One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)とは | 日系企業が押さえるべきポイント4つを会計士が解説

2026.05.23
税務・確定申告

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

2025年7月4日、アメリカにおいて新たな税制の枠組みを定める重要法案「One Big Beautiful Bill Act」(以下、OBBBA)が正式に成立しました。この法律はアメリカの法人税制に非常に大きな影響のある法案ですので、アメリカで事業を展開する企業は主要なポイントだけでも確認しておくことをおすすめします。

この記事では、OBBBAによって変わる法人のタックスリターンへの影響を、以下の4つのポイントに絞って解説してきたいと思います。

  1. 法人税率21%が恒久化
  2. 研究開発(R&D)費の即時損金算入が復活
  3. 設備投資を後押しする3つの優遇税制が新設・拡充
  4. 支払利子損金算入制限(163(j)条)が緩和

1. 法人税率21%の恒久化

2017年に成立したTCJAという法案において連邦法人税率は35%から21%へ引き下げられましたが、これはあくまで期限付きの措置でした。しかし、今回のOBBBAではこの連邦法人所得税の税率21%を据え置くことになりました。

結果として昨年からの税率の変更は無いということになるため、目に見える大きなインパクトは無いように思われるかもしれません。ただし裏を返せば、今後は定まった税率を前提にキャッシュフローや投資回収を試算することができるとも言えます。税制が毎年のように変わるアメリカにおいては、定まった税率に基づいて将来的な税金を予測できることはCF計画へのインパクトとして小さくないのではないでしょうか。

2. 研究開発(R&D)費の即時損金算入

2つ目の重要な変更点は、研究開発(R&D)費の取り扱いです。

R&D費については、2025年1月1日以降から2029年12月31日以前に開始する課税年度に支払われた(もしくは発生した)アメリカ国内のR&D支出について、納税者は①全額を即時費用化、②60か月以上で均等償却、あるいは③10年間にわたり償却、の3つの選択肢からいずれかを選択することが可能になりました。

そして、これらの選択は「新たに発生したR&D支出」ごとに、その発生した年度の確定申告時に行うことができます。つまり、過去に発生し、すでに償却方法が確定した支出への遡及的な変更は不可能ですが、翌年以降に新たに発生した支出には別の償却方法を年度単位で再選択できるという柔軟性が認められています。たとえば、黒字年度には即時費用化を選択し、赤字年度には償却の選択をすることで、年度ごとに税金のキャッシュフローを最適化が可能となります。

補足ですが、アメリカ国外で発生するR&D費用については従来どおり15年間で資本化・償却し続ける必要がありますので、ご注意ください。

3. 設備投資を後押しする3つの優遇税制

OBBBAにはアメリカ国内での投資を後押しする3つの優遇税制が含まれています。以下、それぞれについて解説していきます。

優遇税制1: 100%ボーナス減価償却(”Bonus Depreciation”)

2023年からの段階的に縮小が始まっていた100%ボーナス償却(即時償却)が、OBBBAによって復活しました。これにより、企業は2025年1月20日以降から2029年12月31日以前に取得し使用を開始した資産であれば取得初年度に全額を損金算入することが可能です。

これにより、投資初年度の課税所得が大幅に圧縮されることで納税額(税金キャッシュアウト)が減少し、その節税分をさらなる再投資や運転資金へ機動的に充当が可能になります。

特に、工場の新設や生産ラインの大規模な刷新など多額の設備投資を行う製造業は、100%ボーナス償却(即時償却)を適用することでかなりのキャッシュフロー改善が見込めるかと思います。なお、このボーナス償却の適用条件である「期間条件」を満たすためには、企業は当該資産を「いつ取得し、いつ使用開始したのか」を税務当局(IRS)へ証明できるようにしておく必要がありますので注意が必要です。

優遇税制2: Qualified Production Property(適格生産資産)

アメリカにおける製造業の振興を図るため、OBBBAはアメリカ国内で製造・生産・精製に使われる非居住用不動産の一部を「Qualified Production Property(適格生産資産)」と定義し、同じく100%即時償却を選択できる制度を新たに創設しました。

「Qualified Production Property」とは、納税者が「適格生産活動」の不可欠な部分として当初使用し、建設開始が2025年1月20日以降から2028年12月31日以前までに建設が開始され、かつ2032年12月31日以前にその使用が開始された米国の非居住用不動産の一部を指します。

なお、「適格生産活動」とは有形動産の製造、生産、または精製において、製品を構成する資産に実質的な変化が生じた場合を指します(たとえば、鋼板をプレス・溶接して自動車用ドアパネルに仕上げるように、原材料が形状・用途ともに全く別の製品へと実質的に変わる製造工程のこと)。

優遇税制3: Section 179における即時償却枠の上限引き上げ

OBBBAでは、少額減価償却(セクション179)の上限額が250万ドルに引き上げられました(従来の基準では100万ドルが上限)。

またSection 179対象資産の当年度取得額が400万ドルを超える場合(従来の基準では250万ドル)、その超過分に応じて控除限度額の上限(250万ドル)が段階的に縮小されます(この段階的に縮小される仕組み自体は従来に同じ)。

これらの新しいルールは2025年以降に開始する課税年度に使用開始された資産から適用が可能で、これにより中小規模の設備投資においても初年度での全額費用化がしやすくなり、多くの企業でキャッシュフローの改善が期待できるかと思います。

4. Section 163(j)(支払利子損金算入制限)の緩和

企業の資金調達に大きな影響を与える改正の一つが、この「Section 163(j)(支払利子の損金算入制限)」に関するルールの緩和です。

Section 163(j)とは?

この規定は、企業が過大な支払利子を計上して税負担を不当に軽減する、いわゆる「アーニングス・ストリッピング」を防止するためのものです。具体的には、各年度において損金に算入できる支払利子の額に上限を設けています(= 利息を支払うことによって享受できる節税メリットに上限がある)。

計算基準の変更(EBITからEBITDAへ)によるSection 163(j)の緩和

2022年以降、この損金算入の上限額を計算する際の基礎となる所得が「EBIT(利払前・税引前利益)」に設定されていました。そこに対して、OBBBAではこの計算基準を(2025年1月1日以降から2029年12月31日以前に開始する課税年度については)「EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)」の基準にすることを決定しました。

この基準変更の何が良いかというと、EBITDAはEBITに減価償却費(Depreciation)と無形資産償却費(Amortization)を足し戻して算出される指標です。したがって、損金算入限度額を計算する際の基礎となる所得の額が(特に製造業などの減価償却費が多い業種では)EBITベースよりも大きくなり、損金算入できる支払利子の上限額が引き上げられる(= 多くの節税メリットを享受できる)ことになりました。

設備投資やM&Aで多額の借入を行う企業への影響

この改正は、工場建設、M&A、あるいは大規模な事業再編などで多額の借入を行う企業にとって朗報だと思います。

特に、前章で解説した100%ボーナス償却を適用する企業は初年度に巨額の減価償却費を計上するため、EBITDAベースに変更されたことでその支払利息控除の制限が大幅に緩和され、借入による資金調達のインセンティブが増す形となります。これにより、企業はより柔軟な財務戦略をアメリカ事業で展開することが可能になったとも言えます。

まとめ

この記事では、OBBBAが日系企業の米国事業に与える4つの重要論点について解説してきました。

OBBBAの影響は多岐にわたり、それぞれのルールが相互に影響し合っています。表面的な理解だけで重要な経営判断を下すと、予期せぬ追徴課税やペナルティといった大きなリスクを負いかねません。早い段階で米国税務に精通した専門家に相談されることをおすすめします。

この記事で参照されている法律やガイダンスは、執筆時点のものです。最新の情報については、米国議会や内国歳入庁(IRS)の公式発表をご確認ください。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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