「アメリカでEINが必要と言われたけど、そもそもEINとは何なのか」
「SSNやITINもよく聞くけど、EINとの違いは何か」
こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。アメリカでのビジネスや法人設立において、EINなどのID番号の取得は切っても切り離せないトピックです。
この記事では、アメリカでのビジネス・法人設立の際に登場する「EIN」について、その他の代表的なID番号(TIN・SSN・ITIN)との違いも整理しつつ、取得要件や具体的な申請方法について分かりやすく解説していきます。
まず全体像をお伝えするために、アメリカでのビジネス・法人設立において度々登場する主なID番号(TIN・EIN・SSN・ITIN)を以下に整理しました。以降のセクションでは、EINを中心に順を追って解説していきます。

これからアメリカでのビジネスや法人設立を検討するにあたり、IDや納税番号の概要を把握するための出発点として、この記事を活用いただければ幸いです。
EINとは?
EINは「Employer Identification Number」の略称で、IRS(日本で言う国税庁にあたるアメリカの税務当局)が発行する「会社のID番号」とご理解いただくと良いかと思います。IRSが発行していることからも分かる通り、EINは主に税務目的で発行されるID番号です。主に法人(C Corporation / S Corporation / LLCなど)に対して発行され、「12 – 3456789」という9桁の番号で表記されます。基本的にIRSはこのEINを使ってアメリカ中の会社を管理しますので、法人として取得が必須となるID番号の一つです。
また、日本でも同様に「法人番号」が国税庁から発行されますが、これは設立後に国税庁が自動的に割り当てを行います。一方で、EINは自分からIRSへ申請しない限り発行されません。日本のように自動で割り当てられることはないため、(法人の州登記後に)こちらから手続きを行う必要がある点に注意が必要です(具体的な申請方法は EINの具体的な取得方法(ステップ別)をご覧ください)。
なお、会社としてEINが必要になる主なシーンは以下の通りです。
- 法人名義での税務申告や納税
- 米国の法人銀行口座の開設
- 米国での従業員雇用・給与支払い(給与税 – Payroll Taxの支払いに必要となります)
- StripeやPayPalなど決済サービスへの法人登録
詳しくは以下の公式サイトに記載がありますので、参考にしていただければと思います。
EINの具体的な取得方法(ステップ別)
方法①:オンライン申請(無料)
IRSの公式サイトから申請できます。申請が完了するとその場でEINが発行される最も手軽な方法です。ただし、申請者(Responsible Party)のSSNまたはITINが必要になるため、どちらも持っていない海外在住者は後述の電話・FAXにて申請する必要があります。
具体的な手順は以下の通りです。
- IRS公式サイト(irs.gov)で「Apply for an Employer Identification Number (EIN) Online」のページにアクセスする(類似の民間サービスが検索広告に多数表示されるので、URLが必ず irs.gov であることを確認してください)。
- 事業体の種類(LLC・Corporation・Sole Proprietor・Partnershipなど)を選択する。
- 申請者(Responsible Party)の情報を入力する。Responsible Partyとは、その事業体のお金・資産・取引を実質的にコントロールする個人のことです。
- 事業の名称・住所・事業開始予定日・主要業種などを入力して送信します。
- 申請が受理されると、その場でEINがオンライン上に表示されます。PDFをダウンロード・印刷して大切に保管してください。後日、確認レター(CP575)が郵送されます。
方法②:電話申請(海外在住者向け・英語対応が必要)
SSN・ITINを持たない海外在住者でも、電話にてEINを申請することができます。英語での会話が必要になりますが、電話口でその場で番号が発行され、後日確認レターが郵送されます。電話で聞かれる内容は基本的な情報のみで、オンラインで申請する際に提出するフォームに記載される情報を準備しておけば問題ありません。なお、申請者(Responsible Party)本人が電話に出る必要があります。
方法③:FAX・郵送申請(海外在住者向け・時間がかかるが確実)
フォーム SS-4(Application for Employer Identification Number)をIRS公式サイトからダウンロードし、記入してFAXまたは郵送します。SSN・ITINがなくても申請可能で、書面での記録を残したい方や電話での英語対応に不安がある方にも向いています。
なお、アメリカ国内からFAX・郵送で申請することも可能です。その場合の宛先はリンク先をご確認ください。
この章をまとめると、以下の通りです。なお、Googleで「EIN application」と検索すると、民間の代行サービスが広告として多数表示されます。EINの申請自体はIRS公式サイトで完全無料です。少しでも費用を抑えたい方は、まず(上記の)自力で申請する方法を試してみても良いかもしれません。

TIN・SSN・ITINとの違いもわかりやすく整理
アメリカの税務・行政手続きでは、EINの他にもいくつかのID番号が登場します。名前が似ていたり、場面によって使い分けが必要だったりと、混乱しやすい部分でもあります。ここでは特によく目にする番号をまとめて解説します。
TINとは?納税者番号の「総称」
TINは「Taxpayer Identification Number(納税者識別番号)」の略で、アメリカで税務申告に使う番号の総称です。なので、EIN・SSN・ITINはすべてTINの一種です。「TINを教えてください」と言われたとき、個人ならSSNまたはITINを、法人ならEINを答えれば問題ありません(TINという新たな番号が別に存在するわけではない点がポイントです)。日本でいえば、「マイナンバーや法人番号をまとめて『税務番号』と呼ぶ」イメージに近いかと思います。
SSNとは?「アメリカで就労できる人のマイナンバー」
SSNは「Social Security Number(社会保障番号)」の略で、米国市民・永住者(グリーンカード保持者)、および就労が許可されたビザ保持者に発行される9桁の番号です(例:123 – 45 – 6789)。社会保障給付、税務申告、雇用手続きなど幅広い場面で使われます。日本でいうとマイナンバーと基礎年金番号を合体させたようなものに近いかと思います。なお、SSNを発行するのはIRSではなく社会保障局(SSA)ですが、税務上はIRSでもTINとして認識されます。
ITINとは?「SSNを持てない外国人のための番号」
ITINは「Individual Taxpayer Identification Number(個人納税者識別番号)」の略で、SSNを取得できない外国人個人がアメリカで税務申告をするために使う番号です。9桁で先頭が必ず「9」という特徴があります(例:9XX-XX-XXXX)。こちらはIRSが発行します。こちらは、例えば日本在住のまま米国の不動産収入がある方や、米国法人の外国人株主として申告義務が生じる方などがITIN取得の対象になり得ます。
以下、それぞれの違いについて整理します。

誰がどの番号を必要とするのか?
日本人がアメリカでのビジネスと関わる場面別に、どの番号が必要になるかを簡単に整理します。
- 米国でLLC・法人を設立した → EINが必要です。法人銀行口座の開設や従業員への給与支払い、税務申告のすべてにEINを使用します。
- 就労ビザ(OPT・H-1Bなど)で米国在住・勤務 → SSNが必要です。就労許可のあるビザ保持者はSSAに申請してSSNを取得できます。雇用主からも取得を求められます。
- 日本在住のまま米国に不動産・投資収入がある → ITINが必要です。SSNを持てない状況で米国での申告義務が生じる個人はITINを申請します。
簡単に要約をまとめると以下の通りです。

EINの取得費用・取得代行サービスの相場
基本的に、EINの取得には申請費用がかかりません。自力で申請する場合、オンライン・電話・FAX・郵送いずれの方法でも、IRSへの申請費用はかからないためです(強いて言えば、郵送費用くらいでしょうか)。時間があり、英語対応が可能であれば、ご自身で申請されるのが最もシンプルで安上がりな方法です。
一方で、会社設立に当たって誤りなく確実にEINを取得されたい方や手続きの時間が取れない方もいらっしゃるかと思います。そのような方向けに、幾つかの選択肢をご紹介いたします。
オンライン代行サービス:0前後
ZenBusinessやLegalZoomなどのSaas系の代行サービスは、SS-4フォームの作成から申請までを代行してくれます。口頭での英語対応なしに申請できる点が利点ですが、申請内容の正確さは自分でも確認が必要です。日本語対応はないサービスがほとんどです。
日本語対応の代行・コンサルサービス:0前後
日米間の税務に特化した日本語対応可能な会計事務所やコンサルティング会社が提供するサービスです。費用は比較的高くなりますが、日本語でのサポートや法人設立・税務申告とのパッケージ対応が含まれる場合はコスパが良い場合もあります。
どのような場合に代行サービスへ依頼するべきか?
アメリカ国内からの申請であれば、基本的にオンライン申請を行うことで費用をかけずにEINを取得することが出来ます。書類に必要事項を記入して申請するだけですので、口頭での英語対応に不安のある方でも問題ないかと思います。
ただし、SSN・ITINを持っていない海外在住者はオンライン申請することは出来ません。その場合は電話・FAX・郵送いずれかでの対応が必要になります。そのため、口頭での英語対応に不安があり、特に急いでEINの取得が必要な場合には、代行サービスを検討されると良いかと思います。「特に急いでいない、でも電話での申請は不安」という方は、郵送・FAXで申請すると良いかと思います。
また、外国人のみで構成されるLLCや複雑な株主構成がある場合は、EINだけでなく全体の税務設計を含めて会計士等へ相談されることをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
EINはSSNやITINがなくても取得できますか?
はい、取得できます。海外在住の外国人がEINを申請する場合は、電話またはSS-4フォームによるFAX・郵送申請を使います。オンライン申請ではSSN・ITINが必要ですが、電話・FAX・郵送ではSSN・ITINがなくても申請が可能です。
EINの取得に期限はありますか?法人設立後すぐに必要ですか?
厳密な取得期限はありませんが、銀行口座の開設・従業員の雇用・確定申告などEINが必要な手続きが発生した時点で必要になります。法人設立後はできるだけ早めに取得しておくことをおすすめします。
1人で構成されるLLC(シングルメンバーLLC)でもEINは必要ですか?
必須ではないケースもありますが、実務上ほぼ必要になります。銀行口座の開設・StripeやPayPalの法人登録・将来的なメンバーの追加などを考えると、早めに取得しておいた方が良いかと思います。また税務申告や取引先への会社情報通知において(SSNの代わりとして)EINを使用できるというプライバシー保護の観点からも、シングルメンバーLLCでもEINを取得しておくのが賢明です。
EINを複数取得することはできますか?
原則として法人・事業体1つにつきEINは1つです。同じ事業体で複数取得することはできません。新しい法人を別途設立した場合は、その法人ごとに新しいEINが必要です。なお、事業体の所有権や組織構造を変更する際(e.g., LLC から C Corporationへの変更)には新しいEINの取得が必要になります。
EINを間違えて申請してしまった場合はどうすればいいですか?
一度発行されたEINはキャンセル・変更ができません。EINを閉鎖(Close)することは書面でIRSに依頼できますが、誤った情報で申請してしまった場合はIRSに直接電話するか、もしくは専門家(会計士など)に相談することをお勧めします。
日本の会社が米国でEINを取得するケースはありますか?
あります。日本の法人が米国に支店(Branch)を設けたり、米国法人の株主として源泉徴収申告の義務が生じる場合にEINが必要になります。
EINに有効期限はありますか?更新は必要ですか?
EINには有効期限がなく、更新も不要です。一度取得したEINは、その事業体が存続する限り永続的に有効です。事業を廃止・解散した場合はIRSへの書面通知によってEINを無効にしてもらいます。なお、ITINは一定期間使わないと失効してしまいますが、EINにはそのような失効ルールはありません。
EIN取得後、IRSへの届出や申告義務は何かありますか?
EIN取得自体は申請で完結しますが、法人形態によって毎年の税務申告義務が発生します。基本的にC-CorpはForm 1120、S-CorpはForm 1120-S、LLCはメンバー数や選択によりForm 1065など、多岐に渡ります。EIN取得後の申告義務については、会計士などに確認しておくと安心かと思います。
まとめ
この記事では、アメリカでのビジネス・法人設立の際に登場する「EIN」について、その取得要件や具体的な申請方法について解説しました。
最後に、この記事のポイントを簡単に振り返ります。
- EINはIRSが発行する「会社のID番号」 で、法人の税務申告・銀行口座開設・従業員雇用など、ビジネスのあらゆる場面で必要になります。
- TIN・SSN・ITINとは役割が異なり、EINは法人向け、SSNは就労可能な個人向け、ITINはSSNを持てない外国人向けの番号です。
- 申請費用は無料で、オンライン・電話・FAX郵送の3つの方法があります。SSN・ITINを持たない海外在住者は電話またはFAX・郵送での申請が必要です。
- 個人事業主でもEINの取得がおすすめです。 SSNを公開せずに済むため、個人情報の漏洩リスクを下げることが出来ます。
この記事が、アメリカでのビジネスや法人設立・投資を検討されている方の助けになれば幸いです。