この記事でわかること
「この案件、ちゃんと儲かっているのだろうか?」
「顧客ごとの損益をもっと簡単に把握できないだろうか?」
こうした課題を持つ方は多いのではないでしょうか。QuickBooksのProjects機能を使えば、案件別・顧客別の収支を1画面で確認できるようになります。
この記事では、Projectsの使い方から収入・支出の紐付け、Project Profitabilityレポートの読み方までを順番に解説していきます。
この記事の目次
1. QuickBooksのProjects機能とは
まずProjects機能の位置づけを押さえておくと、後の操作がスムーズになります。ここでは「Projectsとは何か」「旧Sub-customer/Jobとの関係」「どんな業種に向くか」を整理します。
Projectsは「案件ごとの財布」
結論からいえば、Projectsは1つの案件(プロジェクト)に紐づく収入と費用をまとめて管理する機能です。たとえば「A社向けWebサイト制作」という案件があれば、その案件で得た売上と、かかった人件費・外注費・材料費を1つのProjectに集約できます。
これにより、案件ごとに「いくら入ってきて」「いくらかかって」「いくら残ったか」が一目でわかります。会社全体のP&L(損益計算書)だけでは見えない、案件単位の採算が見えるようになるわけです。
旧Sub-customer(サブカスタマー)/Jobとの関係
QuickBooksを長く使っている方は、以前「Sub-customer」や「Job」という機能で案件管理をしていたかもしれません。Projectsは、これらの後継にあたる機能です。
従来のSub-customerでも顧客の下に案件をぶら下げる管理は可能でした。ただ、収支を集計するレポートが弱く、案件別の利益を見るには工夫が必要でした。Projectsでは専用のProfitabilityレポートが用意されており、案件別の収支がはるかに見やすくなっています。
どんな業種・働き方に向いているか
Projectsが特に役立つのは、案件単位で仕事を受ける業種です。具体的には次のような方が向いています。
- Web制作・デザイン・動画制作などの受託業
- コンサルティング・士業など時間で稼ぐ業種
- 建設・リフォーム・内装工事などの請負業
- イベント・撮影など、案件ごとに経費が大きく変わる業種
逆に、毎月同じサービスを定額で提供する業種では案件管理の必要性は下がります。自社のビジネスが「案件単位で動いているか」を判断の目安にすると良いかと思います。
2. Projects機能を使い始める準備
Projectsを使うには、いくつか事前の準備が必要です。プラン要件の確認、機能の有効化、最初のProject作成の順に見ていきます。
対応プランを確認する
Projectsは、QuickBooks Onlineの上位プランで利用できます。具体的にはPlus・Advanced・Solopreneurの一部プランで利用可能です。一番下のSimple Startプランでは使えません。
もし現在Simple StartやEssentialsをお使いの方で、案件別の収支管理をしたい場合にはPlusへのアップグレードを検討すると良いかと思います。料金は時期やキャンペーンで変動するため、契約前に最新の金額をご確認ください。
Projectsを有効にする
Projects機能は、初期状態でオフになっている場合があります。有効化の手順は次のとおりです。
- 画面左メニューから「Projects」を選ぶ
- 表示されない場合は、Settings(歯車アイコン)→「Account and settings」→「Advanced」を開く
- 「Projects」の項目で「Use project financial tracking」をオンにする
有効化すると、左メニューにProjectsが表示されるようになります。
最初のProjectを作成する
準備が整ったら、案件を1つ作ってみましょう。Projects画面で「New project」をクリックし、Project名を入力します。そして必ず「Customer」欄で、その案件の顧客を選択(または新規作成)してください。
Projectは必ず1つの顧客に紐づく仕組みです。同じ顧客から複数の案件を受けている場合は、案件ごとにProjectを分けて作成します。たとえば「B社_ロゴ制作」「B社_サイト制作」のように分けると、顧客別の損益と案件別の収支の両方を追えるようになります。
3. 時間・経費・請求をProjectに紐付ける
Projectsの精度は、取引をどれだけ正確に紐付けられるかで決まります。ここでは作業時間・経費・請求書の3つについて、紐付けのやり方を順に解説します。これを押さえないと正しい収支が出ないため、本章はProjects機能を活用する上での肝とも言えます。
作業時間(Time)を紐付ける
コンサルや受託業では、人件費が最大のコストになります。そこで重要なのが、作業時間をProjectに紐付けることです。
時間の記録は、QuickBooks内の「Time」機能やQuickBooks Timeを使います。時間を入力する際に、次の項目を選ぶことで案件原価として反映されます。
- Project:どの案件の作業かを選ぶ
- Service item:作業内容(コンサル・デザインなど)を選ぶ
- Cost rate(原価レート):その作業の時間単価(人件費)を設定する
- Billable:顧客に請求する時間なら「Billable」にチェック
ここでCost rateを設定しておくと、作業時間が自動でProjectのコストとして計上されます。たとえば時給$50のスタッフが10時間作業すれば、$500がその案件の人件費として記録されるイメージです。
実務では、このCost rateの設定漏れが非常によくある落とし穴です。レートを入れないと「時間は記録されているのに原価がゼロ」という状態になり、利益が実態より大きく見えてしまいます。案件を始める前に、関係するスタッフの原価レートを設定しておくことをおすすめします。
経費(Expense)を紐付ける
外注費・材料費・交通費などの経費も、Projectに紐付けます。建設業であれば資材費、受託業であれば外注デザイナーへの支払いなどが該当します。
経費を入力する画面(Expense・Bill・Checkなど)では、明細行に「Customer/Project」を選ぶ欄があります。ここで該当のProjectを選べば、その経費が案件コストとして集計されます。
もし顧客にそのまま請求する経費(立替経費など)であれば、行の「Billable」にチェックを入れておきます。こうすると後から請求書に取り込めて、請求漏れを防げます。
請求書(Invoice)を紐付ける
発行した請求書もProjectに紐付けることで、はじめて収支が完成します。請求書を作成する際、顧客を選んだうえで「Project」を指定できます。さらに、先ほどBillableにしておいた時間や経費があれば、画面右側に「Add to invoice」として候補が表示されます。これをクリックするだけで、未請求の作業時間・立替経費を請求書に反映することができます。
この流れの良いところは、「かかったコスト」と「請求した売上」が同じProjectに集まり、請求漏れも防げる点です。受託業でありがちな「経費を立て替えたのに請求し忘れた」というミスを仕組みで防止できます。
4. Project Profitabilityレポートで採算を見る
取引を紐付けたら、いよいよ収支を確認します。ここではProject画面での確認方法とレポートの読み方を解説します。数字をどう読み解くかが、この章のポイントです。
Project画面で収支を確認する
各Projectを開くと、画面上部に収支のサマリーが表示されます。主に見るべき数字は次の3つです。
- Income:その案件で計上した売上
- Costs:その案件にかかった経費・人件費の合計
- Profit:IncomeからCostsを引いた利益(粗利)
さらに「Profit margin(利益率)」も表示されるため、案件ごとの儲けの厚みを一目で比べられます。利益率が極端に低い案件があれば、見積もりの精度や作業効率を見直すサインになります。
Project Profitabilityレポートの読み方
複数の案件を横並びで比べたいときは、「Project Profitability」レポートを使います。Reportsメニュー、または各Project画面の「Project reports」から開けます。
このレポートでは、案件ごとに収入・原価・利益が一覧表示されます。次のような視点で見ると、改善につながります。
- 赤字の案件はないか:Profitがマイナスの案件は要注意
- 利益率の差:同じような案件で利益率に差があれば原因を分析する
- 原価の内訳:人件費が膨らんでいないか、外注費が想定を超えていないか
下に、レポートで確認できる代表的な項目を整理しました。
当サイトの見解
Projectsは便利な機能ですが、実務で見てきた経験からいうと「導入したものの、Cost rateを設定しておらず利益が過大に見えている」ケースが少なくありませんです。時間は記録されているのに原価がゼロのままだと、レポート上はどの案件も黒字に見えてしまいます。
一般的にはProfitabilityレポートの数字をそのまま信じがちですが、まず原価レートが全スタッフ・全Projectで正しく入っているかを最初に確認することをおすすめします。ここが整っていないと、レポートが「きれいな嘘」になってしまうためです。
もう1つの落とし穴は、間接費(家賃・管理部門の人件費など)はProjectのCostsに含まれない点です。Projectsで見えるのはあくまで案件に直接ひもづく粗利です。会社全体の利益とは別物だと理解したうえで、「案件単位の粗利管理ツール」として割り切って使うのが、もっとも実務に合った活用法だと考えています。
まとめ
この記事では、QuickBooksのProjects機能を使った案件別・顧客別の収支管理について解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、案件ごとの採算をきちんと把握したいと考えている受託業・コンサル・建設業の方の助けになれば幸いです。