この記事でわかること
「QuickBooksで発注書はどうやって作るのだろう?」
「発注書とBill(請求書)は何が違うのだろう?」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。Purchase Order(発注書)の役割を正しく理解すると、仕入れの流れがすっきり整理できます。というのも、QuickBooksでは発注書・請求書・支払いがそれぞれ別の書類として管理され、在庫や買掛金と自動でつながる仕組みになっているからです。
この記事では、QuickBooksでのPurchase Orderの作成方法から、物販・輸入ビジネスでの実務フローまで解説していきます。読み終えていただければ、仕入れの記録に迷わなくなるかと思います。
この記事の目次
QuickBooksでのPurchase Order(発注書)の作成
まず、Purchase Order(パーチェス・オーダー、発注書)とは何かを整理したいと思います。ここでは発注書の役割とQuickBooksでの具体的な作成手順を解説します。仕入れの第一歩となる書類ですので、最初に押さえておくと良いかと思います。
Purchase Order(発注書)とは何か
Purchase Order(発注書)とは、仕入先(ベンダー)に「これを注文します」と正式に伝えるための書類です。「PO」と略されることも多くあります。
発注書には、注文する商品名・数量・単価・希望納期などを記載します。これは買い手から売り手への「注文の意思表示」にあたります。なぜなら、口頭やメールだけの注文では後から数量や金額の食い違いが起きやすいからです。書面として発注書を残すことで、双方の認識を一致させられます。
QuickBooksでの発注書の作成手順
QuickBooksでの発注書の作成は、大きく3ステップに分かれます。機能の有効化・発注書の入力・発注書の送信の順に進みます。
- QuickBooks上での発注機能の有効化
- 発注書の入力
- 発注書の送信および保存
なお、QuickBooks Onlineでは発注書機能はPlus以上のプランで利用できます。Simple StartやEssentialsプランでは使えない点に注意が必要です。
ステップ1:発注機能を有効にする
まず、歯車マーク(Settings)から「Account and settings」を開きます。次に「Expenses」タブの中にある「Purchase orders」をオンに切り替えます。これで発注書のメニューが使えるようになります。
ステップ2:発注書を入力する
「+ New」ボタンから「Purchase order」を選びます。ここでベンダー(仕入先)を選択し、商品または勘定科目・数量・単価を入力します。具体的には、商品ごとに行を分けて入力していく形です。
ステップ3:発注書を送信・保存する
入力後は「Save and send」でベンダーにメール送信できます。あるいは「Save and close」で保存だけ行い、PDFを出力して別途送ることも可能です。作成した発注書のステータスは「Open(未処理)」として管理されます。
発注書・請求書・支払いの違いを整理する
この章では、混同されやすい3つの書類の違いを整理します。発注書(PO)・請求書(Bill)・支払い(Payment)は、それぞれ発生するタイミングと役割が異なります。ここを押さえないと帳簿が二重計上になりやすいため、必ず確認しておくと良いかと思います。
PO・Bill・Paymentの3つの段階
端的にいえば、仕入れは「注文→請求→支払い」の3段階で進みます。それぞれをQuickBooksでは別の書類として扱います。
- Purchase Order(発注書・PO):注文の段階。この時点では会計上の仕訳は発生しません。
- Bill(請求書・ビル):商品が届き、ベンダーから請求を受けた段階。ここで初めて買掛金(未払い)が計上されます。
- Payment(支払い):実際にお金を支払った段階。買掛金が消し込まれます。
POとBillの違い
POとBillの最大の違いは、会計上の仕訳が発生するかどうかです。発注書(PO)は、あくまで「注文しました」という記録にすぎません。なぜなら、注文した時点ではまだ支払い義務が確定していないからです。一方、Bill(請求書)は「支払う義務が確定した」ことを意味します。したがって、Billを作成した時点で初めて費用または在庫として帳簿に載ります。
実務では、POをそのままBillに変換して使う流れが一般的です。QuickBooksでは、Openステータスの発注書を開き、「Copy to bill」を選ぶと発注内容をそのままBillに転記できます。この機能を使うと入力の手間が減り、金額の食い違いも防げます。
よくある間違い:発注書を費用計上してしまう
ここで実務でよく見る落とし穴を1つお伝えします。それは、発注書を出した時点で費用として処理しようとしてしまうケースです。
会計上、発注しただけでは費用は発生しません。私たちがクライアントの帳簿を確認する際も、POとBillの二重計上が原因で仕入れ金額が実際より膨らんでいる例をしばしば見かけます。POは「予定」、Billは「確定」と覚えておくと混乱を避けられるかと思います。
発注書と在庫・買掛金(Accounts Payable)の関係
この章では、発注書がQuickBooksの在庫管理と買掛管理にどうつながるかを解説します。物販ビジネスでは、この連携を理解しておくと在庫数と支払い状況の両方を正確に把握できます。
在庫(Inventory)とのつながり
結論からいえば、在庫が増えるのはPOの段階ではなく、Bill(またはItem Receipt)を作成した段階です。
QuickBooksで商品を「Inventory item(在庫品目)」として登録しておくと、Billに商品を入力した時点で在庫数量が自動で増えます。たとえば、発注書で100個注文しても、実際に80個しか届かなかった場合はBillで80個と入力します。すると在庫にも80個だけが反映されます。このように、POと実際の入荷数を分けて記録できる点が便利です。
買掛金(Accounts Payable)とのつながり
Bill(請求書)を作成すると、その金額はAccounts Payable(買掛金)という勘定科目に計上されます。買掛金とは、まだ支払っていない仕入れ代金のことです。
その後、実際に支払いを行うと買掛金が減少します。この一連の流れをQuickBooksが自動で処理してくれるため、正確な買掛管理が可能になります。具体的には、「Pay bills」画面を開くと、未払いのBill一覧が表示されます。ここから支払うBillを選ぶだけで、買掛金の消し込みが完了します。
Bill作成時:(借方)在庫または費用 / (貸方)買掛金 Accounts Payable
支払い時:(借方)買掛金 Accounts Payable / (貸方)現金・預金 Cash
物販・輸入ビジネスでの実務フロー
この章では、物販や輸入を行う事業者向けに、発注から支払いまでの実務フローを解説します。実際の流れを一度つかんでおくと、日々の記帳作業に迷わなくなるかと思います。
発注から支払いまでの5ステップ
物販ビジネスでの流れは、次の5つのステップで整理できます。
- ステップ1:発注書(PO)を作成し、ベンダーに送る
- ステップ2:商品が入荷したら、POをBillに変換する(Copy to bill)
- ステップ3:入荷した実数量に合わせてBillを修正する
- ステップ4:在庫数が自動更新されたか確認する
- ステップ5:Pay billsから支払いを記録する
輸入ビジネス特有の注意点
輸入を行う場合は、いくつか追加で気をつける点があります。とくに関税・送料・通関手数料などの付随コストの扱いには注意が必要です。
これらの付随コストは、商品原価に含めるのが原則です。なぜなら、輸入にかかった費用は在庫の取得原価の一部とみなされるからです。QuickBooksではBillに別の行を追加して送料や関税を入力し、商品ごとに配分する方法が使われます。ただし、金額が大きい場合は自動配分機能だけでは正確に処理しきれないこともあります。実務では、会計士と相談しながら配分ルールを決めておくと安心かと思います。
また、輸入取引では為替の問題も出てきます。ドル建て以外で仕入れる場合、支払い時のレートで金額が変動します。QuickBooksのマルチカレンシー機能を使うと、この為替差損益も記録できます。
当サイトの見解
ここでは、会計士としての実務目線での考えをお伝えしたいと思います。一般的には、小規模な物販であれば発注書を必ずしも使う必要はありません。POを飛ばして、いきなりBillを入力しても帳簿は成立します。しかし私たちとしては、仕入れ件数が増えてきた事業者には、発注書の活用をお勧めしています。
なぜなら、発注書があると「注文したのに届いていない商品」や「請求と発注の金額差」を後から追跡しやすくなるからです。実際にクライアントを見てきた経験上、仕入先が複数に増えた段階でPOを使い始めた結果として、在庫と支払いの管理がぐっと楽になった例が少なくありません。
逆に、注意点もあります。POをBillに変換せず、両方を別々に入力してしまうと二重計上が起きます。QuickBooksの「Copy to bill」機能を必ず使うようにすると、このミスを防げるかと思います。
まとめ
この記事では、QuickBooksでのPurchase Order(発注書)の作成方法から、発注書・請求書・支払いの違い、在庫や買掛金との関係までを解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
発注書はあくまで「注文の記録」であり、会計上の仕訳が発生するのはBill(請求書)の段階からです。この違いを押さえておけば、二重計上などのミスを防ぎ、在庫と買掛金を正確に管理できるようになります。
この記事が、アメリカで物販・輸入ビジネスを営む日本人・日系企業の方の助けになれば幸いです。