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アメリカでの会社(法人)設立州の選び方を米国公認会計士が解説

2026.02.15
2. 米国ビジネスの基礎知識
監修者

ワシントン州の米国公認会計士です。アメリカの日系会計事務所にて、個人事業主から上場企業までアメリカ進出企業のバックオフィス業務を幅広くご支援しています。会計・税務を軸に、アメリカ進出や会社設立のサポート、給与計算などの人事関連業務もカバーしています。

「アメリカで会社を設立するなら、どの州を選ぶべきなのか」
「デラウェア州で設立した方が有利だと聞くが、本当にそうなのか」

こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。日本の会社法は全国共通であるため、「どの都道府県で設立するか」という点を深く検討する機会は殆どないはずです。一方、アメリカでは会社法が州ごとに定められており、「どの州で法人を設立するか」によって、法制度や税務上の取り扱いが大きく変わってきます。

この記事では、こうした会社法における日本とアメリカの違いを踏まえながら、「会社(法人)設立州の選び方」と「デラウェア州での設立が選ばれる理由」についてわかりやすく解説していきます。

これからアメリカでの会社設立を検討するにあたり、まずは制度の全体像と設立州えらびの考え方を整理するための出発点として、この記事を活用いただければ幸いです。

前提知識:「会社法」における日本とアメリカの違い

まずはじめに、日本とアメリカでは会社設立の根拠となる「会社法」に違いがあります。日本においては「会社法」は全国共通であり、東京で設立しても大阪で設立しても基本的な制度は変わりません。一方、アメリカにおいては国全体で共通する会社法は存在しません。代わりに、州ごとの会社法が定められており、「どの州で法人を設立するか」によってその取り扱いが大きく異なってきます。州によって企業の税負担にも差が出てくるため、税金の観点においても「どの州を選ぶか」という点が重要になってくるのです。

アメリカでの会社(法人)設立州の選び方

「会社は州の法律に従って設立する」というポイントを踏まえた上で、次は具体的な設立州の選び方についてご説明します。

本題に入る前に知っておいていただきたいのは、「法人の設立州」と「法人が実際にビジネスを行う州」を必ずしも一致させる必要はないという点です。たとえば、デラウェア州で会社を設立し、実際のビジネスはカリフォルニア州のみで行うということも可能です。ただしこの場合、カリフォルニア州で事業を行うためには「州外法人(Foreign Corporation)」として登録を行い、デラウェア州と同様にカリフォルニア州税の申告や年次報告(Annual Registration)などの義務を負うことになります。つまり、会社の設立州とは別に「実際にビジネスを行う州」での法人登録(登記ではない点に注意)や税務対応が必要になる場合が多く、(単純に考えると)2倍の手間とコストがかかることになります。そのため、単純に「”タックスヘイブン”として有名なデラウェア州で設立する(実際はタックスヘイブンではない)」といった判断は適切でないケースも多いです。

それでは、具体的な設立州の選び方について解説していきます。

まず、もっともシンプルで一般的であるのは、実際にビジネスを行う州でそのまま会社を設立する方法です。オフィスを構え、従業員を雇用し、店舗や倉庫を持つような場合には、その州で会社を設立する方が合理的です。この場合、年次報告にかかる費用や税務対応などの維持・管理コストは設立州のみで発生することになるため、費用面でも非常にシンプルになります。なお、ビジネスを行う州が決まっていない段階で「とりあえず会社を設立する」というのは、(何か差し迫った事情がない限り)基本的におすすめしません。理由は前述のとおり、「設立州」と「実際にビジネスを行う州」の両方で維持・管理コスト(年次更新費用や税務申告の対応等)が発生してしまうためです。

また、複数の州にまたがってビジネスを行う場合、もしくは全米での事業展開を一気におこなう場合には、実質的にどの州で会社(法人)設立をしても大きな差は生まれないと考えて大丈夫です(前述のとおり、州によって若干の維持・管理コストの差はありますが、このような大規模なビジネスを展開する企業にとっては実質的に無視できるレベルの金額であるためです)。このようなケースではデラウェア州に持株会社(ホールディング・カンパニー)を設立するケースも多くなっています(この理由は次章でご説明します)。

アメリカでの会社(法人)設立州の選び方のまとめ図解

なお例外的に、「デラウェア州」などの特定の州を選択する方が有利なケースも存在します。具体的には、スタートアップなど将来的にベンチャーキャピタルからの出資を受けることを予定しているケースや、株式市場への上場を視野に入れている場合です。これらのケースでは最初からデラウェア州で設立することが多いです。これには複数の理由がありますが、主には、デラウェア州の会社法が現地のVC・投資家にとって馴染み深く、資金調達がスムーズに進みやすいためです。なお、前述のとおり、デラウェア州に設立をしつつカリフォルニア州で実際のビジネスを展開する場合、両州において維持・管理コストが発生する点には注意が必要です。州によりますが、基本的に両州において税務申告(ミニマムタックスの支払い)が必要になるケースが多く、この点を誤解されている方は意外と多いため、重ねて強調しておきたいと思います。

「デラウェア州」での法人設立について

アメリカで会社設立を検討する際、必ずと言ってよいほど名前が挙がるのが「デラウェア州」です。スタートアップや大企業の本社所在地として知られ、多くの企業がこの州で法人を設立しています。そのため、読者の方々の中にも「アメリカで会社を作るならデラウェア州」といったイメージを持っている方は少なくないと思います。

しかし、すべての企業にとってデラウェア州が最適とは限りません。前述のとおり、たとえばデラウェア州で会社を設立し、実際の事業はニューヨーク州で行う場合には、ニューヨーク州で「州外法人(Foreign Corporation)」の登録を行う必要があり、この場合、州税の税務申告や年次報告などの義務を二重に(デラウェア州とニューヨーク州において)負うことになってしまいます

それでもなおデラウェア州が選ばれる最大の理由は、デラウェア州の会社法が全米でもっとも企業に配慮した制度として知られている点にあります。株式設計の自由度が高く、取締役や株主の構成にも柔軟性があるなど、企業活動を円滑に進めるための制度が整備されています。また、デラウェア州には企業法務を専門に扱う裁判所があり、会社法に関する判例が長年にわたり蓄積されています。紛争が生じた場合の判断基準が比較的明確であり、企業にとって法的なリスクの予見可能性が高いという点も、企業や投資家に支持される理由の一つであるようです。さらに、アメリカのベンチャーキャピタル(VC)の多くは、投資先がデラウェア州法人であること、そしてC Corporation形態であることを好む傾向にあります。そのため、資金調達を予定しているスタートアップにおいてはデラウェア州で設立することが実務上の標準となっていると言えます。

ここまで、「デラウェア州」での設立について詳細をご説明しましたが、実務上は自社のビジネスモデルや将来計画をベースに設立州を決めるのが合理的です

将来的にベンチャーキャピタルからの出資を受ける予定があるスタートアップや上場を視野に入れている企業、複数の州にまたがるグループ企業の持株会社などは、デラウェア州での会社(法人)設立が適しています。一方で、特定の州でのみ事業を行う企業や小規模な販売拠点、当面は資金調達を予定していない企業であれば、「実際にビジネスを行う州でそのまま会社を設立する方法」が低コストかつ管理もしやすいため、おすすめです。

まとめ

この記事では、「アメリカでの会社(法人)設立州の選び方」と「デラウェア州での設立が選ばれる理由」について整理し、それぞれの考え方や実務上のポイントを解説してきました。

アメリカでは州ごとに法制度が異なるため、すべての企業に共通する唯一の正解があるわけではないです。実際にビジネスを行う州や将来の資金調達の有無、ビジネスの規模や展開するエリアなどによって最適な設立州は変わってきます。自社のビジネスモデルや将来の展開計画を踏まえつつ、設立後の維持・管理コストや実務負担も含めて総合的に検討し、最適な設立州を選択することをおすすめします。

この記事が、アメリカでの会社設立を検討される経営者や起業家の方の助けになれば幸いです。

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ワシントン州 米国公認会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 私は、皆様にとって身近に相談できる会計士でありたいと願い、日々業務を行っております。アメリカでの起業やビジネスの運営には、日本では聞き慣れない専門用語も多く、特に会計士や税理士の行う業務は皆様にとってブラックボックスになりやすい分野かと思います。 ご相談をお受けする際には、できるだけ難解な専門用語を使わず、全体像をイメージしながら次のアクションが明確になるような説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制整備に少しでも貢献できればと思います。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方には、まずはこのサイトをご覧いただき、私共や会計・税務を少しでも身近に感じていただければ嬉しく思います。

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