「アメリカで法人を運営すると、どんな税金がかかるのだろうか?」
「日本とは税金の仕組みが違うと聞くが、何から理解すればよいのか?」
こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。アメリカの税制には日本と大きく異なる点がいくつかあります。例えば、連邦・州・地方という多層な構造であることに加え、Sales Tax(売上税)やProperty Tax(財産税)など日本には馴染みのない税金も存在しています。
この記事では、アメリカで法人を運営する際に関係する主な税金について、それぞれの概要とともに申告スケジュール(申告・納付期限)や会計処理の方法をご紹介できればと思います。アメリカ進出を検討している方や既にアメリカで法人を運営されている方にとって、法人税務の全体像を把握する出発点としてご活用いただければ幸いです。
アメリカでの法人運営にかかる税金の種類
アメリカの法人にかかってくる税金は、連邦(Federal)・州(State)・地方(Local)の3層構造となっています。そして、それぞれの層で課される税金の種類は異なり、法人所得税やSales Tax(売上税)、Property Tax(財産税)、Payroll Tax(給与税)などの複数の税金が組み合わさる形です。
以下、それぞれの税項目について概要や申告スケジュール、会計処理の方法を解説していきます。
1. 連邦レベルでの法人所得税(Federal Corporate Income Tax)
アメリカで事業を行う法人が最初に意識すべきなのが、連邦法人所得税(Federal Corporate Income Tax)です。S CorporationやLLCなどの一部の事業形態でパススルー課税を選択しない限り、アメリカ国内のいずれの法人も申告および納税を行う必要があります。
2026年時点での税率は一律 21%となっており、企業の税負担において比較的大きな割合を占めています。
連邦法人所得税の申告スケジュール
事業年度末(決算期末)から4か月後の15日が申告・納付期限です。たとえば2025年12月期の決算であれば、翌年2026年の4月15日が期限になります。日系企業によくある3月決算であれば、4ヶ月後の15日、つまり7月15日が期限になります。
1点だけ注意しておくべきなのが、6月決算法人の申告・納付期限です。上述のとおり、原則として決算期末から4ヶ月後の15日と覚えていただければ良いのですが、6月決算法人については例外があり、3ヶ月後の15日と規定されています。つまり、2025年6月期の決算であれば、同年の9月15日までに申告・納付を完了させる必要があります。
なお、上記の申告期限は延長することができます。実務上は延長申請と呼ばれ、延長を申請することで6か月の延長が可能となっています。ただし、納税そのものの期限は延長できない点に注意が必要です。
「申告内容が固まらないと、税金をいくら払う必要があるかもわからないのでは?」と思われるかもしれませんが、実務上は、延長申請の段階で見込みの納税金額を計算し、計算された納税金額にいくらかの「バッファー(上乗せ)」を行った上で納税するパターンが多くなっています
もし仮に延長申請時に納付した金額が実際の税金額を下回った場合には、延滞利息やペナルティが課されてしまいますので、延長申請時に少し余分に支払っておくことでペナルティや延滞利息を回避するという意図がございます。
連邦法人所得税の一般的な会計処理の方法
申告・納付時の主な会計処理は大きく分けて3つに分けられます。具体的には以下の通りです。
期末決算時
決算時に当期の法人税費用を見積もり、未払税金費用として負債計上します。
実際に納付する場合
申告内容が固まり、実際に納付を行うタイミングで未払いを解消します。
見込み納付する場合(延長申請時)
延長申請時に概算の税金を納付する場合や年度内で予定納税(Estimated Tax Payment)を行う場合には、以下のような仕訳を計上することが一般的です。
上記はあくまで代表的なケースの一例であり、実際には事業形態や申告状況によって処理方法が異なる場合があります。個別の状況に応じた正確な会計処理については会計士にご相談されることをおすすめします。
2. 州レベルでの法人所得税(State Corporate Income Tax)
連邦法人所得税に加えて、多くの州では独自の州法人所得税(State Corporate Income Tax)が課されます。税率や税額の計算方法は州ごとに異なるため、どの州で事業を行うかによって税負担が大きく変わってきます。
ご参考に、2026年時点での主な州の最高税率(法人所得税)は以下のとおりです。あくまで最高税率ですので、(事業内容や事業規模に応じて)実際に適用される税率は最高税率よりも低くなる可能性があります。
- ミネソタ州:9.8%
- ニュージャージー州:11.5%
- イリノイ州:9.5%
- カリフォルニア州:8.84%
- ニューヨーク州:7.25%
- フロリダ州:5.5%
- ノースカロライナ州:2%
- テキサス州 / ネバダ州 / ワシントン州:州レベルでの法人所得税なし
なお、州レベルの法人所得税に加えて、ニューヨーク市のように一部の都市・郡が独自の法人所得税を課しているケースもあります。実務上はLocal Corporate Income Tax(ローカルレベルでの法人所得税)と総称されますが、事業を行う地域によってはこのローカルレベルの申告・納付も必要となるため、申告義務の要件を確認しておく必要があります。
州法人所得税の申告スケジュール
一般的には連邦法人所得税の申告・納付期限に合わせて設定されている州が多く、多くの場合は事業年度末(決算期末)から3〜4ヶ月以内が目安となります。ただし、延長申請の可否や延長後の申告期限も州によって異なるため、各州のルールを事前に確認されることをおすすめします。
州法人所得税の一般的な会計処理の方法
州法人所得税の会計処理については連邦法人所得税の対応と同様ですので、割愛させていただきます。
3. Sales Tax(売上税)
アメリカには、日本の消費税に対応する税金や付加価値税(VAT:Value Added Tax)は存在しません。その代わりにSales Tax(売上税)と呼ばれる州・地方レベルの税金が設けられています。
Sales Tax(セールスタックス)は、商品やサービスを購入した最終消費者に課される税金の一つです。日本の消費税に近い概念ですが、主には「最終消費者への販売時(小売)にのみ課税される」という点で大きな違いがあります。
Sales Taxの申告スケジュール
申告頻度は州が事業者の売上規模に応じて指定します。一般的な区分は以下の通りです。
- 月次(Monthly):売上が大きい事業者に適用されることが多い
- 四半期ごと(Quarterly):中規模事業者に多い。いわゆる中小規模の会社にはQuarterlyが適用されることが多い印象
- 年次(Annually):売上が小規模な事業者に適用されることがある
申告頻度は州から通知が届きます。指定された頻度を必ず守り、売上がなかった期間も「ゼロ申告(= 販売がなかったことの申告)」を忘れずに行うことが大切です。
Sales Taxの一般的な会計処理の方法
販売者側の会計処理(最終消費者への販売)
エンドユーザーに商品を$1,500で販売し、Sales Tax 10%($150)を徴収した場合の仕訳は以下のようになります。
(借方)売掛金 $1,650 / (貸方)売上 $1,500
未払売上税(Sales Tax Payable)$150
ここで重要なのは、Sales Taxは「売上」ではなく「負債」として、つまり「預り金(= 未払売上税)」として区別して計上するという点です。この預かり金は、後日、州への納税時に「(借方)未払売上税 $150 / (貸方)現金 $150」で消し込むことになります。
購入者側の会計処理(最終消費者として購入した場合)
日本の消費税と異なり、購入者側はSales Taxを別建てで計上する必要はありません。Sales Taxを含む合計金額をそのまま資産・費用として計上すれば問題ありません。
(借方)費用(または資産勘定) $1,650 / (貸方)未払金 $1,650
これは日本の税込経理に近いイメージです。仕入税額控除の仕組みがないため、Sales Taxは原価・費用に含まれて処理されることになります。
Sales TaxとUse Tax(使用税)の違いにも要注意
Sales Taxに関連して「Use Tax(使用税)」という概念もあります。Use Taxとは、Sales Taxを徴収されなかった商品を他州から購入して自州で使用・消費する場合に、購入者が自ら申告・納税する税金です。例えば、オンライン購入などで売り手がSales Taxを徴収しなかったケースで発生します。特に、他州で多額の物品などの購入をした場合で、かつSales Taxが徴収されなかったケースでは注意が必要です。
Sales Tax(売上税)のより詳しい全体像については、以下の記事でご紹介しています。課税対象となる品目やSales Taxの重要概念であるNexus(ネクサス)の判定、申告方法などを解説していますので、ご参考になれば幸いです。
4. 従業員を雇用する場合にかかる税金(Payroll Tax / Employment Tax)
従業員を雇用する法人には、給与に関連した複数の源泉徴収義務および会社負担分の納税義務が発生します。この「従業員を雇用する場合にかかる税金」は、総称して「Payroll Tax」または「Employment Tax」と呼ばれています。
アメリカのPayroll Tax(ペイロールタックス)には主に以下のような種類があります。
- 連邦個人所得税の源泉徴収(Federal Income Tax Withholding):従業員の給与から連邦個人所得税を差し引き、IRSに納付します。
- 州所得税の源泉徴収(State Income Tax Withholding):従業員の給与から州の個人所得税を差し引き、それぞれの州に納付します。
- 市・郡の所得税の源泉徴収(Local Income Tax Withholding):従業員の給与から市・郡の個人所得税を差し引き、それぞれの地域に納付します。
- 社会保障税(Social Security Tax):FICA Taxの一部です。従業員の給与から従業員負担分を差し引き、雇用主負担分と合わせて納付します。
- メディケア税(Medicare Tax):FICA Taxの一部です。従業員の給与から従業員負担分を差し引き、雇用主負担分と合わせて納付します。
- 連邦失業保険税(FUTA):全額を雇用主が負担します。連邦政府に納付します。
- 州失業保険税(SUTA / SUI):連邦失業保険税(FUTA)と同じく、原則として全額を雇用主が負担します。各州政府に納付します。
アメリカに「住民税」はあるのか?
アメリカには日本の「住民税」に相当する税金は厳密には存在しません。一方で、州・市(郡)レベルで個人に課される個人所得税が「住民税」に近い役割を担っています。従業員の居住する州・市(郡)や勤務する地域によっては、個人の所得税として源泉徴収義務が生じるとご理解いただければ良いかと思います。
Payroll Tax(給与税)の各税目の詳細や具体的な実務上のポイントについては、以下の記事でより詳しく解説していますので、あわせて参考にしていただければと思います。
5. Property Tax(財産税)
アメリカのProperty Tax(財産税)は州・地方レベルで課される税金です。州・郡によってルールが大きく異なりますが、大きく以下の2つに分類されます。
- Real Property Tax(不動産税):その名の通り、不動産(土地・建物)に課税される税金です。地域により異なるのですが、通常は年に1~2回の不動産税の支払いが必要になります。
- Personal Property Tax(動産税):事業に使用する「動産」に課税される税金です。主に、機械や設備、備品などが対象になります。地域によっては専用のフォームとともに自己申告する必要があります。
Real Property Taxの申告スケジュールと注意点
Real Property Tax(不動産税)については、基本的に自己申告は不要です。郡のAssessor’s Officeというところが不動産を評価し、その所有者に対して税額通知書(Tax Bill)を送付します。通常は年に1〜2回の支払いが必要で、支払期限を過ぎると延滞税が発生してしまいます。
なお、もし税額通知書が届かなかった場合でも納税義務は消滅しません。物件を購入した初年度や住所変更後は、通知書の到達確認を必ず行いましょう。
特に、賃貸用に購入した不動産の場合には「物件管理会社」を通じて賃貸の管理等をされる方が多いと思います。この場合には、自身ではなく物件管理会社に税額通知書が郵送され、支払いも物件管理会社が代行することが一般的です。稀にですが、物件管理会社での支払いが漏れるということもありますので、支払いの有無については管理会社へ確認されることをおすすめします。
Personal Property Taxの申告スケジュールと注意点
通常、Personal Property Tax(動産税)は毎年自己申告が必要になります。対象となる資産の内容や取得した金額、取得した年度などを記載した申告書(州ごとに異なります)を毎年1月〜4月頃までに当局へ提出します(期限は州・郡により異なります)。
なお、申告を忘れても自治体側から通知が届かないことがあります。オフィスやスペースを借りているだけの企業であっても、社内の備品・設備(例:美容・ネイルサロンの高価な機器など)に対して課税されることがあるため注意が必要です。
6. Excise Tax(物品税)
Excise Tax(物品税)とは、特定の商品やサービスに対して連邦・州・地方のそれぞれで課税される税金です。日本の「たばこ税」や「酒税」などの個別の品目にかかってくる消費税に近いイメージですが、消費税が消費者が負担する税金であるのに対して、Excise Taxは販売を行った事業者が負担する税金である点に大きな違いがあります(注:制度上は事業者負担という建て付けですが、消費者側に請求(転嫁)することが認められている州もあり、実質的に消費者が負担しているケースもあります)。
連邦レベルのExcise Tax(物品税)の主な課税対象は以下のとおりです。タバコやお酒、ガソリン以外については日常的にはあまり馴染みのないものが中心です。
- タバコ・アルコール飲料
- ガソリン・航空燃料などの燃料
- 銃器・弾薬
- 特定の化学物質・環境に負荷のかかる物質
- 航空・海運輸送サービス
Excise Taxの申告スケジュール
Excise Tax(物品税)の申告方法および要件は、課税を管轄する地域および対象となる物品・サービスによって多岐にわたります。具体例を挙げると以下の通りです。
- カリフォルニア州のアルコール飲料税の申告はオンラインで行う必要があり、納税期限は申告期間の翌月15日と定められています。
- ニューヨーク州でたばこを販売する卸売業者は、オンラインで四半期ごとの情報申告書(Informational Return)を四半期終了後の翌月20日までに提出する必要があります。
上記のように、課税の対象となる物品や管轄する地域によって申告方法やスケジュールが変わってきます。自社に必要なExcise Tax(物品税)の申告対象を特定するとともに、申告要件を個別に確認されることをおすすめします。
7. 州によって課されるその他の税金(州や事業内容・規模による)
Franchise Tax(フランチャイズ・タックス)
Franchise Tax(フランチャイズ・タックス)は州内で設立された企業や法人に課される税金で、実際のフランチャイズビジネスとは無関係です。カリフォルニア州やテキサス州、デラウェア州など多くの州で設けられており、一般に売上や資本金・資産をベースに計算される州が多いです(全法人に一律の料金を課している州もあります)。カリフォルニア州のように課税所得がゼロだったとしてもミニマムタックスとして課される場合があるため、注意が必要です。
申告・納付のスケジュールは州によって異なりますが、年1回の申告が一般的です。たとえばテキサス州では毎年5月15日が期限となっています。年度によって微妙に異なる州もありますので、毎年確認する必要があります。
Gross Receipts Tax(総売上税)
Gross Receipts Tax(総売上税)は純利益や経費を差し引く前の「売上総額」に対して課される税金で、ネバダ州・オハイオ州・ワシントン州などで採用されています。たとえ課税所得(売上)が赤字であったとしても課税されるため、利益率の低い年度には特に負担になりやすい点が特徴です。税率は州や業種によって異なりますが、一般的に1%未満の税率に設定されている州が多くなっています。
B&O Tax(Business & Occupation Tax)
B&O Tax(Business & Occupation Tax)はワシントン州の税金で、総売上税の一種です。ワシントン州では州法人所得税は課されないものの、このB&O Tax(Business & Occupation Tax)が課されることになります。小売や卸売、サービス、製造など業種ごとに異なる税率が設定されており、同じ会社でも複数の事業区分に分けて申告が必要になる場合があります。
まとめ
この記事では、アメリカでの法人運営にかかる税金について、それぞれの概要とともに申告スケジュールや会計処理の方法を解説してきました。
以下に、この記事の内容を整理しておきたいと思います。
※ 税率は2025年時点の情報をもとに作成。州・地方の税率は随時変更される場合があります。実務上は課税を管轄する税務当局や会計士へご確認ください。
この記事が、アメリカ進出を検討している方やアメリカで法人を運営されている方の助けになれば幸いです。