ハワイの最低賃金 | 開業前に知っておくべきハワイ州固有の事情やTip Creditの有無を会計士が解説

2026.05.03
会社設立・起業

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

「ハワイで飲食店を開業したいけれど、スタッフの給与はいくら払えばいいの?」
「最低賃金は毎年上がっていると聞いたけれど、今年はいくらになったのか?」

こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。ハワイは「物価が高い」という認識は広く持たれていますが、実際の賃金コストとなると最低賃金だけでは語れない複雑な実態があります。

この記事では、ハワイ州の最低賃金や関連制度、そして雇用主が実際に負担するコストの全体像を整理していきたいと思います。

なお、ハワイ州以外の最低賃金もあわせて確認されたい方はニューヨーク州・カリフォルニア州を含む主要州の比較記事もご参照ください。

1. ハワイ州の最低賃金

2026年のハワイの最低賃金は時給$16となっています。なお、ハワイ州の最低賃金は2022年以降に段階的な引き上げが決定されています。以下の表が、ハワイ州労働産業関係局(DLIR: Department of Labor and Industrial Relations)が定める引き上げスケジュールです。

適用開始日 時給(最低賃金)
2022年10月1日 $12.00
2024年1月1日 $14.00
2026年1月1日 $16.00
2028年1月1日 $18.00

なお、ハワイ州では最低賃金未払いに対する罰則が強化されていますので注意が必要です。2025年の州議会で成立した「Act 115」により、賃金・労働時間に関する州法に違反した雇用主に対して(1つの違反ごとに)最低$500の罰金が科されることが決まっています。

日本円で見るとどのくらいの水準か

ハワイの最低賃金を日本円に換算した場合(1ドル=150円として計算)、2026年時点の最低賃金$16は時給2,400円に相当します。昨今の円安影響を考慮して1ドル=120円として計算しても、最低賃金$16は時給1,920円に相当します。単純に日本の最低賃金(2025年の全国加重平均1,121円)と比較するとおよそ2倍前後の開きがあると言えます。

ハワイの賃金水準を考える際の注意点

ハワイで採用を検討する際、最低賃金($16.00/時間)はあくまで法的な下限に過ぎません。一般に、実際の採用においては最低賃金以上の時給を提示しないと応募が集まらないケースがあるかと思います。そのため、人件費の見積もりは最低賃金ではなく、実際の市場水準を考慮した基準で行うことをおすすめします。

余談ですが、ハワイは島嶼という地理的制約から生活コストが全米でも最高水準にあり、本土からの移住者が集まりにくい一方、地元の若年層は進学・就職を機に本土へ流出する傾向が続いています。結果としてサービス業全般で慢性的な人材不足が常態化しており、賃金を引き上げなければ人が集まらない状況が続いているという背景があるようです。

2. Tip Creditは「条件付き」で存在する

飲食業界の経営者の方にとって特に重要なのが、Tip Credit(チップ・クレジット)の有無かと思います。

結論として、ハワイ州では一定の条件を満たす場合に限り、Tip Creditを使ってチップを受け取る従業員に対して最低賃金より低い現金賃金(Cash Wage)を支払うことが認められています。以下に、ハワイ州のTip Credit適用イメージを整理します。

項目 2026年
州最低賃金 $16.00/時
Tip Credit上限 $1.25/時(上限は固定)
最低Cash Wage(Tip Credit利用時) $14.75/時
チップが少ない日の補填義務 あり(差額を雇用主が負担)

重要なのは、ハワイ州のTip Creditは$1.25と非常に小さい点です。例えばニューヨーク州では$2〜$5程度のTip Creditが認められていますので、ハワイ州では事実上、Tip Creditによるコスト削減効果はほとんど期待できないと言って良いかと思います。

なお、仮に従業員のチップ収入が思っていたよりも少なく、現金賃金(Cash Wage)との合計がハワイ州の定める最低賃金に満たなかった場合、雇用主はその差額を補填する義務を負うことになりますので注意が必要です。

3. 雇用主が負担する賃金以外の主なコスト

最低賃金の時給額はあくまで従業員への支払い額であり、雇用主の実際のコストはそれより高くなります。アメリカでは Payroll Tax もしくは Employment Tax(給与税)と呼ばれ、これらの雇用主負担分や各種保険料を加算すると時給あたりの実質コストは大きく変わります。

以下に、Payroll Taxの中でも雇用主側で(一部または全額を)負担する必要のある項目をまとめました。

アメリカのPayroll Tax(給与税)項目まとめ
カテゴリー 項目 雇用主
負担
源泉徴収の義務 支払い先
FICA税
(日本の社会保険に相当)
Social Security Tax
社会保障税
IRS(連邦)
Medicare Tax
メディケア・タックス

IRS(連邦)
加入義務のある保険
(州による)
State Disability Insurance
州傷害保険

(州による)

(州による)
保険会社
Family Leave Insurance
家族休暇保険

(州による)

(州による)
保険会社
失業保険税 Federal Unemployment Tax
連邦失業保険税(FUTA)
なし
(全額を雇用主が負担)
IRS(連邦)
State Unemployment Tax
州失業保険税(SUTA)
なし
(全額を雇用主が負担)
各州政府

※ “✔” = 負担あり

Social Security Tax と MedicareTaxを合わせた FICA Tax(ファイカ・タックス)の雇用主負担は賃金の7.65%です。州によって加入義務のある保険料や失業保険税を含めると、雇用主の実質コストは支払い賃金の約1.1〜1.2倍程度になるケースが一般的と想定されます。

まとめ

この記事では、ハワイ州の最低賃金や関連制度、そして雇用主が実際に負担するコストの全体像を解説してきました。

以下に、ハワイで開業する前に知っておくべき人件費の全体像を整理しておきます。

ハワイで開業する前に知っておくべき人件費の全体像
確認すべきポイント 2026年〜(最新) 2028年〜(予定) 実務上の注意点
① ハワイ州の最低賃金 $16.00 / 時 $18.00 / 時 2025年Act 115により違反時は(1つの違反あたり)最低$500の民事罰。
② Tip Credit上限 $1.25 / 時(固定) $1.50 / 時(固定) 他州の$2〜$5台に比べ削減効果は小さい
③ 雇用主が支払うべき最低現金賃金
(Cash Wage)
$14.75 / 時
($16.00 – $1.25)
$16.50 / 時
($18.00 – $1.50)
事業計画上の
人件費試算
最低賃金では雇えないケースあり。
業種ごとの賃金水準を考慮して試算することを推奨
繁忙期・閑散期の季節変動も考慮。

※ 最低賃金はハワイ州DLIR(労働産業関係局)が定める引き上げスケジュールに基づく。

この記事が、ハワイでの開業や人件費の見直しを検討している経営者の方々の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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