アメリカでの会計・経理の基礎知識を米国公認会計士が解説

2026.04.11
経理・記帳

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「アメリカに進出したいが、現地での会計・経理はどう対応すれば良いか?」
「会計基準や税制が日本と異なると聞いたが、自社にどう関係するのかがわからない。」

こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。アメリカでの経理・会計処理は日本とは異なる会計基準や税法への理解が必要になりますので、ビジネスの立ち上げ期に全体像だけでも把握しておくと安心です。

この記事では、アメリカでビジネスを行う上で知っておきたい会計・経理の基礎を、会計年度(決算月)・会計基準・税務申告・会計監査の4つの観点で整理していきたいと思います。

1. アメリカ現地法人の会計年度(決算月)

米国現地法人の会計年度は、原則として会社が自由に設定することができます。ただし、日系企業の場合は日本の親会社の決算月(多くの場合では3月決算)に合わせるケースが一般的です。これは親会社が連結財務諸表を作成するうえで、子会社の決算期を統一しておいた方が決算手続き上も簡潔であるためです。

また、米国法人の税務申告(法人所得税の申告)の期限は米国法人の決算月によって決まってきます。最初に設定した税務上の会計年度を変更する場合にはIRS(アメリカの税務当局:日本でいう国税庁)への届出が必要となるケースもあるため、米国法人の設立時に日本の親会社の担当者と十分に調整したうえで会計年度を決定されることをおすすめします。

2. アメリカで事業を行う企業に適用される会計基準

アメリカでの会計処理を理解するうえでは「自社がどの会計基準に従う必要があるか」をまず把握することが重要です。このセクションでは「会計基準」の全体像を整理した上で、実務上よく問題になる「発生主義と現金主義の選択」についても解説していきます。

そもそも会計基準とは何か

会計基準とは、財務諸表をどのように作成・開示するかを定めたルールの体系です。全く同じ取引でも、どの会計基準に基づくかによって数字の見え方が変わることがあるため、「どのルールに従って会計処理を行っているか」を関係者間で共有することが会計基準の主な目的になります。

アメリカのビジネス現場では、主に以下の3つの会計基準が登場します。

  • US GAAP(Generally Accepted Accounting Principles (United States)):アメリカの国内企業が適用対象(上場企業の場合は適用義務あり)
  • IFRS(International Financial Reporting Standards:国際会計基準):90以上の国・地域で採用される世界共通の会計基準
  • J GAAP(日本基準):日本の上場企業等が適用対象。

グローバルに展開する日系企業では「日本本社はJ GAAPまたはIFRS、アメリカ子会社はUS GAAP」というように、グループ内で複数の基準が並存するケースも珍しくありません。日本の経理担当者がアメリカ子会社の財務諸表を見て「数字の意味が違う」と戸惑うのは、こうした会計基準の違いに起因することが多いです。

アメリカではUS GAAPに準拠した会計処理が原則

アメリカでビジネスを行う企業の会計処理は、原則としてUS GAAPに基づいて行います

US GAAPは、米国財務会計基準審議会(FASB)が設定する会計原則の集合体です。SECに登録している上場企業や一部の規制対象企業には、US GAAPへの準拠が法的に義務付けられています。

また、非上場の日系企業であっても、銀行からの融資や外部監査、日本の親会社への報告といった実務上の要請から、US GAAPに準じた会計処理を求められる場面は多くあります。

そのため、アメリカでビジネスを行う際には一般に「US GAAPに従って会計・経理処理を行う」と理解いただければと思います。

現金主義(Cash Basis)で処理する場合は税務申告に要注意

会計基準が「どのルールに従って会計処理をするのか」という基準の選択であるのに対し、「収益(売上)・費用をどのタイミングで認識するか」という認識タイミングにも会計処理上の基準が設けられています。具体的には、以下の2つの基準が存在します。

  • 発生主義(Accrual Basis):現金の入出金タイミングに関わらず、取引が発生した時点で収益・費用を認識する方法です。US GAAPはこの発生主義を前提としており、貸借対照表や損益計算書がより実態を反映した形で作成されることになります。
  • 現金主義(Cash Basis)実際に現金が入出金されたタイミングで収益・費用を認識する方法です。処理がシンプルで理解しやすいため、現金商売の事業形態や小規模なビジネスで採用されることがあります。

ここで発生主義・現金主義の話を持ち出したのには理由があります。どちらのルールを採用するかが税務申告に直接影響するためです。

まず、US GAAPに従って会計処理をされる場合には、US GAAPそのものが発生主義を前提としているため、自動的に発生主義で会計処理を行っていることになります。税務申告においても発生主義に基づく会計データを用いることが原則であるため、この場合は会計と税務の整合性という観点では問題が生じません。この場合、US GAAPで処理された会計帳簿をベースに税務申告を行えば良いということになります。

一方、US GAAPへの準拠が義務付けられていない中小企業や個人事業主が「現金主義」を採用している場合には、税務申告時の取り扱いに注意が必要です。なぜならIRSの規定上、税務申告における現金主義の使用は以下の要件を満たす事業者にしか認められていないためです。なお以下の基準以外にもいくつか要件はありますが、ここでは一般的に該当しやすい要件のみを記載しています。

  • 直近3年の平均年間総収入(Average Annual Gross Receipts)が$25,000,000以下であること(年によってインフレ調整あり)
  • 医療、法律、エンジニアリング、建築、会計、アクチュアリー、舞台芸術、またはコンサルティングの分野でサービスを提供する適格法人

これらの要件を満たす場合には、日々の会計処理も税務申告も現金主義で統一することができ、実務上の負担が大幅に軽減されます。

問題が生じるのは、この要件を満たさない場合です。この場合は、日々の帳簿を現金主義でつけていたにもかかわらず、申告時に発生主義へ全データを組み替える必要が出てきます。これには膨大な手間と時間がかかりますので、基本的には税務申告時に求められる発生主義ベースで日々の会計処理を行う(会計上も発生主義ベースに揃える)ことをおすすめします。

自社はどの会計処理方法を選ぶべきか?

会計基準の選択(US GAAPに準拠するか / しないか)や収益・費用の認識タイミングの選択(発生主義 / 現金主義)も、以下の要素によって最適解が変わってきます。

  • 事業形態・ビジネスの規模
  • 銀行からの融資や外部監査の有無
  • 日本の親会社への報告要件
  • 現金主義の適用について、税務上の要件を満たすかどうか

「とりあえず現金主義(キャッシュベース)でシンプルに」と始めてしまうと、後からUS GAAPへの移行や税務申告時の会計データの組み替えが必要になるケースがあります。事業の立ち上げ段階から、会計・税務の両面を踏まえた適切な会計処理を選択することをお勧めします。

3. アメリカでの税務申告

このセクションでは、1年の経理サイクルの一つである税務申告(タックスリターンの提出・納税)について、「いつまでに」「何を」実施する必要があるのかという観点でご紹介します。

アメリカの法人税(法人所得税)概要

アメリカの税制は、連邦(Federal)・州(State)・地方(County / City)という3層構造になっています。それぞれが独自のルールと税率を持ち、場合によっては同じ取引に対して複数の課税が重なることもあります。

例えばカリフォルニア州に設立された法人の場合、連邦法人税(最高税率21%)に加え、州法人税(8.84%)もしくは最低税額(ミニマム・タックス)として年間$800のフランチャイズ・タックス(Franchise Tax)が州税として課されます。

年単位でIRS(内国歳入庁)や各州からのガイドラインが更新されることも多く、最新の税制を継続的に把握しておく必要があります。

事業形態と税務申告の種類

アメリカで法人を設立する際、選択した事業形態によって適用される税務申告の種類が異なります。

  • C Corporation:Form 1120で法人として申告。二重課税(法人税+配当金への株主単位での課税)が生じる点に注意。
  • S Corporation:Form 1120-Sで法人として申告。利益・損失が株主個人に「パススルー」されるため、法人レベルでは原則として連邦税の課税なし(州税は課されることがある)。
  • LLC(Limited Liability Company):原則としてパススルー課税が適用され、法人レベルでは原則として連邦税の課税なし(州税は課されることがある)。

申告期限と延長制度

事業形態によって申告に使用するフォームと期限が異なります。まず、以下は連邦税についてです。

  • C Corporation(Form 1120):課税年度終了後4か月以内が期限です(暦年法人の場合は翌年4月15日)。Form 7004の提出により6か月の申告期限の延長が可能ですが、納税の期限は延長することができず、本来の期限(暦年法人の場合は翌年4月15日)までに納付を行う必要があります。
  • S Corporation(Form 1120-S):課税年度終了後3か月以内が期限です(暦年法人の場合は翌年3月15日)。同じくForm 7004で6か月の延長が可能です。パススルー課税に伴う株主へのSchedule K-1の交付も同期限が目安となります。
  • LLC(パートナーシップ課税 / Form 1065):S Corporationと同様、課税年度終了後3か月以内(暦年の場合は翌年3月15日)が期限です。同じくForm 7004で6か月の延長が可能です。Single-member LLCでDisregarded Entityの場合にはオーナー個人の税務申告に統合され、翌年4月15日が期限となります。

なお、各州の申告期限は連邦と異なる場合があります。詳細はここでは割愛しますが、自社で申告義務のある州の申告(納税)期限については、事前に会計士へ確認しておくことをおすすめします。

4. アメリカでの会計監査

アメリカ進出を検討している日系企業が気になる点の一つに、「アメリカでは会計監査の義務があるのか」という点があるかと思います。このセクションでは、監査義務の有無やレビュー(Review)・コンピレーション(Compilation)との違い、監査に向けて注意すべきポイントを整理しておきたいと思います。

アメリカでの会計監査義務について

日本では上場・非上場を問わず一定規模以上の株式会社に会計監査が義務付けられています。一方では、アメリカでは会計監査が義務付けられているのは基本的に上場企業のみで、非上場の法人(非公開企業)については会計監査が義務付けられていません。そのため、原則として「会計監査を受ける必要はない」と理解いただければ問題ありません。

ただし、アメリカで事業を行う日系企業の中には、日本の親会社からの要請や借入を行っている金融機関への提出を目的として、非公開企業であっても任意という形で会計監査を受けているケースは多々あります。例えば、日本の親会社の監査を担当する会計事務所は、各海外子会社の重要性を評価・分析したうえでグループ全体の監査インストラクションを作成します。その後、アメリカ現地の子会社の監査人は、このインストラクションに基づいて現地の監査手続きを実施することになります。

従って、原則としては(米国で上場をしていない限り)会計監査を受ける必要はないが、必要に応じて任意で会計監査を受けることは可能という整理をしていただければ良いかと思います。

監査・レビュー(Review)・コンピレーション(Compilation)の違い

会計監査に類似する概念として「レビュー(Review)」と「コンピレーション(Compilation)」があります。これらは会計監査とは全く別の手続きですが、実務上は混同されやすいため、このセクションで補足しておきたいと思います。

まず初めに、会計監査に関連して公認会計士が実施する手続きは大きく以下の3つに分類されます。

  • 会計監査(Audit)
  • レビュー(Review)
  • コンピレーション(Compilation)

以下、それぞれについて会計監査の違いを踏まえてそれぞれご説明します。

  • 会計監査(Audit):実査・立会・確認といった監査手続きを通じて、財務諸表の適正性について客観的な意見を表明します。アメリカにおける監査には法定監査と任意監査があり、法定監査は主にアメリカの上場企業に義務付けられています。任意監査は会社の判断で実施するもので、例えば日本の上場企業のアメリカ子会社がグループ監査の一環として監査を受けるケースや、金融機関・取引先からの要求に応じて行われるケースが該当します。
  • レビュー(Review):財務数値の比較分析と経理担当者などへの質問を中心とした手続きです。監査とは異なり、網羅的な証拠収集などは行わず、「財務諸表に重大な修正を要する事項が認められなかった」という消極的な結論を報告するにとどまります。そのため、監査と比べ、公認会計士によって提供される財務諸表の保証レベルは限定的となります。
  • コンピレーション(Compilation):会社から提出された会計データをもとに、公認会計士が財務諸表の作成を補佐し、コンピレーション報告書を発行します。監査やレビューとは異なり、提出された数値の検証は一切行いません。そのため、財務諸表の正確性や適正性について、公認会計士による保証は一切提供されないことになります

これら3つの手続きは、アメリカ現地の日系企業から業務依頼をいただくことの多い手続きです。どの手続きが自社に適しているのか / 必要になるのかについては、会社の規模や状況によって異なってきますので、会計士に相談されることをおすすめします。

日系企業の経理担当者が監査に向けて注意すべきポイント

米国現地法人として事業を行う日系企業は、日本の親会社との取引が多岐にわたるケースがほとんどです。日本からの在庫の仕入れや従業員の短期出張を介した役務提供、運転資金の貸借など、親子間の取引は複雑になりやすく、監査においても特に注意が必要な領域です。

以下に、実務上の課題として挙がりやすいポイントを3つご紹介します。

  • 関連当事者取引(Related Party Transactions)の開示:日本の親会社との取引はすべて関連当事者取引に該当し、US GAAPの開示要件に従って財務諸表に適切に記載する必要があります。取引の性質・金額・条件などの開示が不十分な場合、監査意見に影響を及ぼす可能性があります。また、移転価格の観点からも親子間取引の価格設定の合理性を説明できる根拠を整えておくことが重要です。
  • カットオフ(期末日における取引の帰属)の管理:親会社からの在庫仕入れは日本や製造国からの輸送を伴うことが多く、商流やモノの流れが複雑になりがちです。期末日時点での在庫の所在・所有権の帰属を正確に把握し、売上・仕入・在庫の計上時期(カットオフ)を適切に管理することが求められます。船積みのタイミングや取引条件なども踏まえて確認しておく必要があります。
  • 親子間契約書の整備:特に、資本関係にある親子間の取引においては契約書が整備されていないケースも少なくありません。業務委託契約、ライセンス契約、ローン契約など、親子間で締結しているすべての契約の契約書類を監査前に確認・整理しておくことをおすすめします。契約書の不備は監査手続きの遅延につながるだけでなく、取引の適正性そのものが問われる可能性もあります。

まとめ

この記事では、アメリカの会計・経理に関する基礎知識として、会計年度(決算月)・会計基準・税務申告・会計監査の4つのテーマを解説してきました。

アメリカでの会計・経理において経理担当者が押さえるべき4つのポイント

ポイント
01
会計年度(決算月)
• 米国現地法人の会計年度は原則として自由に設定可能
• 日系企業の場合、日本の親会社の決算月(多くの場合は3月決算)に合わせるケースが一般的
• 税務申告(法人所得税)の期限は決算月によって決まるが、一度設定した税務上の会計年度を変更する場合、IRS(米国の税務当局)への届出が必要となるケースあり
→ 必要に応じて日本の親会社担当者と十分に調整したうえで会計年度を決定する

ポイント
02
会計基準
• アメリカ国内の法人は原則 US GAAP(米国会計基準)に基づく会計処理が必要
• J GAAP・IFRS とは収益認識・リース会計などで考え方が異なる
→ 自社に適用される基準が不明であれば会計士へ確認することも検討

ポイント
03
税務申告
• 連邦税+州税+地方税の3層にわたる課税あり
• 事業形態(C Corp / S Corp / LLC)ごとに申告書の種類・課税方式が異なる
• 連邦法人税の申告期限は原則 課税年度終了後4か月以内(延長申請で+6か月、ただし納税はオリジナルの期限内)
→ 設立形態・進出州ごとの税負担を事前にシミュレーションすることも検討

ポイント
04
会計監査
• 非上場の法人には会計監査を受ける義務はない
• ただし、銀行融資や投資家との契約で会計監査や会計士のレビューが条件になるケースもある
→ 自社の状況に照らして監査手続きの要否を確認する

この記事が、アメリカ進出やアメリカでのビジネスを検討されている方の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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