アメリカのFBARとは?海外資産の申告方法や罰金ルール、「知らなかった」場合の対処法を米国公認会計士が解説

2026.04.09
税務・確定申告

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「FBARを出さないとペナルティが大きいと聞いたが、ルールすら知らなかった場合も罰金があるのか」
「FBARと一緒によく目にするFATCAは何が違うのか、どちらを出せばいいのか?」

こうした不安や疑問を持つ方は少なくないと思います。アメリカに在住する日本人や米国市民権・グリーンカードを保有したまま日本に住んでいる方にとって、FBARは毎年必ず向き合わなければならない海外(米国外)資産の申告義務です。「FBAR(エフバー)」という言葉は聞いたことがあっても、具体的に何を・いつ・どこに報告すればよいのかを正確に理解している方は多くないと思います。さらに、FATCAという一見するとよく似た制度も存在するため、「どちらも同じものでは?」と混同されやすいです。

この記事では、FBARの基本的な仕組みから申告方法、申告を怠った場合の罰金のルール、そして「知らなかった」場合の対処法まで、わかりやすく解説していきます。読み終えていただければ、ご自身にFBARの申告義務があるかどうかを判断し、次に取るべき行動が明確になるかと思います。

1. FBARとは?申告義務や申告方法を理解する

FBARは実務上「エフバー」と呼ばれることが多いです。このセクションでは、FBARの概要と申告義務が生じる条件を先に押さえ、その上で具体的な対象者・対象口座・申告手続きの順に解説していきたいと思います。

FBARの正式名称と目的

FBARとは、Report of Foreign Bank and Financial Accounts(外国銀行金融口座レポート)の略称です。現在の正式なフォーム名はFinCEN Form 114といいます。

FBARの提出先はIRS(米国内国歳入庁)ではなく、米国財務省の一部門であるFinCEN(金融犯罪取締執行ネットワーク)です。FBARの申告手続きは会計事務所・税理士事務所が申告を代行してくれることが多いため、この点は多くの方が誤解されている点かと思います。

FBARの目的は、資金洗浄やテロ資金供与、脱税などの金融犯罪を防止するために、米国外に保有する金融口座(= 海外資産)をアメリカ当局に開示させることにあります。つまり、FBARは税金の申告書ではなく、あくまでも情報開示のための報告書とご理解いただければ良いかと思います。そのため、FBARを提出したからといって、それによって追加の税金が発生するわけではありません。

アメリカ FBARの申告義務が生じる条件

まず結論から申し上げると、以下の2つの条件を両方満たす場合にFBARの申告義務が生じます。

  • 「US Person」であること:具体的には、米国法人、米国市民権の保有者、米国永住権(グリーンカード)保持者、税法上の米国居住者(Resident Alien)などが対象。
  • 海外にある金融口座(銀行口座、証券口座など)の合計残高が年間で一度でも1万ドルを超えたことすべての海外口座残高を合算して判定する点に注意

重要なのは、「年末の残高」ではなく「年間のMax残高」で判定する点です。たとえば、年の途中に給与の振込などで合計残高が一時的に1万ドルを超えた後、年末には9,000ドルに戻っていたとしても、その年のFBAR申告義務は発生します。

もう一つの重要な点として、たとえ米国外に住んでいても申告義務があるという点に注意が必要です。例えば米国籍やグリーンカードを保持したまま日本に帰国された場合においても、上記の2つの条件を満たす限りはFBARの申告義務が発生します。

なお、外貨建て口座については年度末時点の為替レートで米ドルに換算して合算します。FBARの換算レートについては、米国財務省の為替レート報告基準を用いる必要があります。例えば、2025年に使用するレートは156.61円/ドルになります。以下に公式のソースを載せておきますので、参考にしていただければと思います。

最後に、特に円高が進んでいる局面では日本円の口座残高が思いのほか基準額($10,000)を超えやすくなる点にも注意が必要です。

FBARで申告が必要な口座の種類

「海外金融口座」と聞くと特別なものを想像するかもしれませんが、米国外の金融機関に保有する一般的な口座が対象になります。申告対象となる主な口座は以下の通りです。

  • 銀行口座:普通預金・定期預金・当座預金・財形貯蓄など
  • 証券口座:株式・債券・投資信託などの保有口座
  • その他の投資口座:商品先物・オプション口座など
  • 確定拠出型・確定給付型の私的年金口座
  • 生命保険口座

なお、日本の国民年金・厚生年金などの社会保険はFBARの対象外です。また、口座に預け入れしていない状態で直接保有する株式や外貨現金、不動産なども対象外となります。

FBARの申告方法と期限

FBARはFinCENが運営するBSA E-Filing Systemからオンラインで電子提出します。原則、書面での提出は認められていません。

申告期限は暦年の翌年4月15日(例:2025年度の申告は2026年4月15日が期限)ですが、もし期限に間に合わなかった場合は自動的に10月15日まで延長されることになります(この場合の延長申請の手続き等は不要です)。


FBARへの対応は、会社設立後に継続的に発生する当局への報告義務の一つです。設立から運営開始までに把握すべき手順の全体像については、以下の記事もあわせて参考にしていただければと思います。

2. FBARを怠るとどうなる?

実際のところ、FBARの申告を何年もしてこなかったというケースが少なくないです。この場合にはペナルティが発生することになりますが、故意だったのか / 故意ではなかったのかによってペナルティの重さが大きく変わりますので、このセクションで詳細をご説明します。

単純にFBARの申告義務を「知らなかった」ケース(= 故意ではないケース)

「FBARの申告義務を知らなかった」という故意ではない違反の場合でも、残念ながらペナルティの対象になってしまいます。

この場合の申告漏れに対するペナルティは、2025年時点で1フォームあたり$16,536(インフレ調整により毎年変動)と定められています。基本的に1年に1つのフォームを出すことになりますので、複数年にわたって申告していなかった場合にはこの金額が年数分重なることになります。

FBARの申告義務を知っていながら申告しなかったケース(= 故意のケース)

FBARの申告義務があると知りながら意図的に申告しなかった場合には、ペナルティが格段に重くなってしまいます。この場合は通常のペナルティに加え、(稀なケースではありますが)刑事罰も課される可能性が出てきます。

  • ペナルティ:未申告口座の残高の50% または $165,353(2025年時点)のいずれか大きい方。「故意ではないケース」よりも桁が1つ増えている点に注意
  • 刑事罰:最大25万ドルの罰金または5年以下の禁固刑(または両方)

「口座の動きを意図的に隠していた」「申告義務を知りながら無視していた」と当局に判断された場合、この故意のカテゴリーに分類されてしまいます。実務上、当局は口座の入出金履歴や本人の申述内容から故意性を判断することになります。「たまたま忘れていた」という言い訳が通じないケースもありますので、慎重な対応が必要になります。

3. 申告漏れに気づいたときの対処法

過去の申告漏れに気づいた場合でも、IRSから通知が来る前に対応することでペナルティが大幅に軽減または免除される可能性があります。主な救済手続きは以下のとおりです。

  1. FBAR未提出手続き(Delinquent FBAR Procedures):過去の税務申告は正しく申告したが、FBARの提出のみを忘れていたという場合に利用可能です。手続きとしては、遅延理由の説明文を添えて過去分のFBARをFinCENへ提出します。この場合、過去の税金を正しく納付しており、税務調査を受けていない場合にはペナルティが課されないことになっています。
  2. ストリームラインド・ファイリング(Streamlined Filing):FBARの申告漏れに加え、税務申告の申告漏れもあったがいずれも故意ではなかった(= ルールや申告義務を知らなかった)場合に利用可能です。手続きとしては、「申告漏れが故意ではなかった」ことを宣誓するためのフォーム(米国外の居住者の場合はForm 14653 / 米国国内の居住者の場合はForm 14654)と直近3年分のタックスリターンをIRSに提出し、過去6年分のFBARをFinCENに提出することで対応します。なお、米国外居住者の場合はペナルティが免除されますが、米国内居住者には対象期間中の金融資産最高残高の5%がペナルティとして課せられます。

4. FATCAとの違いについて

FBARとFATCAはどちらも「米国外の金融資産を報告する制度」ですが、目的・提出先・対象範囲・金額基準がすべて異なります。このセクションでは、混同しやすい2つの制度の違いについてご紹介したいと思います。

FATCAとは何か?制度の目的と仕組み

FATCAとは、Foreign Account Tax Compliance Act(外国口座税務コンプライアンス法)の略称になります。2010年に成立したこの法律に基づき、米国市民権の保有者、米国永住権(グリーンカード)保持者、税法上の米国居住者(Resident Alien)は海外金融資産をForm 8938を用いてIRSに報告する義務を負います。

なお、FBARがマネーロンダリングなどの金融犯罪防止を目的とするのに対し、FATCAは課税逃れの防止と税収の確保を目的とした制度です。そのためFATCA(Form 8938)はIRSへ提出する必要があるという点でも、FATCAとは異なります(FATCAの提出先はFinCEN)。

FATCA(Form 8938)の申告基準と対象資産

Form 8938の申告義務が生じる金額基準は、FBARの申告基準よりも高く設定されています。また、申告ステータスや居住地によって基準額が変わりますので、個々の状況・税務上のステータスに応じて判断する必要があります。

  • 単身申告者(米国内居住):年末残高が5万ドル超、または年間中に7万5,000ドル超
  • 夫婦合算申告者(米国内居住):年末残高が10万ドル超、または年間中に15万ドル超
  • 米国外の居住者:それぞれ、上記基準の4倍(例:単身申告者であれば年末残高20万ドル超、または年間中に30万ドル超)

対象となる資産の範囲もFBARより広く、FBARの対象となる銀行口座や証券口座などに加え、納税者が直接保有する海外法人の株式やパートナーシップの持分なども含まれます

なお、提出方法はFBARとは異なり、Form 8938を確定申告書(Form 1040)に添付して提出します。FBARのように独立したオンラインシステムへの提出は必要ありません。

FBARとFATCAは両方提出が必要なことも多い

重要な点として、FBARとFATCAは「どちらか一方を選ぶ」ものではありません。両方の申告基準を満たしている場合は、両方を提出する義務があります。例えば、アメリカ国内に在住し、日本に合計10万ドルを超える金融口座を保有している単身の納税者は、FBARもForm 8938も申告対象になります。

一方、残高が1万ドルを超えていてもForm 8938の基準額(たとえば単身者の5万ドル)を下回っていれば、FBARのみが必要でForm 8938は不要というケースもございます。それぞれの基準と対象資産の範囲が異なるため、毎年個別に確認することをおすすめします。

まとめ

この記事では、FBARの基本的な仕組みから申告方法、申告を怠った場合の罰金のルール、そして「知らなかった」場合の対処法までを解説してきました。

以下、この記事の要点を整理しておきます。

FBARとFATCA:アメリカの海外口座申告義務 早わかり比較
比較項目 FBAR(FinCEN Form 114) FATCA(Form 8938)
提出先 FinCEN(財務省 金融犯罪取締執行ネットワーク) IRS(米国内国歳入庁)
毎年のタックスリターンに添付
申告義務者 US Person
(米国法人・米国市民・グリーンカード保持者・
税法上の居住者など)
US Person
(FBARとほぼ同様)
申告対象となる
残高基準
年間最高残高が
合計
$10,000超で申告義務発生
残高が$50,000を超えたら要確認
(居住地やステータスによって基準額が異なる)
残高の判定方法 年末残高ではなく
年間中の最高残高
で判定
※一時的な超過でも申告義務が発生
年末残高と年間最高残高の両方
申告期限 翌年4月15日
(自動延長で10月15日まで)
※延長申請は不要
タックスリターンと同じ期限
(個人の場合、通常4月15日)
申告方法 BSA E-Filing Systemより
電子提出のみ(原則、書面不可)
タックスリターンに
Form 8938を添付
申告の性質 情報開示レポート
提出しても追加課税は発生しない
税務申告書の一部
提出しても追加課税は発生しない

この記事が、FBARやFATCAの申告方法や救済手続きについて疑問に思う方の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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