カリフォルニア州の最低賃金 | 開業前に知っておくべきCA州固有のルールやTip Creditの有無を会計士が解説

2026.05.01
会社設立・起業

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「カリフォルニアで飲食店を開業したいけど、従業員を雇ったら最低でも月いくらかかるのか?」
「州と市で最低賃金が異なると聞いたが、自分のお店にはどちらが適用されるのか?」

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。カリフォルニア州の最低賃金は、単純に「いくら」と一言で言い切れないほど複雑な構造になっています。これは、州全体で定める最低賃金に加えてロサンゼルス(Los Angeles)市やサンフランシスコ(San Francisco)市などの市が定める最低賃金が存在する上、さらにそれぞれで業種別の基準まで存在するためです。

この記事では、カリフォルニア州の最低賃金や主要都市別の最低賃金レート、Tip Credit(チップ・クレジット)の有無といったCA州ならではのポイントを中心に解説していきたいと思います。特に飲食・ホスピタリティ業界で事業を展開されている方や、今後カリフォルニアでの採用を検討されている方の助けになれば幸いです。

なお、カリフォルニア州以外の最低賃金もあわせて確認されたい方はニューヨーク州・ハワイ州を含む主要州の比較記事もご参照ください。

1. カリフォルニア州の最低賃金

まずはカリフォルニア州全体の最低賃金を確認したいと思います。カリフォルニア州の最低賃金は、雇用主が守らなければならない「最低限の賃金レート」と理解しておくと良いかと思います。あくまで「最低限これ以上払わなければならない」という必要条件であり、実際に適用される賃金はお店の所在する市の条例や業種によってさらに高くなる場合があります。つまり、州法のレートを下回ることは違法ですが、それを満たしているだけで十分とは限らない点に注意が必要です。

2026年現在のカリフォルニア州の最低賃金

2026年1月1日より、カリフォルニア州の最低賃金は時給$16.90となっています。ポイントは、企業規模に関係なく州内の全ての雇用主にこの最低賃金が適用される点です。かつては従業員数26人以上と25人以下で異なるレートが設定されていた時期もありましたが、現在はその区別がなくなっています。小さな飲食店もチェーンのカフェも、同じ最低賃金が適用されています。

最低賃金の引き上げに伴い、カリフォルニア州法上のExempt従業員(残業規定が免除される従業員)の最低年収も連動して引き上げられています。2026年は年収$70,304(月額$5,859)が基準となります。給与がこの水準を下回る場合、Exempt区分を維持できなくなる可能性がありますので注意が必要です。

なお、カリフォルニア州の最低賃金は毎年1月1日に改定されています。調整額はその年の消費者物価指数の上昇率に基づいて決まるため、毎年夏ごろに翌年のレートが公表されるサイクルになっています。経営計画を立てる際には、毎年の秋口に翌年のレートを確認されると良いかと思います。

日本円で見るとどのくらいの水準か

2026年の為替レートをおおよそ1ドル=150円として計算した場合、カリフォルニア州の最低賃金$16.90は時給約2,535円に相当します。昨今の円安影響を考慮して1ドル=120円として計算しても、最低賃金$16.90は時給2,028円に相当します。単純に日本の最低賃金(2025年の全国加重平均1,121円)と比較するとおよそ2倍前後の開きがあると言えます。

2. 州と市の最低賃金が異なる場合、どちらが適用されるか

州法で定められている最低賃金はレートはあくまで「最低限守る必要のある賃金」です。ロサンゼルス市やサンフランシスコ市など、州より高いレートを設定しているローカルの条例が存在する場合は、より高い方のレート(最低賃金)が適用される点に注意が必要です。

主要都市の定める最低賃金(2026年)

以下は、日系コミュニティや日系ビジネスが多く集まるカリフォルニア州の主要都市の最低賃金をまとめたものです。2026年4月時点の情報を参考にしていますが、業種別の最低賃金や改定時期は都市によって異なるため、必ず各市の公式情報をご確認ください。

カリフォルニア州の定める最低賃金と比較してわかる通り、多くの大都市では州の定める最低賃金を上回る賃金を設定しています。そのため、これらの地域に勤務する従業員を持つ場合は(州の定める最低賃金ではなく)各地域の定める最低賃金を満たす必要があります

都市・地域 最新の最低賃金
(2026年4月時点)
備考
カリフォルニア州全体 $16.90/時 2026年1月1日より
ロサンゼルス市 $18.42/時 2026年7月1日より
サンフランシスコ市 $19.61/時 2026年7月1日より
サンノゼ市 $18.45/時 毎年1月1日に改定
サンディエゴ市 $17.75/時 毎年1月1日に改定
バークレー市 $19.18/時 毎年7月1日に改定

最低賃金の適用レートは「どこで働くか」で決まる

適用されるレートは原則として従業員が実際に勤務する場所(Work Site)の所在地によって決まります。たとえば、ロサンゼルス市内にお店を構えていれば、スタッフの勤務先がロサンゼルス市内である以上は「ロサンゼルス市のレート」が適用されます。

これはリモートで従業員が働く場合にも同じで、たとえ本社がロサンゼルス市外にあったとしても、従業員がロサンゼルス市の自宅から勤務する場合には原則として「ロサンゼルス市のレート」を適用する必要があります。

3. 「時給20ドル」ファーストフード業界の特別レート

カリフォルニア州の最低賃金を調べると「時給20ドル」という話を耳にした方もいるかもしれません。結論として、これは州全体の最低賃金ではなく特定の業種(ファーストフード業界)にのみ適用される特別レートとなっています。2024年4月に施行されたカリフォルニア州の法律により、全米に60店舗以上を展開するファーストフードチェーンで働く従業員には「時給20ドル」という最低賃金が適用されています。2026年現在もこのレートが基準となっており、今後も物価連動で段階的に引き上げられる見通しです。

なお、この規定が適用されるのは全米に60店舗以上を展開するファーストフードチェーンです。アメリカでビジネスを始めたばかりの飲食店や個人経営のお店は基本的に適用対象外となっています。

4. Tip Credit(チップ・クレジット)は存在しない

飲食業界の経営者の方にとって特に重要なのが、Tip Credit(チップ・クレジット)の有無かと思います。

結論として、カリフォルニア州はTip Creditを認めていません。これはCA州特有の保護規定であり、どれだけ多くのチップを受け取っている従業員であっても雇用主は最低賃金を全額支払う義務があります。

たとえば、ロサンゼルス市のレストランでサーバーの従業員が(1時間のシフトで)$50のチップを受け取った場合でも、雇用主はロサンゼルス市の最低賃金を別途支払わなければなりません。

ニューヨークなどの他州で雇用の経験がある方ですと、「カリフォルニア州でもTip Creditを使える」と考える方は少なくないかと思います。この点、人件費の計画を立てる際には注意が必要です。

カリフォルニア州 連邦法(参考) ニューヨーク州(参考)
Tip Creditの適用 なし あり あり
雇用主が支払うべき最低現金賃金(Cash Wage) 最低賃金の全額 最低賃金からTip Credit分を差引いた額 最低賃金からTip Credit分を差引いた額
チップの扱い 賃金と無関係に従業員が得るべき
追加収入と考えられている
従業員の賃金の一部として算入可能 従業員の賃金の一部として算入可能

まとめ

この記事では、カリフォルニア州の最低賃金や主要都市別の最低賃金レート、Tip Credit(チップ・クレジット)の有無といったCA州ならではのポイントを解説してきました。

カリフォルニア州での開業前に知っておくべき最低賃金まとめ(2026年)
業種・事業形態 適用される最低賃金 Tip Credit 注意ポイント
一般飲食店・カフェ
小売店・美容院
ネイルサロン など
CA州全体
$16.90 /時
❌ 使用不可
CA州はTip Creditを認めていない。チップに関係なくフルの最低賃金を支払う義務あり
企業規模(人数)による差はなし。すべての雇用主に同レートが適用される
ロサンゼルス市
$18.42 /時
州と市のレートが異なる場合は常に高い方を適用。
サンフランシスコ市
$19.61 /時
州と市のレートが異なる場合は常に高い方を適用。
サンノゼ市
$18.45 /時
改定時期は都市によって異なる(1月・7月・10月など)。雇用開始前に各市の公式情報を確認しておく
サンディエゴ市
$17.75 /時
ファーストフード
チェーン(特例)
CA州全体
$20.00 /時
❌ 使用不可 全米60店舗以上のチェーンが対象。一般的な個人経営の飲食店は対象外。

※ 各都市の最低賃金は改定時期が異なります。雇用開始前に必ず各市・カリフォルニア州労働局(DIR)の公式情報をご確認ください。本表は2026年時点の参考情報です。

この記事が、カリフォルニアでの開業や人件費の見直しを検討している経営者の方々の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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