この記事でわかること
「QuickBooksの勘定科目(Chart of Accounts)って、どこまで細かく作ればいいの?」
「日本の『売掛金』や『買掛金』は、英語だと何て言うの?」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。ただ、最初から完璧に作り込もうとして、かえって手が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。実は、勘定科目は最初からすべてを整える必要はありません。事業のかたちが固まっていくのに合わせて、少しずつ足したり、まとめたりしながら調整していけば十分です。私の経験上も、最初はシンプルに始めて、運用しながら育てていく方が効率的であるケースがほとんどです。
この記事では、Chart of Accountsの基本構造・よくある失敗例・日米の勘定科目対応表・個人事業主向けの最小テンプレートまでをまとめて解説します。読み終えていただければ、自分のお店や事業に合った勘定科目を効率的に作れるようになるかと思います。
1. Chart of Accountsの基本構造
このセクションでは、まずQuickBooks上の Chart of Accountsが「何でできているか」を押さえます。土台の構造・5つの大分類・勘定科目コード(Account Number)の3点を順番に見ていきます。これを理解しておかないと、後で勘定科目が散らかった理由すらわからなくなってしまいますので要注意です。
1.1. Chart of Accountsとは何か
結論からいえば、Chart of Accounts(勘定科目表)とは、事業のすべての取引を分類するための「箱の一覧」です。日本語では「勘定科目表」と訳されます。
たとえば、お店の家賃を払ったら「Rent Expense(家賃)」という箱に入れます。売上が立ったら「Sales(売上)」の箱に入れます。勘定科目(Account)とは、お金の動きを正しい箱に振り分けるためのラベルだと考えるとわかりやすいかと思います。
1.2. 5つの大分類(Account Type)
すべての勘定科目は、大きく5つのタイプに分かれます。アメリカで一般的に使用される勘定科目も、この5分類が土台になっています。
- Assets(資産):現金・売掛金・備品など、事業が持っているもの
- Liabilities(負債):買掛金・借入金など、これから払うもの
- Equity(資本):出資金・利益剰余金など、純粋な持ち分
- Income(収益):売上などの収入
- Expenses(費用):仕入・家賃・人件費などの支出
QuickBooksでは、この5分類の下にさらに細かいタイプ(Detail Type)がぶら下がります。新しい勘定科目を作るときは、必ず「どの大分類に属するか」を最初に選びます。ここを間違えると、損益計算書(Profit and Loss Statement)や貸借対照表(Balance Sheet)の数字がずれてしまいますので注意が必要です。
1.3. 勘定科目コード(Account Number)の考え方
QuickBooksでは、各勘定科目に番号を振ることができます。これをAccount Number(勘定科目コード)と呼びます。番号を使うため、勘定科目が自動的に並び替えられて見やすくなります。
一般的には、次のような番号帯を使う運用が多いです。
Account Numberは、設定(Settings)の「Advanced」から「Enable account numbers」をオンにすると使えるようになります。番号を使うかどうかは事業の規模によりますが、使用したい勘定科目が20を超えてくるなら、番号を振っておくことをおすすめします。
2. Chart of Accounts作成におけるよくある失敗例
ここでは、実際によくある3つの失敗パターンを順に紹介します。先に知っておけば、同じ落とし穴を避けられるかと思います。
失敗例1:「Miscellaneous」に何でも入れてしまう
結論からいえば、「Miscellaneous(雑費)」を多用すると、決算のときに必ず後悔します。なぜなら、何にいくら使ったのかが、後から一切わからなくなるからです。
たとえば、開業初年度に全ての費用をとりあえず「雑費」で入力し続けたお店がありました。年末になって税理士から「このMiscellaneousの3万ドルは何ですか?」と聞かれ、領収書を1枚ずつ見直すはめになりました。仕入なのか、消耗品なのか、接待費なのかで税務上の扱いが変わるため、結局すべて入力し直しになりました。
たとえ面倒でも、最初から「Office Supplies(事務用品)」「Meals(飲食費)」のように分けておくほうが、後がずっと楽になります。
失敗例2:勘定科目を細かく作りすぎる
逆に、細かすぎる失敗もあります。「コーヒー豆」「紙ナプキン」「ストロー」と1品ごとに勘定科目を作ってしまうケースです。
勘定科目が100を超えると、入力するたびにどの箱に入れるか迷います。結果として、人によって入れる箱がバラバラになり、数字の意味がなくなります。仕入なら「Cost of Goods Sold(売上原価)」にまとめ、商品ごとの内訳が必要ならクラス(Class)やアイテム(Item)機能で管理するほうが現実的です。
失敗例3:大分類(Account Type)を間違える
最も影響が大きいのが、大分類の選び間違いです。たとえば、借入金(Liabilities)を誤って費用(Expense)として登録すると、売上が実際より大きく見えてしまいます。
当サイトの見解として申し上げると、(可能であれば)勘定科目は「最初の3か月」で型を固めておくのが理想です。取引が増えてから直そうとすると、過去の仕訳をすべて修正することになり、現実的に手が回らなくなるためです。開業前か、せめて開業直後に一度、Chart of Accounts自体と各科目ごとの使用ルールを会計士とすり合わせしておくことを強くおすすめします。
3. 日本の勘定科目との対応表
この章では、日本の勘定科目と英語の勘定科目の対応関係を表で整理します。「日本語 <=> 英語の対応表」として手元に置いておくと、QuickBooksの入力で迷う時間がぐっと減るかと思います。
日本語の感覚で「これは英語で何だろう」と探すと、ぴったり合う訳が見つからないことがあります。考え方が少し違うためです。代表的なものをまとめました。
特に気をつけたいのが「売上税(Sales Tax Payable)」です。お客様から受け取った売上税は自社の売上(収益)ではなく、州に納めるまで預かっているだけの「負債」なので、ここを混同すると売上が過大に見えてしまいます。
4. 個人事業主向け最小セットのテンプレート
この章では、個人事業主(Sole Proprietor)がまず作っておけば困らない最小限の勘定科目リストをご紹介します。まずはこのテンプレートから始めて、必要になったら足していくのがおすすめです。
個人事業主向けの勘定科目テンプレート
開業時は次の15科目ほどあれば十分まわ流と思います。最初はこれくらいシンプルに勘定科目を整理しておき、会計士からの指摘など必要に応じて足していくのが良いかと思います。
- Checking Account(事業用普通預金):事業のお金の入口・出口
- Cash on Hand(手元現金):レジや小口の現金
- Accounts Receivable(売掛金/AR):後払いの売上がある場合
- Accounts Payable(買掛金/AP):後払いの仕入がある場合
- Sales Tax Payable(売上税):売上税を預かる場合
- Owner’s Investment(元入金):自分が事業に入れたお金
- Owner’s Draw(事業主貸):事業から個人へ引き出したお金
- Sales / Revenue(売上):本業の収入
- Cost of Goods Sold(売上原価):仕入・材料費
- Rent Expense(地代家賃):店舗や事務所の家賃
- Utilities(水道光熱費):電気・ガス・水道・通信
- Office Supplies(事務用品費):消耗品・文房具
- Meals(飲食費):取引先との飲食など
- Bank Charges(支払手数料):銀行・カードの手数料
- Professional Fees(外注・専門家報酬):会計士・弁護士など
個人事業主の方が見落としやすいポイント
個人事業主でとくに大切なのが「Owner’s Draw(事業主貸)」と「Owner’s Investment(元入金)」です。事業のお金を私生活に使ったときは、費用ではなくOwner’s Drawとして記録します。特に、「給与(Payroll)」として処理しないよう注意が必要です。
たとえば、事業用口座から自分の生活費を引き出したとします。これを「Expenses」に入れてしまうと、利益が実際より小さく見えてしまいます。事業のお金と個人のお金は勘定科目で区別する必要があります。これを徹底するだけで、確定申告(タックスリターン)のときの混乱がかなり減るかと思います。
業種に合わせて足していく
勘定科目は最低限のリストから始めて、事業に合わせて科目を足していくのが現実的です。たとえば飲食店なら「Food Cost(食材費)」「Beverage Cost(飲料費)」をCOGSの下に分けると、原価管理がしやすくなります。サロンなら「Supplies(施術用品)」を独立させると便利です。
当サイトの見解として、最初から完璧な勘定科目表を目指す必要はありません。むしろ、シンプルに始めて、決算や月次で「この科目、分けたいな」「この科目は税務上分けるべき」となったときに足すほうが、自分の事業に本当に合った形になります。迷ったときは、QuickBooksの初期設定(業種テンプレート)をベースに不要な科目を消すところから始めるのもよい方法です。
まとめ
この記事では、QuickBooksの勘定科目(Chart of Accounts)の基本構造から、よくある失敗例、日米の対応表、個人事業主向けの最小テンプレートまでを解説してきました。
以下に、この記事のポイントを整理しておきます。
この記事が、アメリカの個人事業主や日系企業の方の助けになれば幸いです。