの場合はこの2つが一般的な選択肢になります。

また、時々EAの資格を「米国税理士」と称される方がいらっしゃいます。個人的には、その呼称の方がお客様にとっては理解しやすいと思うので全く問題ないと思っていますが、正確には日本の税理士に相当する資格ではないという点はご理解いただくと良いかと思います。

Bookkeeper・CPA・EAの権限・業務範囲・費用を比較

この章では、3者の違いを一覧で把握できるようにします。まず比較表で全体像を示し、そのあと「ブックキーパーとは」から順に、各職種の中身を説明していきます。

比較項目 Bookkeeper CPA EA
資格の性質 資格不要 州ごとのライセンス
(注:ライセンス州に限定されず、基本的に全米でサービス提供が可能
IRS(連邦)の資格
(全米でサービス提供が可能)
主な業務 日々の記帳・入力 会計・監査・税務・経営助言 税務全般
税務申告書への署名 不可 可能 可能
IRS代理権 なし 無制限 無制限
費用の目安 時給$25〜$60 時給$150〜$400 時給$100〜$250

Bookkeeper(ブックキーパー)とは

Bookkeeperは、日々の取引の記帳を担う担当者です。売上や経費の入力、請求書の管理、銀行口座との照合(Reconciliation)などが主な仕事です。

「ブックキーパーとは」という言葉を調べると、しばしば「経理担当者」と訳されます。日本の経理事務に近い役割と考えていただくと近いかと思います。QuickBooksなどの会計ソフトへの入力を任せる相手が、このBookkeeperにあたります。

特徴は、Bookkeeperという国家資格は存在しないという点です。実務経験や研修で身につけるスキルであり、資格がなくても業務を行えます。QuickBooks ProAdvisorなど民間の認定はありますが、これは資格というより製品の習熟度を示すものです。

そのため、Bookkeeperの方の経験によっては記帳は任せられますが、税務申告書への署名やIRSへの代理はできません。あくまで数字を正確に整えるのがBookkeeperの役割です。

また、個人的な経験ではBookkeeperの方で米国税務にも精通している方はあまり多くありません。記帳代行においては税務申告のデータとして耐えうる証跡の保存や科目の整理が求められる場面が多々あります。その点では、米国税務に一定程度の知見があるCPAやEAに任せた方が安心できます。

CPA(Certified Public Accountant|公認会計士)とは

CPAは、州のライセンスを持つ会計の専門家です。一般には、会計・監査・税務・経営コンサルティングまで幅広い業務をカバーします。

CPAになるには、州ごとの試験(Uniform CPA Examination)に合格し、実務経験を積んだうえで州のBoard of Accountancyからライセンスを得る必要があります。CPAとEAの違いを考えるうえで大きいのは、CPAが財務諸表の監査(Audit)やレビューを行える唯一の資格である点です。

日本の親会社がグループ監査のために監査報告を求めるケースでは、CPAでなければ対応できません。税務だけでなく、財務全般を見てほしい場合にはCPAが適していると言えます。

EA(Enrolled Agent|税務代理士)とは

EAは、IRS(内国歳入庁)が認定する連邦資格を持つ税務の専門家です。IRSの試験(Special Enrollment Examination)に合格するか、IRSでの実務経験を経て認定されます。

特徴として、EAは税務に特化しています。CPAとの違いを一言でいえば、EAは監査や財務諸表の作成はできませんが、税務に関してはCPAと同じくIRSへの無制限の代理権を持つという点です。

費用面ではCPAより抑えられる傾向があります。税務申告や税務調査対応だけを頼みたい場合、EAは有力な選択肢です。

IRS代理権と税務申告書への署名について

この章が3者を見分けるうえで最も重要です。なぜなら、権限の違いがそのまま「頼める・頼めない」の境界線になるからです。ここではIRS代理権と署名の2点にしぼって整理します。

税務申告書に署名(Paid Preparer 署名)できるのは誰か

他人の税務申告書を有償で作成する人は、IRSからPTIN(Preparer Tax Identification Number|報酬申告書作成者番号)を取得する必要があります。そのうえで申告書の作成者欄に署名します。

PTIN自体はBookkeeperのような無資格者でも取得することが出来ます。ただし、申告書を専門家として責任を持って作成し署名するのは、実務上CPAまたはEAが担うのが一般的です。記帳を任せているBookkeeperに申告書まで頼むのは、一般的に言えば避けたほうが安全かと思います。

IRSへの代理権(Representation)の違い

IRS代理権とは、税務調査や不服申立て、税額の交渉などの場面で納税者本人に代わってIRSと対応する権限です。ここに明確な差があります。

  • CPA・EA・弁護士:IRSに対して無制限(Unlimited Representation Rights)の代理権を持ち、調査や交渉に本人の代わりで臨めます。
  • PTINだけの申告作成者:代理権は制限的で、自分が作成した申告書に関する限定的な対応にとどまります。
  • Bookkeeper:資格がないため、IRS代理権はありません。

つまり、IRSから調査通知(Notice)が届いたときに矢面に立てるのは、CPAかEA(または弁護士)だけということになります。この違いを知らずにBookkeeperや無資格者に任せていると、いざというときに対応できず慌てることになりますので注意が必要です。

当サイトの見解|実際の役割分担と使い分け

この章では、CPAとして実際に見てきた役割分担の例をもとに、誰に何を頼めばよいかを整理します。ここを読めば、自社に必要な体制のイメージがつかめるかと思います。

実務でよくある役割分担の例

結論からいえば、多くの日系企業では次の分業が最も効率的だと考えています。

  • 日々の記帳ドラフト:社内のBookkeeperや経理担当者がいる場合は、その方々に任せる
  • 月次または四半期のレビュー:税務にも精通したCPAが確認する
  • 年次の法人税申告(Form 1120など):CPAまたはEAが担当する

社内に経理の人手がいない場合は、リーズナブルな費用で日々の記帳代行とレビューまでを一括で引き受けてくれるCPAに任せてしまうのが、結果的にシンプルで安く済むことが多いです。

たとえば、ある有名レストランのクライアントでは、月々の売上・仕入・給与の入力を社内の担当者が行い、四半期ごとのレビューと年次の法人税申告をCPA側で行う形をとっていました。通常であれば、日々の細かい入力までCPAに頼むのはコストが見合いません。入力作業は社内で完結させ、専門判断が必要なレビューと申告だけをCPAもしくはEAが担うことで、費用と品質のバランスをとることが可能です。

記帳のレビューは、税務がわかるCPAに任せた方がよい理由

ここで一点、実務経験から強調しておきたいのは、日々の記帳は必ず税務にも精通したCPAにレビューしてもらった方がよいという点です。

理由は明確で、税務の観点で正しくない記帳が一年分積み上がった状態で年次申告を迎えると、CPA側でデータをさかのぼって修正する作業が発生し、思わぬ追加コストや申告作業の遅延を生むからです。記帳の時点では小さなズレでも、申告時にまとめて直すとなると修正の工数は入力時の何倍にもなります。

このため、「記帳を税務に精通していないBookkeeperに丸ごと任せ、税務申告だけをCPA・EAに依頼する」という組み方は、一見安く見えても、上記の修正コストを考えるとおすすめしていません。税務申告そのものをEAに任せる分には問題ありませんが、その手前の記帳は税務も会計も両方わかっているCPAが定期的に見ている状態を作っておく方が、結果的に効率的で、トータルでは安く済む場合が少なくありません。

誰に何を頼むかの判断軸

整理すると、頼む相手は業務の性質で決めるのが分かりやすいかと思います。

  • 日々の記帳ドラフト・入力・請求管理:社内のBookkeeper・経理担当者で十分です。社内に人手がいなければ、記帳代行まで対応するCPAに任せる選択肢があります。
  • 記帳の月次・四半期レビュー:税務にも精通したCPAに依頼するのが、申告時の修正コストを防ぐうえで合理的です。
  • 税務申告・税務調査対応:CPAまたはEAが担当します。申告のみであればEAも費用対効果に優れます。
  • 監査・財務諸表・経営全般:CPAが適しています。例えば日本の親会社への報告や監査対応が必要な場合は、CPA一択になります。

「CPAとEAのどちらか」で迷った場合、申告だけならEAでも問題ありませんが、記帳のレビューから一貫して見てもらうならCPAという基準がシンプルかと思います。私たちとしては、事業規模が拡大し複数の州にまたがる取引や監査要請が出てくる段階では、CPAを軸にした体制をおすすめします。

まとめ

この記事では、アメリカのBookkeeper・CPA・EAの権限・業務範囲・費用の違いと、誰に何を頼むかの使い分けについて解説してきました。

以下に、この記事のポイントを整理しておきます。

Bookkeeper・CPA・EAの違い|誰に何を頼めるか
比較項目 Bookkeeper
(記帳担当)
CPA
(公認会計士)
EA
(税務代理士)
資格の性質 無資格でも担当可能 州ごとのライセンス
(注:ライセンス州に限定されず、基本的に全米でサービス提供が可能
IRS(連邦)の資格
主な業務 日々の記帳・入力 会計(日々の記帳・入力)・監査・税務・
経営助言
税務全般
申告書への署名 不可 可能 可能
IRS代理権 なし 無制限 無制限
費用の目安 時給 $25〜$60 時給 $150〜$400 時給 $100〜$250

この記事が、アメリカで会計・税務の相談先を探している日本人・日系企業の方の助けになれば幸いです。