アメリカの給与明細の見方 | 税務申告時に確認するべきチェックポイントを米国公認会計士がわかりやすく解説

2026.04.15
税務・確定申告

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「給与明細をもらったけど、引かれている項目が多すぎて何が何だかわからない。」
「Social Security TaxやMedicare Taxは自分にどう関係あるの?」

こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。特にアメリカで初めて働く日本人にとって、給与明細(Pay Stub)に並ぶ英語の控除項目は非常に馴染みにくいものかと思います。日本とは税制や社会保障の仕組みが大きく異なるため、何のために引かれているのかが分かりにくいのも当然です。

この記事では、アメリカの給与明細に登場する主な控除項目を解説していきます。給与明細の各項目を押さえておくことで、年末に発行されるW-2フォーム(日本の源泉徴収票に相当)も概ね読み解けるようになるかと思います。特に、税金に関する控除項目の意味を理解しておくことはタックスリターンを作成する上でも非常に重要になりますので、参考にしていただければ幸いです。

1. アメリカの給与明細(Pay Stub)の基本構造

このセクションでは、給与明細の大枠を把握します。総支給額と手取り額の違いと控除の種類を整理します。

アメリカの給与明細には、大きく分けて「Earnings(支給額)」と「Deductions(控除額)」の2つのセクションがあります。支給額から控除額を差し引いたものが、実際に受け取るNet Pay(手取り額)になります。

Gross PayとNet Payの違い

Gross Payは税金や各種控除が引かれる前の総支給額です。一方、Net Payはすべての控除が差し引かれた後の手取り額です。日本の給与明細でいう「支給合計」と「差引支給額」に相当します。

たとえば月給が5,000ドルの場合、各種税金や保険料が引かれた後の手取りは3,500〜4,000ドル程度になることが一般的です(引かれる金額は居住する州や収入の金額によって異なります)。

控除の2つの種類

給与明細で控除される項目は、以下の大きく2種類に分けられます。Voluntary Deductionsについては皆さんの方で事前に把握されている金額(保険料や401Kへの拠出等)が控除されていることと思います。そのため、この記事では主にStatutory Deductionsの項目(法律で義務付けられている控除項目)を中心に解説していきたいと思います。

  • Statutory Deductions(法律で義務付けられた控除項目):連邦・州・郡/市の所得税やSocial Security Tax、Medicare Taxなど、法律で義務付けられている控除項目
  • Voluntary Deductions(選択により任意で控除される項目):401(k)への拠出や医療保険料、歯や眼の保険料など、従業員が自ら選択する控除項目

2. Statutory Deductions(法定控除)の種類

Statutory Deductions(法律で義務付けられた控除項目)には主に以下の項目があります。

  • Federal Income Tax(連邦所得税)
  • State Income Tax(州所得税)
  • Local Income Tax(地方所得税)
  • Social Security Tax(社会保障税)
  • Medicare Tax(メディケア・タックス)

以下、それぞれについて詳しく解説していきます。

Federal Income Tax(連邦所得税)

Federal Income Taxは、アメリカ連邦政府に納める所得税です。日本の所得税に近いイメージで理解いただければ良いかと思います。

税率は累進課税で、収入が高いほど課される最高税率が上がる仕組みになっています。2025年時点では、課税所得に応じて10%から37%までの7段階の税率が適用されます。

一般に、給与明細から源泉徴収(天引き)される金額は入社時に提出するForm W-4(Employee’s Withholding Certificate)の記載内容をもとに計算されています。従って、Form W-4に扶養家族の人数や追加控除の希望などを記載することで源泉徴収額を自身で調整することも可能です。

State Income Tax(州所得税)

State Income Taxは、居住する州に納める所得税です。州によって税率が異なり、また州によっては所得税が存在しない場合もあります。

例えば、2025年時点では以下の9つの州において個人への州所得税が課されていません。そのため同じ給与でも、居住する州によって手取り額が大きく変わることがあります。なお、税率の高い州の例としてはカリフォルニア州やニューヨーク州などが挙げられます。

  • アラスカ州
  • フロリダ州
  • ネバダ州
  • ニューハンプシャー州
  • サウスダコタ州
  • テネシー州
  • テキサス州
  • ワシントン州
  • ワイオミング州

なお、所得税を課税している州では州独自の源泉徴収フォーム(連邦所得税のForm W-4に相当するもの)を記入・提出する必要があります。連邦所得税と同様に、こちらのフォームの内容をもとに給与明細から源泉徴収される金額が計算されることになります。

Local Income Tax(地方所得税)

Local Income Taxは、郡(County)や市(City)などの地方自治体に納める所得税です。Local Income Taxは全ての地域に存在するわけではありませんので、給与明細にこの項目がない方も多くいらっしゃると思います。

代表的な例としてニューヨーク市(New York City)が挙げられます。具体的には、5つの行政区(Boroughs)であるBronx、Brooklyn、Manhattan、Queens、Staten Islandのいずれかに居住している場合にのみ課されます。たとえニューヨーク州内に住んでいたとしても、ニューヨーク市外に住んでいればLocal Tax(New York City Tax)はかかりません。またニューヨーク市で働いていたとしても、住居がニューヨーク市外であればLocal Tax(New York City Tax)を払う義務はありません。

他にも、ペンシルバニア州の各都市やオハイオ州の一部の市などでLocal Income Taxが課されるケースがあります。

Social Security Tax(社会保障税)

Social Security TaxはFICA Tax(Federal Insurance Contributions Act | ファイカ・タックス)の一部で、日本の社会保険料に相当します。税率は従業員・雇用主それぞれ6.2%(合計12.4%)となっており、労使折半で負担することになっています。雇用者も同額を別途納付していますが、そちらは給与明細には現れません。給与明細に表示されているのは従業員負担分のみということになります。

なお日本からの駐在員については、日米社会保障協定により、日本の厚生年金に引き続き加入している場合はアメリカのSocial Security Taxの支払いが免除されますので、該当する方は雇用者へ確認されることをおすすめします。

Medicare Tax(メディケア・タックス)

65歳以上の高齢者と障害者向けの公的医療保険制度への拠出で、こちらもSocial Security Taxと同じくFICA Taxの一部であり、日本の社会保険料に相当します。税率は従業員と雇用者がそれぞれ給与の1.45%(合計2.9%)を労使折半で負担することになっています。Social Security Taxと同じく雇用者も同額を別途納付していますが、そちらは給与明細には現れません。給与明細に表示されているのは従業員負担分のみということになります。

なお、Social Security Taxと同様、日米社会保障協定の適用を受ける駐在員は通常免除されますので、該当する方は雇用者へ確認されることをおすすめします。

3. その他のStatutory Deductions(法定控除)

前のセクションでご紹介したStatutory Deductions(法定控除)以外にも、居住している州によって独自の保険料等が控除される場合があります。このセクションでは代表的な項目をご紹介します。

SDI(State Disability Insurance:州障害保険)

SDI(State Disability Insurance)は、仕事と無関係なケガや病気、妊娠、出産などによって一時的に働けなくなった場合に、給付金が支払われる保険制度になります。2025年時点で加入が義務付けられている代表的な州は、以下の通りです。

  • カリフォルニア州
  • ニューヨーク州
  • ニュージャージー州
  • ハワイ州
  • ロードアイランド州

上記の州にお住まいの方は、原則として給与明細からSDI(State Disability Insurance)が控除されているかと思います。

FLI(Family Leave Insurance:家族休暇保険)

FLI(Family Leave Insurance)は、子どもの誕生や養子縁組、家族の介護などで休業が必要になった場合に給付を受けることができる制度です。SDIとは異なり、FLIは自分自身の疾病や怪我ではなく、家族のケアを理由とした休業を対象としています。

2025年時点で加入が義務付けられている代表的な州(地区)は、以下の通りです。

  • カリフォルニア州
  • コネチカット州
  • マサチューセッツ州
  • ニュージャージー州
  • ロードアイランド州
  • ワシントン州
  • コロラド州
  • デラウェア州
  • メイン州
  • メリーランド州
  • ミネソタ州
  • オレゴン州
  • コロンビア特別区

上記の州にお住まいの方は、原則として給与明細からFLI(Family Leave Insurance)が控除されているかと思います。

4. 税務申告の観点で見ておくべき給与明細の確認ポイント

給与明細はタックスリターンと密接に関わってきますので、以下のポイントについて税務申告の観点で確認しておくことをおすすめします。

YTD(Year-to-Date)欄の確認

アメリカの給与明細には、当期分(Current)とYTD(Year-to-Date:年初来累計)の2列が表示されることが多いです。YTD欄はその年の1月1日から現在の給与支払い日までの累計額を示します。例えば「今年はいくらのFederal Income TaxやStatel Income Taxが源泉徴収されたのか」という点は、タックスリターンでの還付額や納税額にダイレクトに影響してきますので非常に重要です。万が一余分な税金を払わないためにも、年初に会社から送られてくるW-2フォーム(日本の源泉徴収票に相当)の数字と源泉徴収額のYTD欄の一致を確認されることをおすすめします。

なお、401(k)や保険等に拠出を行っている場合には、W-2フォームのBox 1やBox 3、Box 5の金額は給与明細のYTD欄と一致しないことがあります。これは、例えばBox 1には連邦税の課税対象となる賃金が記載されますが、この課税対象となる金額には「その年の総収入から401(k)などの税引き前控除額を差し引いた金額」が表示されてくるためです。

W-4と源泉徴収の関係

給与明細上で源泉徴収されるFederal Income Taxがあまりに「多すぎる」または「少なすぎる」と感じる場合は、Form W-4の更新を検討されることをおすすめします。一般にForm W-4は入社時に提出するものですが、結婚や離婚、子供の出産などのライフイベントが起きたときにも新たに提出することができます。Form W-4の記載が実態と合っていないと確定申告時に多額の追加納税(もしくは多額の還付)が発生することもありますので、注意が必要です。

まとめ

この記事では、アメリカの給与明細に登場する控除項目と税務申告の観点でのチェックポイントについて解説してきました。

以下に、この記事の内容を整理しておきます。

アメリカの給与明細(Pay Stub)主な控除項目一覧
項目名 種類 納付先・目的 税率の目安
Federal Income Tax
連邦所得税
法定控除 連邦政府
日本の所得税に相当
10〜37%
(累進課税・7段階)
State Income Tax
州所得税
法定控除 州政府
居住する州に納付
州により異なる
Local Income Tax
地方所得税
法定控除 市・地方自治体
ニューヨーク市など一部のみ
地域による
(全地域ではない)
Social Security Tax
社会保障税
法定控除
(FICA)
老齢・遺族・障害年金
日本の厚生年金に相当
6.2%(従業員負担分)
雇用者も同額を別途負担
Medicare Tax
メディケア・タックス
法定控除
(FICA)
高齢者・障害者向け
公的医療保険財源
日本の健康保険料や介護保険料に相当
1.45%(従業員負担分)
雇用者も同額を別途負担

この記事が、アメリカで働く日本人の方や給与計算に関わる経理・労務担当者の方の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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