ハワイで飲食店を開業する方法 | ハワイ州特有の制度や注意点を会計士が解説

2026.05.04
会社設立・起業

この記事を書いた人トム | アメリカの会計士
米国の日系会計事務所にて、会計・税務・労務を中心としたバックオフィス業務と業務効率化のご支援をしています。些細なことでもお気軽にご質問ください。

この記事でわかること


  1. ハワイで飲食店を開業する際に必要な手続き・許認可の全体像
  2. 許認可の制度から年次報告義務まで、開業前に押さえておくべきハワイ州固有の制度
  3. 他州にはないハワイ独自の税制「GET(General Excise Tax)」の仕組みと申告義務
  4. ハワイ州固有の給与計算ルール(月2回以上の支払い義務・TDI加入義務)

「ハワイで飲食店を開きたいけれど、どこから始めたら良いかわからない。」
「GET Licenseや保健所の許可など、ハワイ独自のルールが何なのか把握できていない。」

こうした疑問を持つ方は少なくないと思います。ハワイは日本人にとって最も身近なアメリカの州のひとつですが、飲食店の開業にはアメリカ独自のルールとハワイ州固有の制度を理解する必要があり、全体像を把握するだけでも一苦労かと思います。

この記事では、ハワイで飲食店を開業するために押さえておきたいポイントについて、ハワイ州特有の論点を中心に解説していきます。

1. 会社設立形態を選ぶ

ハワイでの飲食店の開業にあたって最初に決めなければならないのが会社形態です。アメリカでの会社設立手順の全体像については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしていただければと思います。

ここではハワイに現地法人を設立する前提で、最も一般的な選択肢である「Limited Liability Company(LLC)」と「Corporation」についてご紹介します。

なお、ハワイに現地法人を設立せずとも、日本の会社が支店(Branch)をハワイ州内に設立して飲食店を開業するということも可能です。一方で、法的な責任を日本の会社と切り分けることができないなど、支店(Branch)運営ならではのデメリットが存在します。そのためハワイに現地法人を設立されるケースが一般的となっています。

LLC(有限責任会社)とCorporation(株式会社)

アメリカで会社を設立する場合、最も一般的な選択肢は「Limited Liability Company(LLC)」もしくは「Corporation」になります。

LLC(Limited Liability Company|有限責任会社)は設立・維持のコストが低いこともあり、一般に小規模な飲食店オーナーに多く選ばれる形態です。LLCとして出た利益は会社レベルでは課税されず、オーナー個人の申告に「パススルー」される仕組みとなっています。つまり、LLCとしては基本的に税金を払うことはなくオーナーが個人の所得として税金を払うことになるため、株式会社特有の「二重課税」を避けることが可能です。この点も、会社形態としてLLCを選ぶメリットの一つになります。

Corporation(株式会社)には、S CorporationとC Corporationの2種類があります。S Corporationも「パススルー」という課税の仕組みが適用できますが(= 二重課税を避ける税務メリットあり)、株主の国籍要件などに一定の制限があります。C Corporationは日本の株式会社に近い運営が可能で、かつ将来的な資金調達や事業再編にも対応しやすいというメリットがあります。一方で、C Corporationの場合は二重課税(会社として支払う法人税+利益が配当された後の個人レベルでの課税)が生じてしまう税務上のデメリットがありますので注意が必要です。

ハワイで小規模な飲食店を開業する場合には、初期の手続きが簡単でコストも低いLLCを選ぶケースが一般的かと思います。ただし、ビザの取得要件や将来の資金調達の観点からCorporationの形態が適切な場合もあります。会社形態は後から変更できるものの手間がかかるため、開業前に専門家に相談しながら決定されることをおすすめします。

2. ハワイ州への法人登記とEIN取得

会社形態が決まったら、ハワイ州への法人登記EIN(Employer Identification Number|雇用主識別番号)の取得を進める必要があります。

ハワイ州への法人登記

ハワイ州への法人登記はハワイ州商務消費者局(DCCA|Department of Commerce and Consumer Affairs)に申請して行います。LLCの場合はArticles of Organization(組織定款)、Corporationの場合はArticles of Incorporation(設立定款)を提出することになります。オンラインまたは郵送での申請が可能で、登記費用はLLCで$50程度となっています。法人登記については弁護士や代行業者に依頼することが一般的で、費用を含めても数万円〜十数万円の範囲で完了するケースが多いです。

なお、登記後はハワイ州への年次報告義務(= Annual Reportの提出義務)が生じますので、注意が必要です。この年次報告は税務申告とは提出先も目的も全く別の手続きであり、IRSへの税務申告を済ませても年次報告の義務は別途発生します。

ハワイ州への年次報告書の提出期限は法人登記の時期によって異なります。提出期限は四半期ごとに分けられており、以下のとおりです。

  • 1月から3月末までの間に法人登記を行った場合、申告期限は毎年3月末
  • 4月から6月末までの間に法人登記を行った場合、申告期限は毎年6月末
  • 7月から9月末までの間に法人登記を行った場合、申告期限は毎年9月末
  • 10月から12月末までの間に法人登記を行った場合、申告期限は毎年12月末

提出を怠った場合のリスクは軽くなく、遅延手数料の発生や会社登録の強制抹消、さらには法人の有限責任保護を失う可能性もあります。実務上は、提出期限をカレンダーに登録するなどして管理することが基本で、複数州に登録している場合は州ごとの期限・費用を一覧表で管理しておくことが大切です。

EIN(雇用主識別番号)の取得

会社設立後は、できるだけ早いタイミングで連邦雇用者識別番号(EIN)を取得するのが一般的です。EINはIRS(日本の国税庁にあたる米国税務当局)が発行する「会社のID番号」で、法人の税務申告・銀行口座開設・従業員雇用など、アメリカでのビジネスのあらゆる場面で必要になります。自動で発行されるわけではないため、法人設立後に自らIRSへ申請する必要がある点に注意が必要です。

申請方法はオンライン・電話・FAXもしくは郵送の3つがあり、いずれも申請費用は無料です。ただし、SSN・ITINを持たない海外在住者はオンライン申請ができないため、電話またはFAX・郵送での申請が必要になります。

法人設立後に必要な銀行口座の開設や各種届出など、会社設立に伴う対応事項の全体像については以下の記事もあわせてご参照ください。

3. 就労ビザの手続き

法人設立の準備と並行して進めておきたいのが「就労ビザの取得手続き」です。ビザなしで開業手続きだけを進めることは可能ですが、ハワイで実際にビジネスを行うには適切な就労ビザの取得が必須です。ビザの種類を誤ると就労自体が認められないリスクもありますので、慎重に進める必要があります。

E-2ビザの概要

日本人がハワイで起業するケースで最も一般的なのが「E-2ビザ(投資家・起業家向けのビザ)」かと思います。事業への相当な投資(一般的に$100,000〜$200,000以上が目安とされています)を条件に、アメリカで事業を経営・管理するために発給されます。

米国大使館・領事館でE2ビザの交付を受けた場合、ビザは通常5年間有効になります。そして、有効なE2ビザでアメリカに入国すると2年間の滞在と就労許可がおりる形となります。ビザの有効期限内であれば、再入国をする度に2年間の滞在と就労許可が自動延長されるため(再申請等の手続きは不要)、最長5年間の滞在が可能ということになります(= ビザの有効期限が切れるまで滞在可能ということ)。

また、E2ビザの有効期限については無期限に5年ごとの延長が可能です。そのため、事業が存続し、かつE2ビザの更新が認められる限りにおいて、中長期でのビジネスが可能といえます。ただし、Eビザは非移民ビザであるため、(たとえEビザで半永久的に滞在しようという思いがあったとしても)「ビザの滞在期限が過ぎた後にはアメリカから出国する」という意思表示を適宜おこなう必要がある点には注意が必要です。

ビザの申請手続きについては移民弁護士へ依頼することが一般的で、申請から発給まで数ヶ月以上かかることもあります。そのため、開業スケジュールより早めに動き始めることをおすすめします。

4. 飲食店特有のビジネスライセンス

ハワイでの飲食店開業においては、法人登記やEINの取得とは別に許認可(ライセンス)を取得する必要があります。一般に、ライセンスの取得はハワイ州での開業において最も時間のかかる手続きになります。主に「Food Establishment Permit(食品営業許可)」と「Liquor License(リカーライセンス)」の2つに分けてご紹介します。

Food Establishment Permit(食品営業許可)

ハワイで飲食店を営業するためには、ハワイ州保健局(Department of Health|DOH)が発行するFood Establishment Permit(食品営業許可)が必要になります。申請にあたってはキッチンのレイアウト・設備仕様・衛生管理計画などの書類提出が求められ、その後に保健局による現地調査が実施されます。

営業を開始する前に許可を取得しなければならないため、物件の選定や内装工事のスケジュールと並行して早めに申請準備を始めることが重要です。申請から許可証(Permit)の取得までの期間は物件の状況や書類の完備度によって変わりますが、一般に数週間〜数ヶ月を見込んでおくと良いかと思います。

Liquor License(リカーライセンス)

アルコールを提供する場合は、ハワイ州酒類委員会(Liquor Commission)が発行するLiquor Licenseが必要です。

新規申請の場合、リカーライセンスの取得完了までに半年〜1年半を要することがある点に注意が必要です。開業店舗の立地条件や申請者の身元調査、また開業予定地の近隣住民への公聴会が開かれるなど非常に厳格な審査が行われます。既存の店舗を買収してライセンスごと引き継ぐ方法もあり、こちらのほうがスピーディーに取得できる場合がありますが、いずれの方法においても専門家や弁護士を通じて手続きを進めることをおすすめします。

5. ハワイ州固有の税金:GETとは?

ハワイ州には、他の州にはない独自の税金制度として「General Excise Tax(GET)」があります。日本の消費税に似た概念ではありますが、仕組みや考え方は異なりますので整理しておきたいと思います。

アメリカにはGETとよく似た税金として「Sales Tax(売上税)」という制度があり、多くの州で制度化されています。GETはこのSales Tax(売上税)に近い税金と理解いただければと思います。ただし、Sales Tax(売上税)は購入者が販売時点で支払う税金である一方、GETは購入者ではなく売り手(事業者)に課される税金である点に大きな違いがあります。つまり、顧客から徴収できたかどうかにかかわらず事業者はGETをハワイ州に納付する義務を負います。

とはいえ、事業者はGETを顧客に転嫁することが認められています。実態としても、ハワイ州内のほとんどの事業者がGETを顧客に転嫁していると言われておおり、レシートに税金として明記する、もしくはメニュー価格に含める形で対応しているケースが大半のようです。そのため、実質的には顧客(モノやサービスの購入者)側がGETを負担しているケースが多くなっています。

GETの申告・納付は原則として四半期ごとに行う必要があり、未納や申告漏れがあった場合には罰金や利息が課されるリスクもあります。GETはハワイ独自のルールであり、他州の常識がそのまま通じないケースも多いため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

6. 給与計算(ペイロール)の整備

従業員を1人でも雇用した時点で、給与の支払いと各種税金の源泉徴収・納付が法的に義務付けられます。日本の給与計算とは仕組みや手続きが大きく異なるため、開業前にペイロールの体制を整えておくことが重要になります。

アメリカでは給与計算を自社で一から手動管理するケースはほとんどなく、多くの企業がペイロール専用のソフトウェアを導入するか、専門ベンダーにアウトソーシングする形で運営しています。代表的なベンダーとしては、ADP・Paychex・Gustoなどが広く知られています。開業のタイミングに合わせて早めにシステム環境を整えておくことをおすすめします。

給与の支払いサイクルについては、飲食業では時間給スタッフが多いこともありWeekly(週払い)やBiweekly(隔週払い)が採用されるケースが多い傾向にあるようです。なお、ハワイ州では少なくとも月2回以上の給与支払いが法律で義務付けられており、月払い(月1回払い)は当局が承認した限られた状況下でのみ認められています。

また、ハワイ州には他の多くの州にはない固有のルールとしてTDI(Temporary Disability Insurance|一時的障害保険)への加入が雇用主に義務付けられています。TDIは、業務外の傷病により就労できなくなった従業員に対して給付を行う保険制度で、ハワイ州法によって雇用主に加入が求められています。ペイロール体制の整備と合わせて、開業前に対応を確認しておくと良いかと思います。

まとめ

この記事では、ハワイで飲食店を開業するために押さえておきたいポイントについて、ハワイ州特有の論点を中心に解説してきました。

以下に、この記事のポイントを整理しておきます。

ハワイでの飲食店開業 | 必要なステップと州特有のポイント
ステップ
01
会社形態の選択:LLCかCorporationか
小規模飲食店には設立コストが低く税務がシンプルな LLC(有限責任会社) が一般的。LLCは利益がオーナー個人にパススルーされ二重課税を回避できる。
ステップ
02
ハワイ州への法人登記(DCCA)とEIN取得
ハワイ州商務消費者局(DCCA)にArticles of Organization(LLC)またはArticles of Incorporation(Corporation)を提出。登記後は毎年のAnnual Report提出が必要。
ステップ
03
就労ビザの取得:E-2ビザ
代表的なのは E-2ビザ(投資家・起業家向け) で、一般的に$100,000〜$200,000以上の投資が要件の目安。申請〜取得まで数ヶ月以上かかるため、移民弁護士へ早めに相談する。
ステップ
04
Food Establishment Permit・Liquor Licenseの取得
ハワイ州保健局(DOH)発行の Food Establishment Permit(食品営業許可) は全飲食店に必須。アルコール提供店はさらに Liquor License(ハワイ州酒類委員会)が必要。
ステップ
05
ハワイ州固有の税金:GET(General Excise Tax)への対応
ハワイ独自の GET(一般消費税) は他州のSales Taxと異なり、原則として 売り手(事業者) に課される点が特徴。
ステップ
06
給与計算(ペイロール)の整備
ハワイ州では月2回以上の給与支払いが法律で義務付けられており、TDI(一時的障害保険) への加入も雇用主に義務付けられている点に注意。

※ 建築許可(Building Permit)など業態によってはその他の許認可が別途必要になる場合があります。各ステップは並行して進められるものもありますが、開業スケジュールより早めに動き始めることをおすすめします。

この記事がハワイでの飲食店開業を検討されている方の助けになれば幸いです。

アメリカの会計士

出身:愛知県 所属会計事務所:日系会計事務所(ニューヨーク・ロサンゼルスにオフィスがございます) 米国公認会計士として、アメリカ現地で日系企業や個人事業主のバックオフィス支援に携わっています。あわせてAIによるデータ分析の修士号を持っており、日々の実務でもAIを最大限に活用しながら、「AIに任せられる部分は任せ、最後の砦は人が担う」という進め方を大切にしています。 アメリカでの起業や会社運営には、日本では聞き慣れない専門用語が多く、特に会計士や税理士の業務は「何をしているのか分かりにくい」領域だと感じています。ご相談をお受けする際には、なるべく難解な言葉を使わず、次に何をすればよいかが明確になるご説明を心がけています。皆様の不安や負担を少しでも軽くし、本業に安心して集中していただける体制づくりに貢献できればと思っております。 会計士や税理士に相談するのは少しハードルが高い——そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、まずはこのサイトをご覧いただき、私や会計・税務、そしてAIの実務への活用を、少し身近に感じていただければ嬉しく思います。 アメリカでの経理や確定申告、バックオフィスまわりへのAI活用など、些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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