会計士による在米日系企業のバックオフィス支援 | お役立ち情報誌 >>

お問い合わせ

ご相談の流れ

ご相談事例

アメリカのビジネス・ライセンスとは?種類と取得の流れを米国公認会計士が解説

2. 米国ビジネスの基礎知識
監修者

ワシントン州の米国公認会計士です。アメリカの日系会計事務所にて、個人事業主から上場企業までアメリカ進出企業のバックオフィス業務を幅広くご支援しています。会計・税務を軸に、アメリカ進出や会社設立のサポート、給与計算などの人事関連業務もカバーしています。

「アメリカで会社を登記したら、すぐに営業を始められるのか?」
「ビジネスライセンスが必要だと聞いたが、どこに何を申請する必要があるのか?」

こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。会社の登記とビジネスライセンスの取得は、全く別の手続きです。登記だけ済ませて営業を開始してしまうと、罰金や業務停止などのペナルティを受けるリスクがあります。

なぜなら、アメリカでは連邦・州・市(郡)という複数の政府レベルそれぞれが、独自のライセンス体系を持っているからです。どのレベルで何が必要かは、業種と営業場所によって変わります。

この記事では、アメリカでビジネスを始めるために必要なライセンスの種類と取得の流れを整理してご説明します。読み終えていただければ、自社に必要なライセンスの全体像を把握し、次のアクションを取るための準備が整うかと思います。

1. ビジネスライセンスとは何か

ビジネスライセンスは日本でいう「営業許可証」に近い概念ですが、アメリカでは名称も種類も多岐にわたりますので、注意が必要です。

1.1. ビジネスライセンスの定義

ビジネスライセンスとは、地方自治体・州政府・連邦政府のいずれかが発行する、特定の地域でビジネスを行うための正式な許可証のことです。

そのため、ビジネスライセンスという言葉自体はさまざまな許可証の総称であり、1種類の「ビジネス・ライセンス」だけを取得すれば良いというものでもありません。

ライセンスの呼称は許可証によって様々ですが、どれも本質的には「この場所でこのビジネスを行ってよい」という公的な許可を意味しますので、自社の業種・業態を踏まえ、自分たちにはどの「ビジネスライセンス」が必要になるかを把握することが重要です。

1.2. ライセンスなしで営業するとどうなるか

必要なライセンスを取得せずに営業した場合、罰金や業務停止命令などのペナルティが科される可能性があります。この辺りは「知らなかった」では済まないことが多いため、自社にとって必要なライセンスの種類を事前確認することをおすすめします。

一般によくあるケースとして、会社設立(法人登記)を完了した後、ビジネスライセンスの取得をしないまま営業を始めてしまうというパターンがあります。法人の登記と営業許可の取得は別物だという認識を、最初の段階でしっかり持っておくことが大切になります。

2. ビジネスライセンスにおける3つの体系

アメリカのビジネスライセンスは、申請する政府のレベルによって「連邦レベル(Federal)」「州レベル(State)」「ローカル(郡・市)レベル(Local)」の3層構造になっています。それぞれのレベルで必要なものが異なり、場合によっては3つすべてで手続きが必要になります。

2.1. 連邦レベルのライセンス

連邦レベルで最初に必要になるのが、EIN(Employer Identification Number:雇用主識別番号)の取得です。内国歳入庁(IRS)が発行するこの番号は、アメリカ国内のすべての法人を識別するための番号で、税務申告・社会保険手続き・銀行口座開設など、あらゆる場面で使います。いわば「法人版のソーシャルセキュリティナンバー(SSN)」です。

なお、EINは正確には「ライセンス」というよりも「会社のID番号」としての性格が強いですが、原則としてすべての法人がビジネス開始前に自ら申請して取得する必要があるという意味で、ビジネスライセンスの一つとしてご紹介しておきます。

EINに加えて、以下のような業種では連邦レベルの特殊なライセンスが別途必要になります。特にアルコールを提供する飲食店は多いと思いますので、注意が必要です。

  • アルコール・タバコ・銃器・爆発物:ATF(アルコール・タバコ・銃器爆発物局)によるライセンス
  • 放送業(ラジオ・テレビ):FCC(連邦通信委員会)によるライセンス
  • 動物の輸入・輸送などの農業活動:農務省(USDA)による許可

2.2. 州レベルのライセンス

州に法人登記を行った後は、その州でのビジネスライセンスを取得する手続きが必要です。多くの州では、州の税務当局に対して事業開始の届出を行い、州の納税者番号を取得することになります。

ただし、デラウェア州のように、州内で実際に事業を行わない場合はライセンスの取得が不要とされている州もあります。デラウェア州は設立コストの低さから多くの法人が登記に使いますが、実際の事業は別の州で行うケースが多いため、営業する場所の州でのライセンスが別途必要になります。

なお、州レベルで上記以外の特殊なビジネスライセンスが必要になる主な業種は以下のとおりです。

  • 医療・歯科・看護などの医療系職種
  • 弁護士・会計士・不動産業者などの専門職
  • 飲食店・食品販売店
  • 美容院・理髪店・エステティックサロン
  • 旅行代理店・保育(チャイルドケア)・輸送業
  • 酒類の販売・製造

また、商品やサービスを販売する事業者は、セールス・タックス(売上税)の徴収・納付のための「Sales Tax Permit」が必要です。州によって呼び方が異なり、例えばカリフォルニア州では「Seller’s Permit」と呼ばれています。これを取得せずにセールスタックスの課税対象商品を販売すると、未申告のセールスタックスについてペナルティが発生する可能性があります。

なお、州・郡・業種ごとのビジネスライセンスの情報は以下のサイトから探すことができます。参考になれば幸いです。

2.3. ローカル(郡・市)レベルのライセンス

州レベルとは別に、実際に事業を行う市や郡でもライセンスが必要になることがほとんどです。これが「一般営業免許証(General Business License)」と呼ばれるもので、特定の市や郡で合法的に営業するための基本的な許可証です。

実店舗を持つ場合は、さらに以下のような特殊な許可証が必要になることがあります。

  • ゾーニング許可(Zoning Permit):土地の利用や建築を行う前に、管轄の自治体から「Zoning Permit」を取得する必要がある(用途制限がかけられている土地があるため)
  • 建築許可(Building Permit):店舗の改装・建設を行う場合に必要
  • 保健衛生許可(Health Permit):飲食店・食品を扱う事業で必須
  • 看板設置許可(Sign Permit):看板のサイズ・種類・場所を規制する許可

ローカルレベルのライセンスは市・郡ごとに手続きが異なりますので、自社で必要になる許可証については管轄の自治体に問い合わせて確認しておくと安心です。

3. ビジネスライセンス取得の流れ

このセクションでは、会社設立からライセンス取得までの流れをステップごとにご紹介します。詳細な手続きは省略していますが、おおまかな全体像を掴んでいただければと思います。

Step 1:事業内容と営業場所を確定する

どの州・市で、どのような業種の事業を行うかを明確にします。これによって必要なライセンスの種類が決まります。「事業内容が変わればライセンスも変わる」ため、将来の事業拡張も念頭に置いて確認しておくと良いかと思います。

Step 2:法人を登記する

LLC・C Corporation・S Corporationなど、事業に適した形態を選んで州に法人登記を行います。

Step 3:EINを取得する

IRSに申請してEIN(連邦会社納税者番号)を取得します。基本的にはオンラインで申請することが可能で、通常はすぐに発行されます。銀行口座の開設・給与計算・税務申告などすべての場面で必要になるため、法人登記後できるだけ早く取得することをおすすめします。

Step 4:州レベルのライセンスを取得する

州の税務当局に事業開始を届け出て、州の納税者番号を取得します。商品・サービスを販売する場合は、Sales Tax Permit(セラーズパーミット)の申請も同時に行います。業種・業態によって特殊なライセンスが必要となる場合は、該当する州の機関に申請します。

Step 5:ローカルレベルのライセンスを取得する

営業場所の市・郡の窓口(またはウェブサイト)で、一般営業免許証を取得します。実店舗がある場合は、ゾーニング・保健衛生・消防などの許可も個別に申請します。

なお、必要書類として一般的に求められるものは以下のとおりです。

  • 本人確認書類(パスポートや運転免許証)
  • 法人登記証明書(定款等)
  • EIN通知の書類
  • 事業所の賃貸借契約書または不動産所有権等を証明できる書類
  • 事業計画書・事業内容の説明資料(業種によって必要になる場合あり)

Step 6:ライセンスを更新管理する

多くのビジネスライセンスは更新制です。年1回または数年ごとに更新手続きが必要で、更新時にも手数料が発生します。更新を忘れてライセンスが失効した状態で営業を続けるとペナルティの対象になることがあります。カレンダーに更新時期を登録しておくなど、期限を管理する仕組みを整えておくことをおすすめします。

4. 在宅ビジネスでもライセンスは必要か?

自宅を事業所としてビジネスを行う場合も、ライセンスや許可が必要になることがあります。「自宅だからライセンスは不要」という誤解を持っている方が少なくないため、注意が必要です。

連邦や州レベル以外で特に関係するのは以下の2つです。

  • General Business License:一般に市・郡レベルで必要になるビジネスライセンス
  • Home Occupation Permit:居住地でビジネスを行うことを認める許可証で、市・郡レベルで必要になることがある。

顧客が自宅を訪問するビジネス(例:自宅の一部を用いて開業するネイルサロン)においては、居住エリアのゾーニング規制について当局へ事前確認しておくことをおすすめします。


以下に、この記事でご紹介した内容を整理します。

アメリカでビジネスを始めるために必要な
ライセンスの3層構造
会社登記とライセンス取得は別物。必要なライセンスを漏れなく確認することが重要

連邦レベル
EIN(雇用主識別番号)の取得
すべての法人で必須
• 特殊業種は別途必要:
– アルコール・銃器
– 放送業
– 農業・輸入

州レベル
州ビジネスライセンス
+ Sales Tax Permit
営業を行う州で手続きが必要
• 登記州≠営業州の場合は要注意
• 商品・サービス販売には Sales Tax Permit が必須
• 医療・弁護士・飲食・美容などの専門職は個別ライセンスあり

ローカル(郡・市)レベル
General Business License
+ その他ライセンス
市・郡ごとに手続きが異なる
• 実店舗がある場合は追加で特殊なライセンスが必要に
– ゾーニング許可
– 保健衛生許可
– 看板設置許可 など

まとめ

この記事では、アメリカでビジネスを始める際に必要なビジネスライセンスの種類と取得の流れについて解説してきました。

  • 会社の登記とビジネスライセンスの取得は全く別の手続き
  • ライセンスは「連邦・州・ローカル(市・郡)」の3層構造になっており、営業場所と業種によって必要なものが変わる
  • 飲食店など特定業種では、保健衛生許可や酒類販売免許など複数のライセンスが重なるため、早めの準備が必要
  • 多くのライセンスは更新制のため、取得後も有効期限の管理を継続して行うことが重要

この記事がアメリカでのビジネスやビジネス・ライセンスの取得を検討している方の助けになれば幸いです。

この記事は役に立ちましたか?
参考になったら「いいねボタン」で教えてください
ワシントン州 米国公認会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 私は、皆様にとって身近に相談できる会計士でありたいと願い、日々業務を行っております。アメリカでの起業やビジネスの運営には、日本では聞き慣れない専門用語も多く、特に会計士や税理士の行う業務は皆様にとってブラックボックスになりやすい分野かと思います。 ご相談をお受けする際には、できるだけ難解な専門用語を使わず、全体像をイメージしながら次のアクションが明確になるような説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制整備に少しでも貢献できればと思います。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方には、まずはこのサイトをご覧いただき、私共や会計・税務を少しでも身近に感じていただければ嬉しく思います。

あなたへのおすすめ記事

お問い合わせ ご相談の流れ ご相談事例
目次