経理・記帳

QuickBooksのProjects機能で案件・顧客別の収支を簡単に見える化する方法

更新 2026.07.26 約13分で読了 米国公認会計士(CPA)監修済み記事

「この案件、ちゃんと儲かっているのだろうか?」
「顧客ごとの損益をもっと簡単に把握できないだろうか?」

こうした課題を持つ方は多いのではないでしょうか。QuickBooksのProjects機能を使えば、案件別・顧客別の収支を1画面で確認できるようになります。

この記事では、Projectsの使い方から収入・支出の紐付け、Project Profitabilityレポートの読み方までを順番に解説していきます。

この記事の目次

1. QuickBooksのProjects機能とは

まずProjects機能の位置づけを押さえておくと、後の操作がスムーズになります。ここでは「Projectsとは何か」「旧Sub-customer/Jobとの関係」「どんな業種に向くか」を整理します。

Projectsは「案件ごとの財布」

結論からいえば、Projectsは1つの案件(プロジェクト)に紐づく収入と費用をまとめて管理する機能です。たとえば「A社向けWebサイト制作」という案件があれば、その案件で得た売上と、かかった人件費・外注費・材料費を1つのProjectに集約できます。

これにより、案件ごとに「いくら入ってきて」「いくらかかって」「いくら残ったか」が一目でわかります。会社全体のP&L(損益計算書)だけでは見えない、案件単位の採算が見えるようになるわけです。

旧Sub-customer(サブカスタマー)/Jobとの関係

QuickBooksを長く使っている方は、以前「Sub-customer」や「Job」という機能で案件管理をしていたかもしれません。Projectsは、これらの後継にあたる機能です。

従来のSub-customerでも顧客の下に案件をぶら下げる管理は可能でした。ただ、収支を集計するレポートが弱く、案件別の利益を見るには工夫が必要でした。Projectsでは専用のProfitabilityレポートが用意されており、案件別の収支がはるかに見やすくなっています

どんな業種・働き方に向いているか

Projectsが特に役立つのは、案件単位で仕事を受ける業種です。具体的には次のような方が向いています。

  • Web制作・デザイン・動画制作などの受託業
  • コンサルティング・士業など時間で稼ぐ業種
  • 建設・リフォーム・内装工事などの請負業
  • イベント・撮影など、案件ごとに経費が大きく変わる業種

逆に、毎月同じサービスを定額で提供する業種では案件管理の必要性は下がります。自社のビジネスが「案件単位で動いているか」を判断の目安にすると良いかと思います。

2. Projects機能を使い始める準備

Projectsを使うには、いくつか事前の準備が必要です。プラン要件の確認、機能の有効化、最初のProject作成の順に見ていきます。

対応プランを確認する

Projectsは、QuickBooks Onlineの上位プランで利用できます。具体的にはPlus・Advanced・Solopreneurの一部プランで利用可能です。一番下のSimple Startプランでは使えません。

もし現在Simple StartやEssentialsをお使いの方で、案件別の収支管理をしたい場合にはPlusへのアップグレードを検討すると良いかと思います。料金は時期やキャンペーンで変動するため、契約前に最新の金額をご確認ください。

Projectsを有効にする

Projects機能は、初期状態でオフになっている場合があります。有効化の手順は次のとおりです。

  • 画面左メニューから「Projects」を選ぶ
  • 表示されない場合は、Settings(歯車アイコン)→「Account and settings」→「Advanced」を開く
  • 「Projects」の項目で「Use project financial tracking」をオンにする

有効化すると、左メニューにProjectsが表示されるようになります。

最初のProjectを作成する

準備が整ったら、案件を1つ作ってみましょう。Projects画面で「New project」をクリックし、Project名を入力します。そして必ず「Customer」欄で、その案件の顧客を選択(または新規作成)してください

Projectは必ず1つの顧客に紐づく仕組みです。同じ顧客から複数の案件を受けている場合は、案件ごとにProjectを分けて作成します。たとえば「B社_ロゴ制作」「B社_サイト制作」のように分けると、顧客別の損益と案件別の収支の両方を追えるようになります。

3. 時間・経費・請求をProjectに紐付ける

Projectsの精度は、取引をどれだけ正確に紐付けられるかで決まります。ここでは作業時間・経費・請求書の3つについて、紐付けのやり方を順に解説します。これを押さえないと正しい収支が出ないため、本章はProjects機能を活用する上での肝とも言えます。

作業時間(Time)を紐付ける

コンサルや受託業では、人件費が最大のコストになります。そこで重要なのが、作業時間をProjectに紐付けることです。

時間の記録は、QuickBooks内の「Time」機能やQuickBooks Timeを使います。時間を入力する際に、次の項目を選ぶことで案件原価として反映されます。

  • Project:どの案件の作業かを選ぶ
  • Service item:作業内容(コンサル・デザインなど)を選ぶ
  • Cost rate(原価レート):その作業の時間単価(人件費)を設定する
  • Billable:顧客に請求する時間なら「Billable」にチェック

ここでCost rateを設定しておくと、作業時間が自動でProjectのコストとして計上されます。たとえば時給$50のスタッフが10時間作業すれば、$500がその案件の人件費として記録されるイメージです。

実務では、このCost rateの設定漏れが非常によくある落とし穴です。レートを入れないと「時間は記録されているのに原価がゼロ」という状態になり、利益が実態より大きく見えてしまいます。案件を始める前に、関係するスタッフの原価レートを設定しておくことをおすすめします。

経費(Expense)を紐付ける

外注費・材料費・交通費などの経費も、Projectに紐付けます。建設業であれば資材費、受託業であれば外注デザイナーへの支払いなどが該当します。

経費を入力する画面(Expense・Bill・Checkなど)では、明細行に「Customer/Project」を選ぶ欄があります。ここで該当のProjectを選べば、その経費が案件コストとして集計されます。

もし顧客にそのまま請求する経費(立替経費など)であれば、行の「Billable」にチェックを入れておきます。こうすると後から請求書に取り込めて、請求漏れを防げます。

請求書(Invoice)を紐付ける

発行した請求書もProjectに紐付けることで、はじめて収支が完成します。請求書を作成する際、顧客を選んだうえで「Project」を指定できます。さらに、先ほどBillableにしておいた時間や経費があれば、画面右側に「Add to invoice」として候補が表示されます。これをクリックするだけで、未請求の作業時間・立替経費を請求書に反映することができます。

この流れの良いところは、「かかったコスト」と「請求した売上」が同じProjectに集まり、請求漏れも防げる点です。受託業でありがちな「経費を立て替えたのに請求し忘れた」というミスを仕組みで防止できます。

4. Project Profitabilityレポートで採算を見る

取引を紐付けたら、いよいよ収支を確認します。ここではProject画面での確認方法とレポートの読み方を解説します。数字をどう読み解くかが、この章のポイントです。

Project画面で収支を確認する

各Projectを開くと、画面上部に収支のサマリーが表示されます。主に見るべき数字は次の3つです。

  • Income:その案件で計上した売上
  • Costs:その案件にかかった経費・人件費の合計
  • Profit:IncomeからCostsを引いた利益(粗利)

さらに「Profit margin(利益率)」も表示されるため、案件ごとの儲けの厚みを一目で比べられます。利益率が極端に低い案件があれば、見積もりの精度や作業効率を見直すサインになります。

Project Profitabilityレポートの読み方

複数の案件を横並びで比べたいときは、「Project Profitability」レポートを使います。Reportsメニュー、または各Project画面の「Project reports」から開けます。

このレポートでは、案件ごとに収入・原価・利益が一覧表示されます。次のような視点で見ると、改善につながります。

  • 赤字の案件はないか:Profitがマイナスの案件は要注意
  • 利益率の差:同じような案件で利益率に差があれば原因を分析する
  • 原価の内訳:人件費が膨らんでいないか、外注費が想定を超えていないか

下に、レポートで確認できる代表的な項目を整理しました。

項目 内容 チェックの視点
Income 案件の売上 請求漏れがないか
Costs 人件費・経費の合計 原価レートの未設定がないか
Profit 利益(Income − Costs) マイナス案件がないか
Profit margin 利益率(%) 案件間で差が大きくないか

当サイトの見解

Projectsは便利な機能ですが、実務で見てきた経験からいうと「導入したものの、Cost rateを設定しておらず利益が過大に見えている」ケースが少なくありませんです。時間は記録されているのに原価がゼロのままだと、レポート上はどの案件も黒字に見えてしまいます。

一般的にはProfitabilityレポートの数字をそのまま信じがちですが、まず原価レートが全スタッフ・全Projectで正しく入っているかを最初に確認することをおすすめします。ここが整っていないと、レポートが「きれいな嘘」になってしまうためです。

もう1つの落とし穴は、間接費(家賃・管理部門の人件費など)はProjectのCostsに含まれない点です。Projectsで見えるのはあくまで案件に直接ひもづく粗利です。会社全体の利益とは別物だと理解したうえで、「案件単位の粗利管理ツール」として割り切って使うのが、もっとも実務に合った活用法だと考えています。

まとめ

この記事では、QuickBooksのProjects機能を使った案件別・顧客別の収支管理について解説してきました。

以下に、この記事のポイントを整理しておきます。

QuickBooks Projects機能で「案件別の財布」を見える化
ステップ 内容
STEP 1|準備 Plus等の対応プランで機能を有効化し、顧客に紐づくProjectを作成(案件ごとに分ける)
STEP 2|紐付け 時間・経費・請求をProjectに正確に紐付け。Cost rate設定漏れに注意
STEP 3|確認 Project Profitabilityレポートで案件ごとの採算を確認・読み解く
向いている業種:受託業(Web・デザイン)/コンサル・士業/建設・リフォームなど「案件単位で動く」ビジネス

この記事が、案件ごとの採算をきちんと把握したいと考えている受託業・コンサル・建設業の方の助けになれば幸いです。