この記事でわかること
「アメリカで経理を外注すると、月いくらかかるのでしょうか?」
「自社で経理担当を雇うのと、代行に頼むのはどちらが安いのでしょうか?」
こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。経理代行の料金は「どこまで任せるか」で大きく変わります。この記事では、代行範囲別の料金相場と自社採用との年間総額の比較を、データをもとに整理していきたいと思います。読み終えていただければ、自社にとってどちらが合理的かを判断する軸が手に入るかと思います。
なお、料金は事務所や州によって幅があるため、あくまで目安としてご覧いただければ幸いです。
この記事の目次
1. アメリカの経理代行とは何を指すのか
まず、経理代行が具体的に何を代わりにやってくれるのかを整理しておきます。ここを押さえると、料金の違いも理解しやすくなるからです。
アメリカの経理代行(Accounting Outsourcing)は、大きく次の3層に分かれます。
- 記帳・月次決算(Bookkeeping):日々の取引入力、銀行口座の照合(Bank Reconciliation)、月次の損益計算書(P&L)作成
- 買掛金および売掛金の管理業務:買掛金(Accounts Payable)の支払管理、売掛金(Accounts Receivable)の請求・回収管理
- 給与計算(Payroll):給与の計算、源泉徴収、給与税の申告・納付
このうちどこまでを外注するかによって、月額の料金は大きく変わってきます。そのため、料金を比較する際は「同じ範囲で見積もっているか」を確認することが大切です。
2. 経理代行の料金相場
この章では、外注する範囲ごとの月額料金の目安を示します。記帳のみ・買掛金および売掛金管理業務の追加・給与計算業務の追加という3段階で、費用感がどう変わるかを見ていきます。
結論からいえば、最低限の記帳のみなら月$500前後、フルスコープになると月$2,000〜$5,000程度が一般的な相場です。
記帳+月次のみ
もっとも小さい範囲の経理アウトソーシングです。一般には「記帳代行」と呼ばれるサービスになります。取引件数が月100件程度までの小規模事業者であれば、この価格帯(月$300〜$800)におさまることが多いです。
なぜこの範囲だけで足りる会社があるかというと、支払や請求を経営者本人が行い、「記録だけを正確に残したい」というニーズがあるためです。開業したばかりの飲食店や個人事業のケースでよく見られます。
買掛金・売掛金の管理業務を追加する場合
買掛金・売掛金の管理を任せると、月額はおおむね2倍前後に上がります。ベンダーへの支払管理や顧客からの入金管理にはどうしても人の判断と時間がかかるためです。
具体的には、仕入先への支払スケジュール管理、顧客への請求書発行、入金の消し込みといった作業が加わります。取引先が増えてきた会社にとっては、ここを外注する価値が大きくなるかと思います。
給与計算まで含めたフルスコープ
給与計算(Payroll)も加えると、一般的なフルスコープの経理代行になります。給与計算には、Form 941(四半期の給与税申告書)やForm 940(連邦失業税の年次申告書)の作成、各州への納付など、税務的な専門知識が必要な作業が多く含まれます。ここは誤ると罰金につながりやすい領域なので、外注する会社が多い部分です。
3. なぜ記帳・月次だけでも外注する価値があるのか
この章では、記帳や月次決算という小さい範囲だけでも外注する意味がある理由を考えてみたいと思います。「そのくらい自分でできる」と考える方が少なくないからです。
結論からいえば、記帳を後回しにすると、決算や税務申告の直前に大きな手戻りが発生します。
なぜなら、1年分の取引をまとめて整理するのは、毎月コツコツ記録するより何倍も手間がかかるからです。銀行の明細と帳簿が合わないまま放置すると、原因を探すだけで数十時間かかるケースもあります。
たとえば、月次で口座照合をしていれば二重計上や記録漏れをその月のうちに気づけます。記帳や月次決算は外注の相場としては安い部類ですが、経営者の時間を守るという意味では投資対効果が高い部分かと思います。
よくある落とし穴
実務でよく見るのは、「安さだけで選んだ結果、月次レポートが出てこない」というケースです。記帳代行と名乗っていても、月次のP&Lやバランスシート(B/S)を渡さない事務所もあります。契約前に「毎月どんなアウトプットやレポートをもらえるのか」を必ず確認すると良いかと思います。
4. 社内で経理を雇う場合の年間総額
ここからは比較の相手方、つまり社内(in-house)で経理担当を採用した場合のコストを見ていきます。給与だけを見て判断すると、実際の負担を大きく見誤るからです。
結論からいえば、給与に加えて福利厚生と採用費を足すと、年間の総額は給与の1.3〜1.4倍になります。
経理担当者の給与水準
米国労働統計局(BLS)のデータによると、Bookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks(経理・会計事務員)の年間給与の中央値は、おおむね$47,000〜$48,000程度です。都市部やスキルの高い人材では$60,000を超えることもあります。
給与以外にかかるコスト
アメリカでの経理人材の人件費を比較するうえで見落としがちなのが、給与に上乗せされる負担です。米国労働統計局(BLS)の雇用主コスト統計では、福利厚生などのベネフィットが総報酬の約3割を占めます。
- 雇用主負担の給与税(FICA等):給与の約7.65%
- 健康保険(Health Insurance):年$6,000〜$12,000程度
- 有給休暇・401(k)などの福利厚生:会社の制度による
- 採用費(求人広告・面接・研修):初年度に数千ドル規模
これらを積み上げると、給与$48,000の担当者を1人雇う場合、年間の総額は$62,000〜$68,000程度になります。さらに、有給や休職の間も業務が止まらないよう体制を整える必要があります。
当サイトの見解
私たちが数多くの日系企業を見てきた経験から申し上げると、従業員4〜5名の会社が経理専任者を1人雇うのは、多くの場合コスト過剰になりがちです。実際には経理担当者の稼働が週数時間で足りるのに、フルタイムの給与と福利厚生を負担しているケースが少なくありません。また、もし自社で採用した経理専任者が急遽退職することになった場合、新しい従業員の採用までの間も経理業務が止まらないような体制を整えておく必要があります。外注の場合には、このような状況は起きません。
まずは外注で始め、業務量が増えてから採用を検討する順番をおすすめしています。
5. 外注と社内採用、どちらが得かの損益分岐
この章では、経理代行の月額と自社採用の年間総額を並べ、どこで損得が入れ替わるかを示します。
結論からいえば、フルスコープの経理代行(年$24,000〜$48,000)は、社内採用の総額(年$62,000〜$68,000)を下回るケースがほとんどです。
損益分岐の考え方
目安としては、経理業務のボリュームがフルタイム1人分に達したときが分岐点になります。それ以下であれば外注、それ以上なら自社採用(または代行会社との併用)が合理的になります。
外注は「使った分だけ」の料金であるのに対し、自社採用は業務量に関係なく固定費がかかってしまいます。したがって、取引件数が月数十件の会社で、フルタイムの経理担当を雇うのは割高になります。
数字だけでは測れない要素
ただし、金額の比較だけで決めるのは危険です。両面を見て判断する必要があります。
外注する場合
- メリット:固定費を抑えられる / 専門家の知見を使える / 担当者の退職リスクがない
- デメリット:社内に経理ノウハウが蓄積しにくい / 会計事務所によってはレスポンスに時間差が出ることがある
自社採用する場合
- メリット:自社の事情を深く理解した対応が可能
- デメリット:固定費が高い / 採用・教育・退職の負担がある
実務の現場では、「日常の記帳・給与計算などは外注し、社内には管理者を1人置く」というハイブリッド型を選ぶ会社が増えています。これは、コストと管理体制のバランスが取りやすいためです。
まとめ
この記事では、アメリカの経理代行の料金相場と、自社採用との年間総額比較について解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
※ 料金は事務所や州によって幅があります。
この記事が、アメリカで経理体制の作り方に悩む経営者・担当者の方の助けになれば幸いです。