「現在はオフィスを構えるほどの事業規模ではないが、この場合は自宅住所で登記するしかない?」
「バーチャルオフィスという選択肢があると知ったが、デメリットは何か?」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。アメリカでビジネスを始める際、物理的なオフィスを構えるのはコストも手間もかかります。そうした中で、多くの個人事業主やスモールビジネスオーナーが活用しているのがバーチャルオフィスです。なぜなら、バーチャルオフィスは会社登記に必要な住所の確保から郵便物の管理まで、基本的なオフィス機能をまとめて提供してくれるサービスだからです。
この記事では、アメリカのバーチャルオフィスのサービス内容やメリット・デメリット、選ぶ際のポイントについて整理したいと思います。
また、よく混同されますがバーチャルオフィスとシェアオフィスは異なるサービスです。
- バーチャルオフィス:住所・電話番号・郵便受取などのサービスのみを提供し、物理的なデスクはない。
- シェアオフィス/コワーキングスペース:物理的な作業スペースを提供するサービス。実際にそこへ出向いて仕事をする。
シェアオフィスについては別の記事で詳しく解説しています。
1. バーチャルオフィスとは何か?
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィススペースを借りずに、ビジネス用の住所・電話番号・郵便物転送などのサービスを月額料金で利用できる仕組みです。日本でも同様のサービスがありますが、アメリカでも広く普及しており、Regus・WeWork・Davinci Virtual Officeなど多くのプロバイダーが全米各地で展開しています。
アメリカでLLC(合同会社)やC-Corporation(株式会社)を設立する際、州務長官(Secretary of State)への登録書類に会社の住所を記載する必要があります。バーチャルオフィスの住所はこの登記住所として使うことができます。自宅住所を公的書類に載せることに抵抗がある方や、日本在住のまま米国法人を設立したい方にとって、特に有効な選択肢です。
バーチャルオフィスで提供される主なサービス
バーチャルオフィスが提供するサービスはプロバイダーによって異なりますが、一般的には以下のようなものが含まれます。
- 商用利用可能な住所の提供:会社登記・名刺・ウェブサイトに使用できるビジネス用の住所
- 郵便物の受け取りと転送:届いた郵便物を指定先へ転送、またはスキャンしてメール送付
- 電話応対サービス:専任のスタッフが電話を受け、取り次ぎやメッセージを伝えるサービス
- 会議室の時間貸し:必要なときだけ会議室を時間単位で利用できるオプション
なお、バーチャルオフィスとよく混同される概念として「Registered Agent(登録代理人)」があります。Registered Agentは法的な書類や訴状を会社の代わりに受け取る義務を担う存在で、アメリカでは法人設立時に指定が必須です。バーチャルオフィスのプロバイダーがRegistered Agentサービスも兼ねて提供している場合がありますが、両者は別のサービスであると認識しておくのが良いかと思います。
2. バーチャルオフィスのメリット
バーチャルオフィスには複数のメリットがあります。以下、バーチャルオフィスの主なメリットについてご紹介します。
コストを大幅に抑えられる
アメリカで物理的なオフィスを借りる場合、ニューヨークなどの都市部では月額数千ドル以上の賃料がかかることも珍しくありません。一方で、バーチャルオフィスの月額料金は$50〜$200程度が相場になっています。初期投資を最小限に抑えたいスタートアップや個人事業主にとって、コスト削減効果は非常に大きいと言えます。
ビジネスとしての信用度
自宅住所をそのまま会社の住所として公開することに抵抗を感じる方は多いと思います。バーチャルオフィスを利用すれば、ニューヨークやロサンゼルス、テキサスなど主要都市のビジネス街の住所を名刺やウェブサイトに記載することができます。あまり本質的ではないですが、個人の住所や私書箱(P.O. Box)を使うよりも、取引先やお客様からの信用度は高くなる傾向にあると言ってよいと思います。
場所を選ばず柔軟に働ける
バーチャルオフィスを使えば、日本にいながらアメリカの法人を運営することも可能です。一般に、郵便物はスキャンしてメール送付してもらえるため、重要書類を逃すリスクも抑えられます。リモートワークやノマドスタイルで仕事をする方にとって、場所に縛られない働き方と相性が良いサービスかと思います。
州を選んで登記できる
バーチャルオフィスを使えば、実際に居住していない州でも会社を設立することができます。ただし、登記州以外でビジネスを行う場合には外国法人登録(Foreign Qualification)の手続きが必要になるため、法人設立州の選択は慎重に検討することをおすすめします。
3. バーチャルオフィスのデメリットと注意点
バーチャルオフィスには便利な面が多い一方で、見落としやすいデメリットもあります。
銀行口座の開設が難しくなる場合がある
アメリカの銀行によっては、バーチャルオフィスの住所を法人の住所として認めない場合があります。特に大手銀行では、口座開設時に実際のオフィスの存在を確認されることがあり、バーチャルオフィスの住所だけでは審査を通過できないケースもあります。そのため、口座開設を予定している銀行に事前に確認しておくことをおすすめします。
業種によっては利用できない
製造業・飲食業・小売業など、物理的な拠点が業務上必要と想定される業種では、当然ながらバーチャルオフィスだけでは事業が成り立ちません。また、業種によっては州や市から取得するビジネスライセンス(Business License)において、物理的なオフィスの存在が要件になっている場合もあります。この辺りについても、事前に確認されることをおすすめします。
一部の州では制限がある
一部の州では、バーチャルオフィスの住所を登記住所として使用することに関して、追加の確認や規制が設けられている場合があります。設立を検討している州の規制を事前に調べることをおすすめします。
4. バーチャルオフィスの選び方
バーチャルオフィスを選ぶ際に確認すべきポイントを、実務的な観点から整理しておきます。
バーチャルオフィスの住所
どの州・どの都市の住所を使うかは、会社の設立州・事業内容・取引先の所在地によって変わります。ビジネスを行う州と登記州が異なる場合、前述のとおり外国法人登録(Foreign Qualification)が必要になるケースもあります。なお、「法人の設立州」と「法人が実際にビジネスを行う州」を必ずしも一致させる必要はないのですが、基本的には、実際にビジネスを行う州でそのまま会社を設立する方が手続き的にもシンプルですので、おすすめです。
提供サービスの内容
バーチャルオフィスのサービス内容は細かなオプションを含めると多岐にわたります。事前に「自社にとって最低限必要なサービス」と「オプションであると良いサービス」をリストアップした上で比較・検討することをおすすめします。主に検討するとよい事項は、以下の通りです。
- 郵便物のスキャン頻度(毎日・週1回・都度など)
- 郵便物の転送先(日本への国際転送が可能かどうか)
- 電話応対の有無・言語対応(日本語対応があると安心)
- 会議室の利用可否と料金
プロバイダーの評判とサポート体制
GoogleレビューやYelpなどで実際の利用者の声を確認することをおすすめします。特に確認したい点は、郵便物の通知スピードやスタッフの対応の丁寧さ、トラブル発生時の対処の早さです。日系企業向けのサポートを提供しているサービスプロバイダーも一部存在するため、英語でのやり取りに不安がある場合は日本語対応の有無も確認すると良いかと思います。
バーチャルオフィスの活用はオフィス契約の選択肢の一つで、会社設立プロセスのステップの一つです。設立手順の全体像を把握したい方は、以下の記事もあわせて参考にしていただければと思います。
まとめ
この記事では、アメリカのバーチャルオフィスのサービス内容やメリット・デメリット、選ぶ際のポイントについて解説してきました。
以下に、この記事のまとめを整理しておきます。
この記事が、アメリカでのビジネス立ち上げを検討している方の助けになれば幸いです。