アメリカでの主要州別の最低賃金 | 開業前に知っておくべき最低賃金の仕組みやTip Creditのルールを会計士が解説

2026.05.03
会社設立・起業

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「アメリカで飲食店やサロンを開きたいけれど、州によって人件費はどれくらい違うのか?」
「最低賃金が高い州と低い州では、実際のコスト差はどのくらいになるのか?」

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。アメリカの最低賃金は州ごとに大きく異なり、2026年時点では時給7ドルから時給17ドル程度までと州によってかなりの幅があります。飲食店・小売店・美容サロンなど時給制スタッフやアルバイトの方を多く雇う業種にとって、どの州で開業するかというのはとても重要な意思決定になるかと思います。

この記事では、日本人・日系人が多く集まるカリフォルニア州・ニューヨーク州・ハワイ州を中心に、2026年時点の州別最低賃金やTip Creditの有無など、開業前に押さえておきたいポイントを整理していきたいと思います。

1. 最低賃金の基本的な仕組み

アメリカの最低賃金は「連邦(Federal)」「州(State)」「市・郡(City / County)」のそれぞれで独立して設定されており、雇用主は従業員の勤務地(Work Site)に応じて最も高い水準の最低賃金を適用する義務があります。

まず、アメリカには連邦政府が定める最低賃金(Federal Minimum Wage)があり、2026年現在も時給$7.25で据え置かれています。この金額は2009年7月24日以来、15年以上変更されていません。ただし、この連邦最低賃金はあくまで「全国一律の下限」であり、各州がそれより高い最低賃金(State Minimum Wage)を独自に定めることができます。もし州の定める最低賃金が連邦の最低賃金(7.25ドル)を上回る場合、雇用主は(従業員にとって有利な)州の最低賃金の水準に従う義務があります。さらには、州の水準を上回る最低賃金を設定している市・郡もあり(カリフォルニア州 ロサンゼルス市など)、その場合についても雇用主は従業員にとって最も有利な最低賃金の水準に従う義務があります。

つまり、ビジネスを行う場所や従業員の勤務地によって適用される最低賃金は異なるため、開業・採用の前に必ず勤務地ごとの最低賃金を確認することが重要になります。

なお、近年では多くの州がCPI(消費者物価指数)などの経済指数に連動して最低賃金を改定する仕組みを採用しています。2026年1月1日には全米50州のうち19州が一斉に最低賃金を引き上げており、引き上げ率は2.4%から14.3%まで州によって異なっています。

アメリカでの開業を検討している方は、「現時点の水準」だけでなく「毎年の改定スケジュール」も確認しておくことをおすすめします。特にインフレ率に連動して最低賃金が改定される州では、事業計画の人件費欄を毎年見直す前提で試算されることをおすすめします。

2. 州別の最低賃金一覧

まず最初に、最も正確かつ信頼できる情報源としてアメリカ合衆国労働省(U.S. Department of Labor)が公式に発表している州別の最低賃金一覧ページをご紹介します。

見方としては、上のリンク先へ飛んでいただくと以下のような画像が表示されるはずです。「Select A State」で見たい州を選ぶことで最新の情報を閲覧することができます。また、地図にカーソルを当てることで各州の最低賃金を素早く確認することも可能です。

公式サイトのスクリーンショット・州別の最低賃金の最新情報が簡単に閲覧可能
State Minimum Wage Laws – U.S. Department of Labor

なお、最低賃金の高い主要な州だけを簡単に確認したい方向けに、以下では主要州の最低賃金(2026年1月時点)をまとめています。数値は2026年1月時点の情報を基にしており、年内に引き上げが予定されている州もございます。そのため、開業前には各州の労働局(Department of Labor)にて最新情報を確認することをおすすめします。

最低賃金が高い主な州一覧

州・地域 2026年1月時点の最低賃金(時給)
ワシントンDC $17.95
ワシントン州 $17.13
ニューヨーク州(都心部) $17.00
コネティカット州 $16.94
カリフォルニア州 $16.90
ロードアイランド州 $16.00
ハワイ州 $16.00
ニュージャージー州 $15.92
イリノイ州 $15.00
フロリダ州 $14.00

3. 主要な州におけるTip Creditの有無

飲食店やサービス業など、チップ文化のある業態を検討している方にとって「Tip Credit(チップ・クレジット)」の有無や適用できる金額は重要になります。この制度は適切に活用すれば人件費を抑えられるケースもありますが、所定の要件を満たさないと想定外のペナルティが発生する場合もあるため正しく理解しておくことが重要です。

Tip Credit(チップ・クレジット)とは何か

Tip Creditとは、チップを受け取る職種(Tipped Workers)に対して雇用主がチップ収入を賃金の一部として算入できる制度です。つまり、雇用主はチップ収入の一部を賃金として見なすことができるため、チップ収入の分だけ現金での支払い賃金(Cash Wage)を最低賃金より低く抑えることが可能です。

日本人・日系人が多く暮らす州のTip Credit(チップ・クレジット)比較

以下に、日本人・日系人が多く暮らす主な3州のTip Creditを比較表にまとめました。Tip Creditが適用できるニューヨーク州・ハワイ州では、雇用主が直接負担する現金賃金(Cash Wage)が最低賃金より小さくなっていることが確認できます。

州の最低賃金 チップクレジット
(Tip Credit)
雇用主の負担する現金賃金
(Cash Wage)
ニューヨーク州
(都心部・飲食店の場合)
$17.00 $5.65 $11.35
カリフォルニア州 $16.90 Tip Creditの制度なし $16.90
ハワイ州 $16.00 $1.25 $14.75

なお、カリフォルニア州ではTip Creditを認めていません。たとえばロサンゼルス市のレストランでサーバーのアルバイト従業員が(1時間のシフトで)$50のチップを受け取った場合でも、雇用主はロサンゼルス市の最低賃金を全額支払わなければなりません。

4. 日本人・日系人が多く集まる3州の特徴

ここでは、日本人や日系人が多く暮らす「カリフォルニア州」「ニューヨーク州」「ハワイ州」の3州について、最低賃金や税制、ビジネス環境をあわせた特徴をご紹介します。

カリフォルニア州(CA)

最低賃金は$16.90と全米トップクラスで、Tip Creditがないため飲食業の人件費は高くなりやすい傾向にあります。州の法人所得税は8.84%で比較的高くなっており、さらには収益が赤字であったとしてもMinimum Franchise Tax $800の支払いが必要になります。日系コミュニティが充実しており、顧客基盤を作りやすい反面、人件費を含めたトータルコストが高いことを織り込んだ事業計画が不可欠になります。なおロサンゼルス市やサンノゼ市などの主要都市では、市レベルの最低賃金が州の定める最低賃金を上回る点にも注意が必要です。

ニューヨーク州(NY)

ニューヨーク市(都心部)とロングアイランドおよびウェストチェスター郡の最低賃金は17ドルで、その他エリアの最低賃金は16ドルとなっています。Tip Creditの制度が存在するため飲食業では雇用主が直接負担する現金賃金(Cash Wage)を下げられる場合がありますが、最低賃金のルールは複雑になっており、Food Service Worker・Service Employeeなど職種ごとに異なるレートが適用される点に注意が必要です。また、都心部のマンハッタンやブルックリンを含むニューヨーク市では州税に加えてCity Income Tax(市に支払う所得税)も存在するため、法人・個人どちらの税負担も比較的大きくなる傾向にあります。

ハワイ州(HI)

2026年1月時点の最低賃金は$16となっていますが、2028年に$18に引き上げられる予定です。観光客向けのホスピタリティ産業が中心で、日本語対応の需要が大きい市場といえます。ただし、物価・家賃・輸送コストが全米でも最高水準にあり、最低賃金だけでは測れない生活コスト・採用コストの高さを念頭に置く必要があるかと思います。

まとめ

この記事では、日本人・日系人が多く集まるカリフォルニア州・ニューヨーク州・ハワイ州を中心に、2026年時点の州別最低賃金やTip Creditの有無など、開業前に押さえておきたいポイントを解説してきました。

  • アメリカの最低賃金は「連邦・州・市/郡」の複数レイヤーで構成されており、雇用主は従業員の勤務地に応じて最も高い水準を適用する義務がある
  • Tip Creditの制度は州によって大きく異なり、ニューヨーク州では$5.65、ハワイ州では$1.25が認められている一方、カリフォルニア州では認められていない
  • 最低賃金はあくまで法的な下限であり、実際の採用市場では市場(競合他社など)の賃金水準・人材不足の状況も踏まえた検討が必要になる

この記事が、アメリカでの開業や人件費の見直しを検討している経営者の方々の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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